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記事2001年5月23日 13号 (3面) 
世界の私学化の潮流と日本の私大
私学高等教育研究所が公開研究会
私立機関のシェア拡大 私学化の潮流を私学に有利に
森、喜多村両氏の講演
 日本私立大学協会の附置研究所である私学高等教育研究所(大沼淳所長、喜多村和之主幹)は五月九日、東京・市ヶ谷の私学会館で「第五回公開研究会」を開催した。「世界の私学化の潮流と日本の私立大学」をテーマに、国公立大学の法人化や民営化といった、いま世界的規模で進行しつつある私学化(プライバタイゼーション)の動きの意味するもの、日本の私学に及ぼす影響などについて、二人の講師が話した。
 講師の一人、森利枝・大学評価・学位授与機構助教授は「世界の高等教育の私学化の展望」と題して発表。森氏は高等教育の「私学化」にはいくつかの側面があるが、「私学化」が最もはっきりと見えるのは私立機関のシェアの拡大であるとし、量的側面で高等教育の需要が急速に高まっている国で私学セクターの拡大が顕著だと、データを示しながら解説した。また、さまざまな「私学化」が進む中で、公立と私立とを明確に分けることは困難だと指摘したうえで、教育学者、D・C・レヴィの考察に基づいて、公私を分ける二つの考え方を紹介した。一つは法制上の分類は無視して、公立私立の機関が実際に行っていることを一つずつ積み上げていくボトムアップ・アプローチ。もう一つは、典型的な私立機関と公立機関とをそれぞれ想定し、ある機関がその典型に対してどの程度私立的であり、公立的であるかというそれぞれの理念型への達成度を測る典型アプローチというものである。
 喜多村氏は「『私学化』に対して日本の私立大学はどう立ち向かうか」と題して発表。公立部門の中に部分的に受益者負担や自己責任の要素を導入し、公教育制度全体に私立的政策を強化する「公立の私立化」、反対に公私の格差や区分をあいまい化・重複化させる「私立の公立化」、そして、経営や資源を公的部門から民間部門に移行させる「民営化」などを「私学化」の現象として挙げた。そのうえで「私学化」に立ち向かうために私立大学は、内外の競争に耐えられる質の強化を図る必要があると指摘。カリキュラム改革などを効果的に行えるよう創意工夫を図ることが不可欠だが、大学の意思決定はいかにも遅いと現状に苦言を呈し、「私学化の潮流を私学に有利になるようにしなければならない」と述べた。
 また、インターネットや大学ランキングが及ぼす影響についても触れ、優秀な日本の学生が米国の大学に流出する事態も今後予想されると指摘。学生消費者主義の進行で私学には平穏な時代でなくなるとした。



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