こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2001年4月23日号二ュース >> VIEW

記事2001年4月23日 11号 (3面) 
日本私立大学連盟 新会長に聞く
会長 奥島 孝康氏(早稲田大学総長)
加盟大学共通の利益を図る
「教育立国日本の実現」連盟の主張


税制、補助金公私同じに私学への助成強化
大学事務の共同機関化も

 日本私立大学連盟の新会長に奥島孝康・早稲田大学総長が就任した。連盟は今年、創立五十周年という節目の年に当たり、奥島新会長のかじ取りにも大きな期待が寄せられている。奥島新会長に当面する課題についてうかがった。

―私学を取り巻く環境が大きく変わる中、私学団体としての連盟の在り方も問い直されているように思いますが。
 「一般に事業者団体には三つの性格がある。一つは競合回避。いわば加盟大学が棲み分けをし、共存共栄を図る。もう一つは共同研究。自分たちの共通の利害に関係するものを共同で研究していく。そして、第三に共同運営。加盟大学間に事業で共通するものがあれば、共同で行うことで、相互メリットを追求していく。これらを踏まえ、事業者団体としての役割を自覚的に追求していかなければならないというのが私の基本的考えだ。連盟は事業者団体だから、事業者共通の利益を図るのがその役割だ。私学が非常に厳しい時期に来ていることを考え合わせ、加盟大学共通の利益を図るために何ができるのかを考えなければならない」

―加盟大学共通の利益とは何でしょうか。
 「これまでは各大学間に利害対立は比較的なかったが、今後は『みんなで渡れば恐くない』が通用しなくなる。連盟としてはどの大学についても生き延びていくための共通の条件はつくっていく。しかし、そこで生き残っていけるかどうかはそれぞれの大学の努力による。つまり、連盟としては、情報の共有と機会均等は図るが、各大学には自助努力の下でそれぞれの道を開いていくことを考えてもらいたい。そういう厳しさを伴った連盟の運営をしていかなければならない。連盟では経営委員会でクライシス・マネジメントについての検討も行っており、連盟のできる範囲で加盟大学生き残りのためのお手伝いはする」
 各大学共通の利益ということでは、私学助成の拡充も大きな課題です。
 「諸外国との比較において日本の教育に対する公財政支出の少なさは明確だ。まず、これを拡充する必要がある。私学助成の拡充についての一つの観点は、これを国立大学の独立行政法人化問題とイコールフィッティングで考えるべきだ、ということだ。国立大学が独立行政法人になれば、国には私立大学についても同じ法人というレベルで、同じ思想で対応してもらう必要がある。自由な創意工夫によって競争できる環境をつくるという意味で、独法化には賛成だが、これによって私立大学と国立大学の基本的な公的助成の垣根がなくならないといけない。例えば、独法化後の国立大学の税制と私立大学の税制は同じでなければならないし、補助金についても国立大学と私立大学が決定的に違ってよいという理論的根拠がなくならないとおかしい」
 「もう一つの観点としては、これだけ出口のない日本の状況をどう打開していくかを考えたとき、教育以外に未来を開くカギはない、ということだ。連盟では『教育立国日本の実現』ということをずっと言い続けてきた。この実現のためには国が教育に対する公財政支出を強めていかざるを得ないという方向性が政治家の間でもかなり一般化してきている。この二つの観点から私学への助成は強化されなければならないし、また強化されるべきだ」
 私立大学がいま対応を迫られている問題に第三者評価があります。
 「連盟の会長に就任するにあたって、これから力を入れていきたいと考えた課題が三点ある。一つはいま申し上げた私学助成の拡充。そして、もう一つが第三者評価だ。国に助成を求める以上、自分たちの行っていることをディスクローズして、評価してもらわなければならない。連盟の十三年度事業計画では、大学財政のディスクローズと同時に第三者評価を重視している。これをどう行うか。大学評価・学位授与機構は私立大学の評価は行わないということになっているが、これを私学が独自で行うとなると、莫大な費用が掛かる。この問題に取り組むのが、私の第二の課題だが、新たに『評価・開示システム委員会』も立ち上げたし、常務理事会でもこの問題を重視していく方向性を打ち出している。何らかの形で回答を出していく」

― 先生が力を入れて取り組まれる三つ目の課題とは。
 「これからの大学経営を考えると、学生のための大学づくりが課題だ。そのためには経費削減を徹底し、効率のいい大学運営を行って、余剰分を教育研究に充てることを真剣に考えていかなければならない。そのための方策として、『大学事務の共同機関化』を図る。これが本格的に稼働すれば、従来の事務経費は二分の一以下に削減できるのではない。早稲田大学でもアウトソーシングを考えたが、一大学では大きなメリットがない。多くの大学が協力して行った方が費用も安く、効率的だ。現在『事業会社等設立検討委員会』をつくって本格的に検討を始めている。連盟の下に大学事務受託会社をつくり、参加したい大学がこれに参加し、業務に応じた会費を払うというシステムだ。夏休み明けには方向性が見えてくる」

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