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記事2001年6月3日 14号 (1面) 
21世紀の教育確立へ白熱した論議を展開
中央教育審議会
5分科会が本格審議に
今年二月一日に第一回総会を開いて活動を開始した新しい中央教育審議会(鳥居泰彦会長=慶應義塾学事顧問)は、五月の連休明けから相次いで会合を開いており、審議会内に設けられた五つの分科会でも臨時委員を加え諮問事項に沿った審議が始まっている。二十一世紀の教育のグランドデザインを描く作業は、国づくりとも密接に関わるだけに各委員は熱のこもった議論を展開している。(3面に委員・臨時委員名)

【教育制度分科会】

教養教育像求め審議
プロの教員養成も重要課題

 中央教育審議会は五月二十八日、東京・竹橋のKKRホテル東京で第二回教育制度分科会(鳥居泰彦分科会長)を開催し、新しい時代の教養教育の在り方について討議した。この日の分科会から臨時委員が参加した。冒頭、文部科学省の事務局から昨年十二月二十五日に旧中教審が策定した審議のまとめ「新しい時代における教養教育の在り方について」の概要が報告されたが、教養教育の内容や教養を培っていく基本的方向性等については、委員からさまざまな意見が出された。教養教育の基本的方向性では「国の方向付けが先で、それに向けて教養教育を検討していくべきだ」とする意見がある一方で、「多様化、急速な変化の中で、旧制高校型の教養教育から変わらざるを得ない。社会の一人ひとりがどのような人間でありたいか、どういう人生を送るか、考える機会、雰囲気、状況を作ることが大切」「教養を身につけた人が増え国をどうするか考える人が増えてくれればいい」との意見も。
 また教養とは何かに関しても、「健全な批判精神、バランス感覚」「知恵や学歴があることではなく、相手に対して想像力を働かせること」「文化遺産から見つけ出して次代に渡していくもの。サブカルチャーと峻別すべきだ」「教養教育の核になるものは人権教育」などさまざまで、教養や教養教育像がまだおぼろげにも見えてこない。
 今後、教育制度分科会では、初等中等教育の役割、高等教育段階における教養教育、生涯にわたる教養教育ごとに具体的方策を討議する予定。また論点を整理して総会に報告する。
 このうち初等中等教育に関しては、(1)学ぶことへのモチベーションを高めるための方策(2)教養の基礎としての「読み・書き・計算」「国語の力」などを身に付ける方策(3)さらに深く学びたいとの子供の意欲にこたえる方策(4)プロとして十分な力量と人間性を兼ね備えた教員を育成する方策(5)国としての支援策等を検討していく。また高等教育では、大学の個性や教育理念を踏まえた教養教育のための実施体制(2)知的な思考法や表現方法の修得と文系と理系の知の融合を可能とするカリキュラムや教養教育改善のための全学的な取り組み促進のためのインセンティブ等を、生涯学習では魅力ある大人社会の構築方策等を検討する。

【生涯学習分科会】

青少年の奉仕・体験活動討議
NPOとの連携も

 中央教育審議会は五月二十四日、東京・霞が関の霞ヶ関東京會舘で第二回生涯学習分科会を開き、青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策について話し合った。五月十四日に臨時委員十一人が発令されており、この日は委員六人、臨時委員八人で議論が進められた。委員の間からはNPOの活動の重要性を指摘する意見や実際に青少年が体験活動を行うにあたって、受け入れ機関の開拓が遅れている、などとする意見が出た。
 分科会には鳥居泰彦会長も出席し、冒頭、「新しい『公共』の概念を創出しなければならない。体験活動はNPOとも連携して、地域のセンターの中で行うべきだ。十八歳以降の奉仕活動については何らかのインセンティブを与えるために具体的仕組みの検討が必要で、生涯にわたって取り組める環境づくりが課題だ」などと述べた。約二時間にわたった議論では、複数の委員からNPOでのインターンシップ、ボランティア活動を認知すべきだという意見が出た。寺島実郎委員は「NPOの活動に社会的評価が伴うようにすることが必要だ。NPOに寄付した場合、税負担が軽減されるような税制面での環境整備も課題だ」、和田敏明委員も「NPOでも子どもと一緒にやりたいというところは協力し合って、地域に多様な選択肢が用意されているべきだ、受け入れの部分でコーディネートが必要」などと指摘した。島田京子委員は「(日産自動車では)大学生がNPOで学べる奨学金制度を設けている」と紹介した。
 受け入れ機関の開拓についても複数の委員から意見が出た。
 祐成善次委員は「これまで活動する人を増やす啓蒙はしてきたが、活動先の開拓が遅れている」、松下倶子委員は「アメリカでは受け入れ機関の多くが飛び込みのボランティアも受け入れている」などと述べた。
 生涯学習分科会では(1)初等中等教育段階までの青少年に対し、学校の内外を通じてさまざまな奉仕活動・体験活動を充実するための方策(2)初等中等教育を修了した十八歳以降の青年がさまざまな分野で奉仕活動を行えるような社会的仕組みづくり(3)青少年に限らず社会人が広く生涯にわたって奉仕活動等を行うことのできる環境づくりの大きく三点を検討していくが、七月までは(1)を、九月以降は(2)、(3)を中心に審議が進められる。
 今月は三回程度分科会が開かれる予定で、都道府県や学校内外での取り組み事例に関するヒアリングも行われる。

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