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記事2001年6月23日 16号 (5面) 
米国におけるe-Learning普及の実態と今後の方向 (2)
(株)日本スクールシステム機構 情報教育コンサルタントグループマネージャー 竹内 白
エクステンションセンター整備に積極的投資
学生、地域の要望に応える
シアトルパシフィック大学のケース

 実際にTPI社の仲介により、外部から複数の単位認証コースを得て、自大学の学生に提供しているシアトルパシフィック大学(注)の生涯教育学部長LiSaBijork教授は「e‐Learningは場所と時間に制約されない点から生涯教育に大変向いているが、コース作成に多大な費用と時間が必要なため受講者が必要とするコースをすべて内部でつくることは不可能で、TPI社からの二千五百以上のコース提案には感謝している」と言う。
 同大学では、自家製のコース作成とメンテナンスにコースデザイナーを含む五人の専任エンジニアを擁し、担当の教授と共同でコンテンツ化に当たっているが、キャンパスでの授業で補助的に利用されるコースを含めて、新規のe‐Learningコース製作がまったく追いつかない状況であった。
 シアトルパシフィック大学に限らず、米国の大学では、パックヤードシステム(学内教務、学務コンピュータシステム)やメディアセンターと同様、e‐Learningおよびエクステンションセンターの整備に積極的に投資する環境が整っている。また、自大学の学生または地域社会の要望をリサーチし、これに応えていく姿勢も強く感じられた。

普及著しいが難点も

 米国大学で普及著しいe‐Learningは、その運用面から難点もいくつか指摘されている。シアトルパシフィック大学ではe‐Learningにおける問題点として、次の三点を挙げていた。
 (1)電子メールや掲示板への対応のため、教授(インストラクター)の負担が大きく、各コースは定員を
二十人以下としている。(2)e‐Learningだけで学習する学生は、周囲の学生との相乗効果やインストラクターからのリアルタイムのアドバイスが得られないことから、キャンパスで学習するよりも多くの努力が要求され、単位取得は容易ではない。(3)flashなどを多用した、手の込んだコースの作成には数万ドルオーダーの費用が必要となる。

国際間単位の認定、単位互換
留学生、ビジネス学生を招致

まとめ
 昨今、日本でも企業教育への適用を中心にe‐Learningへの関心が非常に高まっているが、大学にとってのe‐Learning導入のメリットは、大きく以下の二点である。
 (1)e‐Learningを呼び水とし、日本国内にとどまらずアジア圏・欧米圏の大学との国際間単位認定、単位互換を普及させることにより、留学生・ビジネス学生を招致し学生数増大を図る。
 (2)英語による各専門教科の学習機会を、容易かつ安価に提供することにより、学生の英語力強化・国際化を推進する。
 この実現のため、まずは優良な(日本語の日本の制度にあった)学習コンテンツが多数必要となる。その上で、米国で指摘されているいくつかの問題点を解決すべく、「インストラクターの負担を軽減する仕組みの開発」「e‐Learning(バーチャル)と集合学習(現実)を統合して管理、評価できるLMSの開発」「SCORM準拠によるコンテンツ再利用の普及」などが課題となってくると予想される。日本における厳しい大学経営環境から考えると、各大学は、内外のコンテンツをうまく利用して早急にe‐Learningに取り組む必要がある。
 株式会社日本スクールシステム機構(略称・JSO、山内康義社長、本社・東京都千代田区外神田1―1―5昌平橋ビル3F 電話03―5207―6046)は大学、学校を含む生涯学習にかかわる、情報化全般のコンサルティング、企画、開発、販売を目的に設立されたベンチャー企業である。一九九九年から、ポータルシステム、e‐Learningシステム、教務・学務システムの企画開発、販売および情報教育支援(講師派遣)の各事業を全国展開している。
 JSOは日本の大学制度に適合したe‐Learningコースのブローカー機能が、日本でも確実に必要になるとみて、TPI社が有する二千五百コースの日本における翻訳権、代理権を取得し、私立大学を中心に斡旋紹介するビジネスを開始する。JSOは現在日本の大学教育に対し、社会的に最も大きな期待とされている起業家養成(アントレプレナーシップ)にかかわる講座を二〇〇一年中にe‐Learning化し、キラーコンテンツとしてブローカービジネス推進の原動力とする戦略をとる。
 (注)シアトルパシフィック大学は、一八九一年設立のキリスト教系総合大学で、現代美術、工学など四学部、ビジネス、教育などの五大学院を有し、三千三百人の学生が学んでいる。同大学は主に、教師への生涯教育を目的としたe‐Learning講座を五十コースほど運営しており、オンラインのマスターコースも開設している。
(おわり)

リスト1 OnlineCourse例
Business/ManagementCourseDescriptions
1.ProfessionalDevelopment1credit
2.ElectronicCommerce5credits
3.E‐CommerceProjectI3credits
4.BusinessLawI5credits
5.BusinessLawII5credits
6.PrinciplesofMarketing5credits
7.ElectronicMarketing5credits
8.MarketingManagement5credits
9.PrinciplesofManagement5credits
10.InternationalBusiness5credits
11.EmploymentLaw5credits
12.Supervision5credits
13.OperationsManagement5credits
14.BusinessEthics5credits
15.ProjectManagement5credits
16.Entrepreneurship5credits
17.ManagementAcrossCultures5credits
18.StrategicManagement5credits

リスト2 大学例
1.AntiochUniversity
2.CentralWashingtonUniversity
3.ChapmanUniversity
4.ChicoUniversity
5.IndianasUniversity
6.LoyalaMaramountUniversity
7.MidAmericanNazarene
8.MohawkValleyCommunityCollege
9.NationalAmericanUniversity
10.PortlandStateUniversity
11.SeattlePacificUniversity
12.TexasA&M
13.UniversityofIndiana
14.UniversityofSouthDakota
15.UniversityofWyoming
16.WesternOregonUniversity

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