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記事2001年4月3日 9号 (1面) 
教養教育教育制度分科会で本格討議
状況判断で文科相から諮問も
次期総会諮問事項案提示 “新要領実施支援の論議を”
中教審
 中央教育審議会(文部科学相の諮問機関、鳥居泰彦会長=慶應義塾長)は三月二十八日、東京・千代田区内のホテルで第三回総会を開き、これからの教養教育のあり方等について討議した。また今後の審議予定が報告され、四月十一日の第四回総会で諮問事項案が提示、状況によっては文部科学相から諮問が行われる見通しが明らかにされた。総会で二回にわたって審議してきた「新しい時代における教養教育の在り方」については、四月十八日に初会合が開かれる教育制度分科会に舞台を移し本格的な議論が展開される。

 新しい時代における教養教育のあり方については、昨年五月二十九日、当時の中曽根弘文文相が諮問したもの。しかし今年一月六日に省庁再編、審議会の統廃合が予定されていたことから、十分に審議時間がとれず、昨年十二月二十五日、駆け込むような形で約半年間の審議内容が「審議のまとめ」として取りまとめられた経緯がある。
 その際、前期中教審は「審議のまとめ」の中で(1)教養教育の観点に立った教育改革の検証(2)検証の上に立った具体策の検討の二項目を次期中教審の検討課題として挙げていた。
 この日の総会では、教養教育に関する討議に先立ち文部科学省の事務局が、「審議のまとめ」の概要と私立大学などにおける特色ある教養教育の取り組み例を報告した。続いて行われた討議では、「審議のまとめ」に欠けている事項などについて委員がそれぞれ意見発表した。
 教養教育の内容に関しては、「教養の柱として人間と自然のかかわりを考えるべきだ」「日本と中国の古典を教養教育に入れてほしかった」「情操教育として芸術関係をもっと強調すべきだ」「個と公の関係が教養教育の根幹で、私の学校では校長講話等を通じて行っている」「生身の教養ある人に出会うチャンスを広げたい。若者が出会う大人のレベルを上げたい」などの意見が出された。
 また教養教育の方法に関しては、「教養教育には学校外のマンパワーが必要だ」「大学教育ではプロの養成ということをもっと明確に打ち出すべきだ」「大学を退職すると学校とは何の関係もなくなってしまう。アメリカでは違う。知の継承ができていない」「どう波及させるか仕組みづくりが必要で、教材と教師が大切。よい教材はネットワークで公開し、できない教師には再トレーニングが必要だ」「入試に使う膨大なエネルギーを生きる力、教養が根付くことに使わせたい」などの提案が出された。
 また学校関係者からは「新学習指導要領実施の時期を迎えて、そのサポートについて議論してほしい」といった意見や、「新学習指導要領実施を間近にして、学校現場では新しいことに取り組む時間がない。現場でできることにしないと絵空事になる。“ハウ・ツー”に知恵を絞らないといけない」といった声も聞かれた。
 このほか「大人の社会こそ問題」「すべてを学校教育の中に埋め込もうとすることには無理がある」といった意見や、大学入試や学校における教科主義の行き詰まりを指摘する意見も聞かれた。

 中教審は四月十一日に総会を開く以降は、五月九日に第五回総会を開く。それと並行して各分科会が開かれているが、まだ大学分科会、初等中等教育分科会については初会合の日程が明らかにされていない。
 町村文部科学相は、諮問事項に関しては、一年以内でのとりまとめを求めている。

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