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記事2001年6月23日 16号 (8面) 
ユニーク教育 (95) ―― 恵泉女学園中学・高等学校
自分を正直に語る「感話」
あるがまま認めて表現
体験や読書で考えたことを発表


 「姉を見ていて好きなことをやっているなと思うと、自分は不安を感じる。やるべきことはちゃんとやり、ここ(恵泉)で夢ややりたいことを見つけたい」
 この生徒は「感話」を発表するに当たって、自分の意志がなければならないと思い、姉妹のことについて考えた。
 もう一人の生徒はなぜ、お金を払って粗大ゴミを処理してもらわなければならないのか、疑問に思った。そして新聞を読んでリサイクルするために掛かる費用と分かった。
 六月一日、午前八時二十分から恵泉女学園中学・高等学校(安積力也校長、東京都世田谷区)のフェローシップホールで行われた礼拝の時間に、中学三年生が発表した「感話」の一部だ。同校には、自分がいま考えていることを生徒たちが正直に語る「感話」を取り入れた礼拝も行われてきた。「真の平和な世界を創り出す目覚めた女性を育てたい」という、創立者河井道子氏の願いは、「聖書」「国際」「園芸」の三つを柱として、今でも色あせることなく教育の隅々まで反映されている。毎日、授業の前に行われる礼拝の時間は教職員、生徒による真実で多様な奨励・感話がなされ、一人ひとりが心を静め自分の生き方をしっかり見詰める時間だ。
 安積校長は、「『告白』の本質をもった『感話』が、(1)ことがらを、あるがままに認める(2)認めたことを、言葉によって言い表すところに、心を動かされる」と言う。
 毎朝行われている礼拝にはクラス礼拝や放送礼拝、フェローシップホールで実施している全校礼拝がある。中学生のフェローシップホールでの礼拝は月、水、金の三日間で、このうち金曜日は三年生の感話による礼拝だ。三年生は全員がクラス礼拝を含めると年間通して、四回ほど話す機会がある。フェローシップホールで「感話」を発表する生徒は、クラス担任がクラス礼拝のために全員が用意する感話の中から選んだり、番号順に進めたりする。テーマは夏休みの体験や読書をして考えたことなど自由で、原稿用紙に三枚以上書き、一人約五分間発表する。
 中学でのこの「感話」発表の積み重ねが、高校でさらに、内容の深まった「感話」となる。五年生(高校二年)の十二月から全校礼拝での「感話」の発表が始まり、六年生として十一月末までを担当する。週一回のクラス礼拝は二人ずつ、放送礼拝やフェローシップホールでの礼拝は一人ずつ発表する。原稿用紙六―七枚以上を一人十分程度掛けて語り掛ける。フェローシップホールでの礼拝担当者は担任が指名したり、クラスの生徒との話し合いで選ぶ。選ばれた生徒が司会者やオルガニストを選ぶ。高校になると、「感話」は、どうしてこうなのだろうか、私はだれなのかといった、自分の内面を吐露するような内容になってくるとともに、社会性を帯びた問題についても言及するようになる。

 「ここまで自分を深く掘り下げて表現できるのかと感じる。だれにも言ったことがないようなことを話す」(松井弘子副校長)
 「生徒たちは語られる感話を全身を耳にするように聴き、受けとめる。それも驚きだ」と教師たちは言う。
 感話集『道』は中学生のフェローシップホールでの「感話」をまとめたものだが、二〇〇一年度の『道』にはさまざまな内容の感話が載っている。「私の生きる価値って何なのだろう」と毎日の生活を反省し、神の愛を思うと、「つかれて悲しくても、また前を見て歩き出す勇気と希望がわいてくる」と頑張った生徒がいる。またある生徒は「人生プラス思考」をテーマにテレビでパラリンピックに出ている選手を見て、「失ったものを気にして“私にはできない”と後ろ向きになり“自分にできること”の方に気付かなかった」と振り返った。
 高校生の「感話」をまとめたのが感話集『めぐみ』だ。
 百ページを超える『めぐみ』には、四十人近くの生徒の感話が載っている。勉強に励んだ人、クラブに没頭した人、進路で悩んだ人、そして、信仰において新しい発見をした人など、高校時代に考えたこと、悩んだことが書かれている。それぞれが自分なりの高校時代を送ったというあかしが『めぐみ』だ。卒業した後、この文集を再び見開いた時、自分自身の高校のころのことが鮮やかに思い起こされ、高校時代の軌跡を振り返ることができるだろう。また、在校生も先輩たちの感話を聴くことで、成長できるという側面がある。「感話」は上級生と下級生をつなぐ精神的な絆として同校において貴重な役割を果たしている。

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