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記事2001年6月23日 16号 (1面) 
中教審の大学分科会
国立大学構造改革に論議集中
県域も越え再編・統合へ
 中央教育審議会は六月十五日、東京・虎ノ門の霞が関東京會舘で第二回大学分科会を開いた。この日は同十一日に文部科学省が経済財政諮問会議で発表した「大学(国立大学)の構造改革の方針」に議論が集中した。国立大学関係の委員からも「国立大学協会が今日に至るまで国立大学の将来プランをつくらなかった。国立大学の自己改革努力が問われている」「(同省から国立大学改革の方針が示されたことで)改革がやりやすくなった」などと、おおむねこの方針を前向きにとらえる意見が目立った。文部科学省が発表した方針は、県域も越えて国立大学の再編・統合を進めるという大胆なもの。「総会でも国立大学は民営化すればいいではないか、と主張してきた」(石倉洋子委員)という委員のほか、「一県一大学は昔の物差しだ、という文部科学省の姿勢はクリアカットだ。(国立大学改革は)新しい段階に達した」(石弘之委員)と、受け止める発言もあった。
 これに対して、天野郁夫臨時委員は「一県一大学原則は国と地方の行財政システムと深くかかわっている。この原則を放棄するのは文部行政の大転換であり、問題である」と指摘。文部科学省の工藤智規・高等教育局長は「一県一大学原則をまったく崩すということではないが、民間的発想を徹底して採り入れ、ある程度規模のメリットということも考えなければならない。九十九(という数)は再編の必要がある」と、述べた。

国際競争力持つ大学に

 国立大学改革を進める過程で日本の大学をもっと国際競争力を持った大学にしなければならないという意見も複数の委員から出た。経済界の委員が「大学にはビジョンがあり、次の社会が何を求めているかという顧客ニーズをとらえて最高レベルの学生を育てなければいけない。だが、その逆が現実である」(南雲光男臨時委員)、「本格的な人材育成をしないと国際的に通用しない」(西室泰三臨時委員)などと発言。大学人からも「優秀な学生はもはや日本の大学を素通りしてアメリカの大学に行き、日本の大学は空洞化してしまうのではないかという懸念がある。いまやるべき改革は何か、基本的な方針は示された」(中嶋嶺雄委員)と受け止め、改革に取り組んでいこうという意見が出された。しかし、「いま私立大学も含め全大学が経済界から不信の対象で見られている」(天野臨時委員)として、「改革の必要性は認めるが、驚くほどの不信の上に改革が進められるのは好ましいことではない」とする立場の意見もあった。

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