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記事2001年4月3日 9号 (2面) 
大学院生急増に対応 「私立大学院の創造的改革へ」
私大連盟白書発表
文系大学院就職機会の拡充
コンソーシアム化の推進提言


 日本私立大学連盟(奥島孝康会長=早稲田大学総長)は三月十二日、大学院問題についての白書「私立大学院の創造的改革へむけて実態調査に基づく分析と提言」を公表した。この白書では学生、教員、企業の三者から見た大学院の実態を明らかにするとともに、いくつかの提言を行っている。特に、大学院生が急増している現在、大学院修了者の就職問題は大きな課題の一つだが、今回初めて私大連盟が独自に調査を行い、文系大学院修了者の就職機会の拡充を求める提言を行った。
 白書に収められた大学院修了者の就職問題に関する調査結果によれば、回答のあった企業百三社の中で、約六割にあたる六十一社が過去十年間(一九九〇―二〇〇〇年)で「文系・理系ともに採用実績がある」と答えたものの、文理別に見ると、理系単独では全体の八四・五%が採用ありと回答したのに対し、文系単独で採用ありとしたのは六六・〇%にとどまった。今後の採用予定についても尋ねたところ、理系では「引き続き採用を予定している」が六二・一%だったのに対し、文系では一四・七%にすぎなかった。
 大学院修了者の初任給についても「修士修了者独自の給与水準」と「学部卒同年齢社員と同水準」を合わせると、理系では九三・一%に達したが、文系では八〇・九%と、ここでも文理間で格差が出た。
 白書ではこうした結果を踏まえ、文系大学院修了者の就職機会を拡充が必要だと、大学院修了者の優先的採用、専門職種別採用、採用方法のオープン化、通年採用の徹底、優秀な留学生の採用を提言。待遇面でも大学院修了者の初任給制度の確立、専門性を生かした部署への配属、などが必要だとした。
 このほかの大学院をめぐる問題についてもさまざまな提言を行っている。その主なものは▽社会人大学院生受け入れのために、社会人入試制度の整備、夜間制大学院制度の確立、学費所得控除制度の創設▽国費留学生に留学先選択の自由を与える▽多様性・専門性に富むカリキュラムの提供とコンソーシアム化の推進▽日本育英会法を改正し、大学院生に対する給付奨学金を創設などだ。
 今後の私立大学院の在り方については、有力国立大学の大学院重点化攻勢の中でも「諸々の格差の是正を待ちつつ研究者養成機能は断じて放棄すべきではない」と強調。
 個別の私立大学院で研究者養成機能を担いきれない場合、コンソーシアム型の大学院、連合大学院が一つの選択肢になると提案した。
 また、高度専門職業人養成機能に特化するのも一つの道だと示唆している。

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