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記事2001年4月3日 9号 (4面) 
2001年私大入試―過渡期の踊り場
私大が盛り返す
受験生2.5%、7千人増
センター試験志願者1万3千人増
 私立大学の入試出願状況はこのところ毎年七〜八%ずつ減少していたが、二〇〇一年は前年の受験人口八十八万九千人から八十九万六千人へと七千人増(前年比二・五%増)となった。志願者九十万人前後の状況は二〇〇三年までほぼ横ばいで続いていき、その後また少子化の進行とともに減っていく。いまはその過渡期の踊り場といえる。

 学費の安い国立大学の人気回復と裏腹に人気が伸び悩む私立大学という最近のパターンの中で、私立大学が盛り返したのは、いささか意外の感で受け止められている。盛り返した原因は「センター試験の問題が難しくて自己採点の点数が低かったため、国立をあきらめたり、あきらめなくても不安になった受験生が私立大学へ回った影響が大きい」と、代々木ゼミナール進学情報指導部の坂口幸世本部長は言う。
 今春のセンター試験は昨年を九千人上回る五十九万人の志願者が集まり、中でも現役志願者は一万三千人以上増えて志願者全体の七五%を占めた。増加分の九割近くは女子で、女子が全体の志願者の四割を占めている。女子の四年制大学、特に国公立大学志向が強いことが依然として受験動向を左右している。センター試験の難易度は三年ぶりに易化した昨年に比べて今年は難化した科目が多く、英数国の主要三教科平均点では一六・三点の大幅ダウンとなり、五教科六科目以上の受験者の総合平均点では約十二点ダウンという自己採点結果となった。
 一方、私立大学側はセンター試験利用入試を含めて最近ますます募集方法や入試回数の多様化が進んでいる。入試形態別に志願者数を分析してみると、通常入試は志願倍率九・九倍で昨年より〇・二%減少だが、当初は一〇%マイナスという予想だったことを考えるとほぼ横ばいという程度に踏みとどまったといえる。一方センター試験利用入試は以前から実施していた大学・学部の継続利用分が前年比三・二%の増加、さらに今春初めてセンター試験利用を開始した新規利用分も含めると一七・四%の増加となり、差し引きすると全体では二・六%の増加となった。かつての共通一次試験(センター試験の前身)は国公立大学の試験で私立大学は関係ないとみられていたが、今では私立大学が入試にセンター試験を利用してもしなくても、受験生はセンター試験を中心に考えて作戦を練り、センター試験抜きでは受験動向は考えられにくくなってきた。

 大学の所在地域別の志願者数では、東海、近畿両地区が前年と比べて高い伸び率を示しているが、これは入試多様化の工夫の結果とみられている。両地域ではセンター試験利用の採り入れも早かったが、さらにセンター試験利用回数でも二回、三回と募集し、センター試験の成績が悪かったと悔やんでいる受験生のために二月後半にも募集するなど工夫を重ねている。
 首都圏の大学は全体としては横ばいに近いが、東海、近畿に比べるとまだセンター試験を取り入れた段階という初歩的な状況といえる。その中で人気のある難関大学が新しい学部にセンター試験を初めて導入した場合などは志願者を増やしているのが目立つ。例えば早稲田大学の商学部と人間科学部、立教大学の経済学部、中央大学の理工学部が初参加、神奈川大学はセンター試験利用を拡大、大東文化大学は大学としてセンター試験初利用、帝京大学はこれまで一般入試一回だけだったのを前中後期の三回にしたほか、センター試験利用入試を加え計四回に増やしたことが、いずれも前年比プラスの要因となった。唯一減少を記録した地域は東北地域だが、ここの私大入試は一・二期を分ける程度で多様化の工夫が他地区ほど進んでいないことも響いているようだ。

薬学、保健・看護、家政が好調
人文・文化系も女子増加

 学部系統別にみても横ばい傾向は学部にあまり関係なく全体として現れており、ここしばらく減少傾向の続いていた経済・経営系も小康を保った。
 元気のいいのは薬学(前年比一五・三%増)、保健・看護(同一九・三%増)、家政(同一六・三%増)といった女子の職業直結型で、高い人気を集めている。文系学部では人間・教育(同一九・一%増)外国語(同七・三%増)など人文・文化系統も女子の増加を反映して好調。ただ、社会学系統の中の福祉関連は高齢者介護の将来を見込んでこれまで希望者が増え続けていたのがここにきて七・六%減。これは高齢者介護がかなりつらい面もある現場の仕事であるといった情報が行き渡ってきたことが影響していると思われる。
 ひところ新設が流行した学際・総合系の中で国際という名はあまりにも多く登場したことと、最近は規模の小さい新設大学での設置が多いこともあって六・七%減。それに比べるとまだ政策系の方が元気があるが一時ほどではない。
 国公立大学の出願状況は前述したように、センター試験の難化が響いて弱気になったため全体として一・三%減だが、学部系統別では理系で女子の職業に結びついているところが強いのが私立大学とも共通した特徴といえる。
 工学系一・七%増、薬学系六%増、歯学系一%増、看護・保健系八%増、ただ医学系は一%減だが、これは難関であるだけにセンター試験難化のあおりで敬遠されたためとみられる。文系は全体で二%減で、内訳をみると法学・政治学一%減、経済一%減、人文四%減などとなっており、総合政策や情報、環境などを含む総合系は五%増とまだ人気を保っていた。

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