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記事2001年4月13日 10号 (6面) 
ユニーク教育 (91) ―― 金城学院中学・高等学校
中高完全一貫校へ
教養豊かな女性育成
海外との交流と奉仕活動に力


 金城学院中学校(早瀬潔校長、名古屋市東区)は名鉄瀬戸線の尼ヶ坂駅から歩いて五分の所に位置する。前の通りを一つ越すと、ちょうど中学校の前に金城学院高等学校(浅井敬校長)がある。
 中学校は「キリスト教精神に培われた、教養あふれる女性の育成」を建学の精神に掲げ、明治二十二年アメリカの宣教師ミセス・ランドルフによって創設された。中部地区最古の伝統を持つ同校は、百十一年を重ねた同学院の先人たちの熱い思いを受け継いでいる。
 学院のモットーは「主(神)を畏れることは知恵の初め」(箴言1‥7)。神への畏敬のこころを通して、自他の人格の尊重への目覚めを、人として基本と考えることを意味する。
 同学院は“中学と高校とがこのように離れているという地理的なデメリットをメリットにしよう”を合言葉に現在、中学と高校の六年間完全一貫教育を目指している。
 岩山正光・中学校教頭は「今までは中学と高校とで(教育内容が)不連続な部分があったが、平成十四年度から中学と高校との完全一貫教育に取り掛かり、十五年度には六年間を通して完全に一貫教育を行います」と意欲的だ。
 平成十二年度はまずシラバスから作成し検討していく。今後は教師の研修会を実施し、講師を招き中高一貫教育についての話を聞く予定だ。
 改革の手始めとして、「総合的な学習の時間」のプログラムを現在作成している。
 「この教科は単なる寄せ集めではなく、建学の精神に基づいたキリスト教的精神の表れた、しかも六年間の教育を連続したものにしようという考え方に基づく」(岩山教頭)
 最近では高校を卒業してからの進路が多様化してきており、しかも同校から金城学院大学ではなく他大学への進学も多くなった。これへの対応として、二年生では五教科から三教科の科目を選択、三年生では三つのコースと大幅な選択教科を取り入れている。
 英語教育には特に力を注いでいる。それは、同校が教育目標の一つとして「国際社会に活躍できる女性の育成」を掲げていることに基づいている。
 中学では週六時間の英語の授業のうち、一時間はネイティブスピーカーによって英語の授業(オーラル・コミュニケーション)が行われている。一年はクラスを二つに分けて、二十人の少人数で授業を行っている。
 国際交流も活発だ。一九七一年以来、アメリカのエッカード大学(フロリダ州)での語学研修を、一九八六年からはオーストラリアのファーバンク・グラマー校(ビクトリア州)およびアメリカのメントン・ガールズ・グラマー校(フロリダ州)との姉妹校提携による語学研修を行っている。
 またオーストラリアの姉妹校からは二十人の生徒が二年ごとに来校し、二週間の交換プログラムが実施されている。
 奉仕活動も日常の活動の中に解け込んでいる。昭和三十四年に愛知県を襲った伊勢湾台風では、大学、高校、中学の木造校舎は大打撃を受けたが、実家の被害が軽い学生・生徒は学校から招集を受けて登校し、義援金の募集、炊き出し、託児所の手伝いなど、救援活動に専念したという。キリスト教の奉仕の精神は、さまざまな場合に表れている。阪神淡路大震災(平成七年)の際には、教師や生徒が奉仕活動に参加し、また、若狭湾でロシアのタンカーが沈没(平成九年)した折には中学生が原油を取り除く作業を手伝った。
 岩山教頭は「奉仕活動も含めて、私たちには先輩の成し遂げてきた伝統を継承し、生徒たちに伝えていく責任がある」と語る。生き生きと輝いている生徒たちの表情が印象的だった。


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