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記事2001年4月23日 11号 (6面) 
すべての小・中・高校にIT化を
効率的な情報機器、インターネットの活用
新教科・情報「講演会」
ハイテク犯罪と情報教育
利用規則・モラル・ルールの整備 セキュリティー対策
東京私学教研

 教育現場では、公私立学校へのパソコンおよび周辺機器の普及が進む中で、指導する教員の資質向上のための研修、学習効果を高める分かりやすい副教材のコンテンツ開発、ユニークな学習テーマでの情報機器やインターネットの活用などにも関心が寄せられている。ここでは、情報化関連の話題を集めてみた。また、七ページ以下に最新の機器を紹介する。

 東京私学教育研究所(堀一郎所長)はこのほど、東京会計法律学園アルカタワーズ校舎(東京都墨田区)で新教科・情報「講演会ハイテク犯罪と情報教育」を開催、情報教育担当の教職員ら約六十人が集まった。
 講師の警視庁ハイテク犯罪対策総合センターの望月有人氏が、「ハイテク犯罪の現況について」講演した。
 同センターは(1)ハイテク犯罪被害相談受理(2)サイバーパトロール(3)不正アクセス禁止法違反事件取り締まり(4)ハイテク犯罪の捜査・技術支援(5)企業およびプロバイダー等との連携強化(6)広報啓発活動を中心に活動を行っている。
 望月氏はインターネットの特徴については、(1)開かれた世界であること(2)自由であること(自主規制)(3)データの宝庫であること(検索可能)(4)電子商取引が広がっていることを指摘した上で、これらの特徴からくるハイテク犯罪の特徴としては「匿名性、非対面性」「無痕跡性」「不特定多数性」「時間・場所の非制約性」を挙げた。
 インターネットの問題点として浮上してくるのは、「利用規則・モラル・ルールが整備されていないこと、セキュリティー対策が遅れていること、およびハイテク犯罪、違法・有害情報等が増加し多様化していること」とし、「特に初心者が陥る場合としてパスワードをむやみに教えてしまうこと、ウイルスプログラムを入れていないこと」と語った。
 ハイテク犯罪は「コンピュータ技術および電気通信技術を悪用した犯罪」と定義されているが、この中には(1)コンピュータ犯罪=コンピュータまたは電磁的記録を対象とした犯罪と、(2)ネットワーク利用犯罪=コンピュータ・ネットワークを手段として利用した犯罪が含まれている。
 このうち、刑法に規定されているコンピュータ犯罪は、「電磁気記録不正作出罪(第百六十一条の二)」「電子計算機損壊等業務妨害罪(第二百三十四条の二)」「電子計算機使用詐欺罪(第二百三十六条の二)」。最近は、パスワードを不正に入手し他人のホームページを改ざん、あるいは電子メールを盗み見て不正アクセスするなどのネットワーク利用犯罪が増加しているという。
 実際に起きた例として、インターネット・オークションを利用した詐欺罪について触れ、インターネット・オークションで電化製品を落札し、メールで相手と連絡を取り、代金を送金したが、品物が届かないし、また代金送金後、メールでの連絡ができなくなった事例を紹介した。
 望月氏は「今後は(1)誹謗、中傷などの人権侵害事案の増加(2)電子商取引の拡大(3)従来型の犯罪が多様化、複雑化したハイテク犯罪へ移行(4)サイバーテロ(5)ハッカーについてがハイテク犯罪の主流になっていく」と指摘した。



コンピュータ活用の環境整備 私学の先進校に高い評価
文部科学省学習情報政策課長 尾崎春樹氏

 私学の情報教育には画期的な試みが多く、先導的な役割を果たしてきたが、平成十一年十二月に打ち出されたミレニアム・プロジェクトでは高齢化、環境問題への対応とともに「教育の情報化」の推進がうたわれ、学校の情報技術(IT)活用環境整備が平成十二年度から六カ年計画で進められている。

