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記事2001年5月3日 12号 (10面) 
企業トップインタビュー 教育はこれでよいのか
株式会社ドトールコーヒー代表取締役社長鳥羽 博道氏
起業家の養成が大切、社会で役立つ実践的教育
努力、忍耐、時を重視


 「アントレプレナー(起業家)を育てないと、日本の継続的発展は期待できない」
 鳥羽博道・代表取締役社長の、アントレプレナー養成への思いは強い。ニュービジネス協議会(NBC)は新しい企業を興す団体を支援する組織で、鳥羽社長は副会長を務める。
 同協議会の第一回「高校生向けアントレプレナー塾」が昨年十月十一日に文京女子大学高校(東京)の生徒を対象に、二回目の十二月九日には法政大学第一(同)、法政大学第二(神奈川)、法政大学女子(同)のそれぞれの高校生を対象に開催された。三回目は今年、都立の商業高校で開かれている。
 この塾は高校生に現実の社会に対して興味を持たせ、将来の目標を考えさせるきっかけを与えるとともに、「起業・創業」について考えさせる狙いを持つ。塾では生徒は起業の面白さをクイズを通して疑似体験し、講師陣との質疑応答が行われた。一回目は五百人、二回目は百人の高校生が集った。
 「一回目に生徒の起業意欲を確認したら、四割が起業家になりたいと考えている。非常に関心があると思った。将来、起業家になりたいという意識を心の片隅に持つことは大事だ」
 鳥羽社長は埼玉の県立高校を中退後、昭和三十三年ブラジルへ単身渡航、コーヒー農園などで三年間汗を流した。帰国後、理想の会社をつくろうと、昭和三十七年有限会社ドトールコーヒー(現在の株式会社ドトールコーヒー)を設立した。二十四歳だった。
 「机上の勉強だけでは社会に出てもほとんど役に立たない。学校では社会に出て役に立つ実践的な教育をしてほしい。高校でもアントレプレナー科もしくはベンチャー科があってもいいのではないか」と堤案する。人を指導する難しさで苦しんでいる時があった。二十五歳の時、『三国志』を読んで「これだ」と直感した。
 「口舌をもって民を叱るな」(『三国志』)
 鳥羽社長は「努力、忍耐、時」を重視する。
 「努力しても目標は成就するとは限らない。しかし、目標が正しく、耐え忍べば必ず成就する時が来る。目標達成への願いが強ければ強いほど願いは通じるものだ」
 その上で、「単なる一の働きはどんなに働いても一の成果しかない。しかし、アイディアを持って一の働きをすれば、五の成果が出る」と、アイディアを重要視する。
 小学校の時の校長は毎朝、正門で児童にあいさつをしていた。長い間にわたってこれが続くと、校長に対する尊敬の念がわいてくる。
 「教育改革は必要だが、これによって教育はできるものではない。教育の問題は結局、校長をはじめ、教師、親の姿勢にかかっている。教師、親が子供の幸せを願っていると、子供は自ずから教師、親への尊敬の心を持つようになる」
 今、鳥羽社長はカンボジアの学校建設ボランティアに取り組んでいる。きっかけは主婦の岡村真理子さんが、カンボジアで“学びの環境”を取り戻そうと心血注いでいる姿に感銘を受けたことだ。「カンボジアの子供たちの将来と笑顔のために」と、支援プロジェクト「ドトールありがとう募金」をつくった。
 昨年二月には初のドトール学校、ワットアンチャウ・ポンニエ小学校ができあがった。現在、三校できている。一校三百五十万円ほどでできるが、善意の結晶である千五十万円を今までに送金している。
 「単なる寄附行為をするのではなく、ご寄附が確実に小学校の建設に使われ、皆さんにお知らせできるようにすべて明らかにしたい。今後もこの活動を続けていく」と、目に見える支援を行っていく方針だ。

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