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記事2001年4月3日 9号 (3面) 
教育の活性化と位置付け 「教育振興基本計画」策定へ提言
中高連の合同会議
財政面で公私立同じ土俵で
共存と公平な支援措置を
 日本私立中学高等学校連合会(堀越克明会長=堀越高校長)は、三月十三日、東京・市ヶ谷の私学会館で開いた全国理事会・全国評議員会合同会議で「教育振興基本計画策定への提言」をまとめた(3月23日号で一部既報)。この提言は、今後、中央教育審議会が検討、文部科学省が策定を予定している「教育振興基本計画」に向け、同連合会の主張・要望を表明したもの。同連合会の主張は、我が国の教育を活性化し、正しく位置付けるためには、公立学校と私立学校が財政面で同じ土俵の上で競い合えることが必要だ、というもの。そのため今後策定される「教育振興基本計画」には、公教育における私立学校の役割を位置付け、国と地方自治体による公・私立学校の共存と公平な支援措置等の実現を求めている。今後はこうした主張に対する理解を各方面に求めていく方針だ。同連合会の提言(全文)は次の通り。

 この度の「教育改革国民会議」の目指す教育改革の全容を見るに、そのほとんどが、家庭・社会・教育機関等の今日的閉塞状況を憂えての、それぞれの意識の改革を主とした改善の提案となっているように見受けられる。
 過去の度重なる教育改革が、十分な実を結ばなかったことについては、一方では教育行政機関の職員や教師が、社会の機構や様相の変化に対応しきれず、明治以来の中央集権的な教育行政の伝統が払拭されていなかったこと、他方では、関係者間の凭れ合いや、教育行政機関と教師集団との激しい対立等が問題であったことなどを指摘している。また、新しい学校づくりのためには、「教師の意欲や努力が報われ、評価される学校づくり」や「地域の信頼に応える学校づくり」を目指すべきことなどを指摘し、「コミュニティが学校をつくり、学校がコミュニティをつくる」ことなども強調している。
 こうした指摘や強調点は、正にだれもが共感を禁じえないところであろう。しかし、私ども私立学校の当事者の目をもってすれば、上記の諸問題は、正に悉く私立学校のそれぞれが、歴史的に工夫と苦労を重ねて、解決に腐心してきた事柄に他ならないのであって、それらをいかに克服できるかが、事実上私立学校の存在意義を左右してきたものであったと言ってよい。
 言い換えれば、今次報告の重要な狙いとされているところのものは、期せずして言わば国・公立学校の私学化への方向、あるいは私学的手法による国・公立学校運営の改革を指向するものと言える。
 顧みて、日本社会の今日的退廃、特に教育上の行き詰まりを考えれば、現象的には、いたずらに便利で豊かな生活環境がもたらした柔弱や堪え性の無さ、無責任やミーイズムの風潮とも言えるものではあるが、その淵源するところ、それらは、まことに今次報告の指摘するような、明治以来の中央集権的国・公立学校中心の教育管理体制の行き詰まりを示唆する、歴史的な要因に由来するものと見るべきであろう。
 このことは、既に明治の学制発足の当時、政策立案上の指導者であった大久保利通が厳しく意識していたことであって、彼は、こうした国家主導の教育体制は、後進国日本を、急いで近代国家に浮上させるための時限的措置とも言うべきもの、つまりは「異物変則」であると告白していた(大久保利通文書、第九巻)。今や日本が既に先進国家群の一翼を担い、多彩な価値観の下でのグローバル化を迫られている現代においては、「異物変則」に代わるべき「本物正則」の教育体制、つまり国・公立学校中心の画一的な教育規制や学校管理体制を見直し、今こそ民間活力としての私立学校を、教育の本道と位置づけ、そのシェアを拡げ、公立学校をも刺激して、教育を活性化すべき時が来たのであって、「教育を活性化し、正しく方向づけるために、公・私を同じ土俵の上で競い合わせること」が絶対に必要なのだと力説してやまない所以なのである。
 残念ながら、今次報告の中に、この最も基本となる視点が打ち出されていない。
 また、申すまでもなく、日本の将来を託する青少年の教育に公・私の差別があってはならず、既にある両者間の学費負担における著しい格差は、至急に是正されなければならない。
 公費による格差の是正は、一つには父母の教育費二重負担の矛盾を解消し、何よりも公・私立学校間に健全な競争原理をもたらし、「教育改革国民会議」の意図する教育の活性化をもたらすこと必定である。
 従って、これから策定される「教育振興基本計画」には、少なくとも公・私の役割とその位置づけ、更には、国や地方自治体による公・私立学校の共存と公平な支援措置等が打ち出されなければならない。

私立小中学校のシェア大幅拡充
公立学校偏重の是正


 以上の観点から、まず、「私立学校振興助成法」を、当初発想された趣旨に立って全面的に改め、特に二十一世紀のわが国の教育は、私立学校に強く依存するとの基本姿勢に立って、大胆な改革を実行すべきである(自由民主党文教部会私学振興プロジェクトチーム中間報告「二十一世紀のわが国を託する私学の振興方策について」)。
 今次「教育振興基本計画」には、こうした観点に立ち、その第一段階として、次の諸施策を盛り込むよう、強く要請する。
 1.公・私の収容について、公立高等学校のシェアを圧縮するとともに、中高一貫の教育体制の構築を、主として私立学校に依存するとか、小・中学校の私立のシェアを大幅に拡充するなど、制度上、財政上の措置を講ずること。
 2.国や地方自治体が、私学教育の自由とその自立を保障するのは勿論、父母の教育費負担の格差是正に向けては、(1)私立学校への公費支出を公立学校の二分の一とすること。
 (2)教育費負担軽減のための授業料軽減補助を大幅に拡大すること。
 3.国が新たに実施する諸改革については、公教育における私立学校の役割に留意し、(1)改革が及ぼす私立学校への影響を考慮し、公・私のバランスと実績の上に立って計画されるべきこと。
 (2)公・私共に必要とされる諸施策については、公立学校偏重にならないよう配慮されるべきこと。
 (3)特に、これからの教育の柱となる情報関係の施設・設備の充実については、私立学校に学ぶ児童・生徒が、公立学校に比べて不利な取り扱いを受けることがないよう、公・私同等の財政措置を行うこと。




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