14年度までに校内LAN整備

 全体目標の一つは平成十三年度までに、すべての公立小中高校、盲・ろう・養護学校等合わせて約三万九千七百校がインターネットに接続できるように、また平成十七年度までに各学級の授業においてコンピュータを活用できる環境を整備できるようにすること。
 二つ目は、規模など一定条件を満たす公立約八千百校で、校内LANの整備を行えるようにすること。
 三つ目は、私立小中高校が公立学校と同程度の水準の整備を目指して、コンピュータの整備およびインターネットへの接続を行えるようにすることだ。
 これらのうち、公立の校内LAN整備については平成十二年度補正予算により、当初の目標達成時期を二年早めて平成十四年度までとし、前倒しで実施中だ。
 文部科学省生涯学習政策局の尾崎春樹・学習情報政策課長によると、従来の情報化支援はコンピュータ教室の機器・施設整備が中心だったが、コンピュータ教室のパソコン整備目標を小学校でも中学、高校並みに一人当たり一台とするほか、一歩踏み込んで普通教室にも二台ずつ整備する方針を打ち出している。
 「教師用一台・児童生徒用一台を想定した数字だが、あくまで一普通教室当たりの平均であり、ある教室に五、六台配置してグループ学習をするなど、各学校で工夫していただきたい。すべての教科でコンピュータを活用するということについても、すべての学校で必ず活用しなさいと強制するものではない」(尾崎課長)

教材ソフトのモデル化も

 ミレニアム・プロジェクトの「教育の情報化」ではハードの整備と並行して、学校教育用コンテンツの開発に向け教材ソフトのモデルを示す「学習資源デジタル化・ネットワーク化推進事業」を、平成十二年度からの二カ年で展開している。
 公募で選ばれた十七のコンソーシアム(協議会)により、学校での試用を軸にした研究開発が進められており、分かる授業の実現に向けて動画および静止画の映像コンテンツを開発し、成果を公表してCD―ROM、その先はネットワーク経由で全国の学校・教室に普及していく。教材は、コンピュータ機器の操作に不慣れな教員でも扱えるものとし、パソコンとプロジェクターなどで映写するものを想定。教材モデル確立の過程で、コンソーシアムに参画している民間の教材会社に教育現場の意見を伝え、良質の教材の開発・普及を促す意図もある。
 この事業もすでに折り返し点を回ったところだが、尾崎課長によると「例えば算数で平行四辺形の面積を求める場合、鋭角部分を切り離して移動すると長方形と同じになる。児童がパソコンの画面で図形に手を加える作業を行うと、公式の確かさもよく理解できる。こうした場合には動画で答えを見るのでなく、静止画ソフトで試行錯誤しながら学ぶのが効果的。とかく動画の方がいいと考えられる中、静止画の長所にも気づかされた」と言う。

インターネット・コンクール私学が最優秀

 情報教育では私学の先進事例が目立っていたが、今後は環境整備に伴って公立学校の取り組みからも目が離せなくなる。しかし、本格的な試みでは私学の事例が一目置かれていることには変わりがない。
 去る二月二十八日に表彰式が行われた「第一回インターネット活用教育実践コンクール」では、玉川学園が内閣総理大臣賞、慶應義塾幼稚舎が文部科学大臣賞を受賞した。玉川学園の事例は小学校から高校まで、学年や校種を超えてチャットで交流を図ったもの。「学校での試みだけでなく、児童・生徒の家庭にも働き掛けて、情報交換の輪を広げた点でも評価できる」(尾崎課長)。玉川学園は学校法人全体として受賞しており、総合学園の利点を生かした世代縦断的な活動には、公立・私立を問わず学ぶべき部分が多いようだ。
 また、慶應義塾幼稚舎はシーズンオフの学校プールでヤゴの観察を行い、同じ取り組みを行った他校とインターネットで報告し合った総合的な活動だった。

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