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記事2001年5月3日 12号 (3面) 
大阪TLO組織スタート
産業の活性化と新産業創出図る
産官学協同で産業インフラ事業
 大学などの先端的研究成果の産業界への移転を促進し、大阪における産業の活性化や新産業の創出を図るために、大阪府内の大学や大阪府、大阪市、経済団体や企業などで設立を検討していた大阪TLOの組織が四月一日に発足した。産官学が共同で産業インフラとして事業を推進し、府内大学等の技術移転機能を強化することを目的として掲げている。
 既存の財団法人である大阪中小企業振興センター、大阪府研究開発型企業振興財団、大阪府中小企業振興協会の三団体が統合して新たに「大阪産業振興機構」(松井満広理事長)となり、その中の一部署として置かれたTLO事業部がその産官学連携組織である。事務所は大阪市中央区本町一丁目の大阪産業創造舘にある。特色としては、TLO事業を単なる特許を媒体とした技術移転と狭くとらえず、企業ニーズと大学等の先端的研究成果のマッチングによる共同研究の創出という川上から、製品開発・販売までを含む川下まで、トータルにサポートすることを視野に入れており、産官学連携の促進全体を事業範囲とする。
 この組織はそのための府内大学の総合リエゾン(産学連携窓口)機能を持ち、企業ニーズから大学シーズへのアプローチを主眼としており、共同研究等の増加と支援が事業の柱となる。ライセンシング先企業には事業化計画を確実に実現するための総合的支援体制を整備し、切れ目のない知的創造サイクルを創出、大阪産業の振興につなげる。
 この構想は平成十一年夏に大阪府内の国公私立四十二大学の学長会が結成された際に、今後めざすべき事業として(1)産学連携の促進(2)単位互換などの大学間協力(3)大学、高校の連携の三つを掲げたのが発端。第一のテーマ「産学連携促進」の部会長には石川啓・関西大学長(当時)が選ばれたが、そのころ大阪府でも新知事が「産業再生プログラム」を打ち出していたため、両者の構想がドッキングして、府などの協力を得た産官学連携のTLO組織結成へと動き出し、このほど実現の運びとなった。

関大など大阪9大学
産業界からも5団体

 具体的な事業内容や会費の額などをなるべく早く相談して決め、会員募集にかかるが、大学側は関西大学、近畿大学、大阪医科大学、大阪工業大学、大阪産業大学、追手門学院大学、大阪大学、大阪府立大学、大阪市立大学の九校がすでに参加の意思を表明、大阪府内大学学長会の石川・産学連携部会長が大学側を代表する形で大阪産業振興機構の理事に就任した。今後は大学だけでなく大学内の個々の研究者からも会員を募る。産業界からは関西経済連合会、大阪商工会議所、関西経済同友会、大阪工業会、関西経営者協会の五団体が団体として運営に参画し個別企業会員の募集を支援する。
 加入会員に対しては共同研究やコンサルティング、特許化やライセンシング、共同発明については権利確保や特許出願の調整、技術・資金・経営等への総合的支援、発明をもとに企業化する際には事業計画の策定から会社設立、資金調達、経営までトータルに支援。大学・研究者に対しては特許をライセンスした企業から売り上げに応じて得た実施料等を研究資金として還元することなどをうたっている。実施料等の収入の還元は、実施料等から特許に要した経費を差し引き、残額を教員個人・大学・TLOに三等分して還元する。組織の運営は大学が自らの資金を拠出するとともに、大阪府と大阪市からの資金支援や会費収入などを財源として活動を行うことにしている。

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