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記事2001年5月23日 13号 (2面) 
インタビュー 文部科学大臣 遠山 敦子氏
教育振興計画を積極的に
私学助成充実は必要
力のある子には伸ばす指導を


 五月十八日、遠山敦子・文部科学大臣に当面する教育改革や学力低下、教育振興基本計画等の問題に対する考えを伺った。(編集部)

― 教育基本法、奉仕活動、教育振興基本計画に対するお考えは。
 
 遠山大臣 教育改革国民会議の議論をベースにして「二十一世紀教育新生プラン」ができている。それを実質化するのが一番大事だと思う。現在、国会にかかっている四つの法案をぜひ通したい。それがそろうと新生プランを実質化する枠組みができる。それをぜひやりたい、というのが今の私の一番の関心事。国民の期待に応えられるよう改革の実を上げたい。教育基本法については、現在、文部科学省の中で専門的な角度からかなり緻密な検討をしているので、方向性ないし検討結果を待って中教審にもかけてよく議論してもらい、変えるべきものならば変えていく。総理も幅広く国民的な議論を深めたいと言われている。奉仕活動については、いろんな機会に社会奉仕を行っていくことは非常に有意義だと思う。日本人の忘れかけている他者への思いやり、社会への奉仕を通じて心の教育ができていくと思う。十八歳以上の人が義務的に奉仕活動すべきかどうかについては、義務化はなじまないと思う。教育振興基本計画については、そうしたものがあって、しっかりとした構想の下に、教育を改革していく、ないし教育の分野を充実していくことはすごく大事だと思う。すぐに計画を作るかと言うと、もう少し準備をしたうえでになる。世界の先進国の中で対GDP比率で日本が最も教育に対する投資が少ない。そういうことでは質の高い良い教育はできないと思う。もし基本計画をきちんと立ててやることで、予算の確保がしやすいのであれば、やるべきだと思うし、私としては前向きに進めたい。

― 小泉内閣の掲げる財政再建路線と予算の拡充を目指す教育振興基本計画との折り合いはつきますか。

 遠山大臣 それが非常に難しい問題。聖域なき構造改革といわれているが、これまで少な過ぎたものまで削ろうというのはどうかと思う。国の将来を思ったら、教育、文化、科学技術といった基本のところに投入しないでどうするのか。

― 子供達の学力低下を懸念する声がありますが。

 遠山大臣 国民の中に学力低下を懸念する声があることはよく知っている。懸念の気持ちも分からないでもないが、私としては新学習指導要領のねらいをもう少し理解して頂いて、本当の意味の学力についてコンセンサスが得られるよう努力しなくてはいけない。文部科学省が国民の学力が低下するようなことを好んで実現するはずがない。本当に学力が落ちたらすぐに直せばいい。今までは学習指導要領を変えるのに十年かかったが、それでは間に合わない。今年度の終わりには全国で学力調査も行う。
 子供によっていろんな能力がある。基礎基本をすぐに学んでしまう子には、自分の興味にあったこと、あるいは更に深めてより高度なことを教えていい。とにかく学習指導要領と教科書以外教えてはいけないと思っていた教員が多いと思う。そうしたことは一切考えないで、力のある子は力を伸ばすように指導してほしい。そうしたことが可能となるよう教師のための指導資料というか、参考資料を現在、鋭意作っている。

― コミュニティスクールやチャータースクールなどの新しいタイプの学校についてどうお考えですか。

 遠山大臣 いろいろ考えられるタイプの学校が外国で先行している。その目的は、これまでの形態の学校だけではなく、新しいタイプを入れることで全体が活力ある学校になるように、ということだろう。その意味では新しいタイプの学校のあり方についても検討していく時期だと思う。ただ中教審もいろんな課題を抱えているので、右から左へというわけにはいかない。将来の検討課題だと思う。

― 私学助成と保護者の負担する教育費の公私間格差についてはどうですか。

 遠山大臣 私学は社会の中で重要な役割を占めていて、それぞれ独自の教育目標を立てて、それに賛同する保護者が子供を通わせている。特に平等平等という言い方が良いかということはある。私学助成の充実ということは思っている。あまりにも少ない。それは教育関係の予算があまりにも少ないから。奨学金ももっと拡大し、教育の機会ができる限り私学においても十分与えられるようにしていくことは大事だと思う。

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