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記事2001年3月23日 8号 (1面) 
大学等への飛び入学拡大
学教法、社会教育法の改正 衆院に提案
物理数学の分野制限撤廃 高校教育の空洞化で懸念
小・中学の出席停止措置適用要件明示 出席停止生徒へ支援も
 「学校教育法の一部を改正する法律案」と「社会教育法の一部を改正する法律案」が三月十三日、閣議決定され、同日、衆議院に提出された。学校教育法の一部改正案は、小・中学校で行う出席停止措置の適用要件を明確化し、また高校二年修了時からの大学等への飛び入学の拡大などを行うもの。一方、社会教育法の一部改正案は、家庭や地域の教育力向上に向け社会教育行政の体制整備をするのが目的。この二法案で文部科学省が今国会に提出を予定していた教育改革関連六法案が出そろう形となった。
 学校教育法の一部改正案は、昨年末の教育改革国民会議最終報告などを踏まえたもの。改正事項は大きく分けて、▽小学校、中学校、高校等における社会奉仕体験活動、自然体験活動等の体験活動の充実▽児童生徒の問題行動への適切な対応▽大学制度の弾力化▽「寮母」の名称変更の四点。
 このうち問題行動への対応に関しては、小・中学校で出席停止措置を行う場合の四つの要件((1)他の児童生徒に傷害、心身の苦痛または財産上の損失を与える行為(2)職員に傷害または心身の苦痛を与える行為(3)施設・設備を損壊する行為(4)授業その他の教育活動の実施を妨げる行為)を示しており、このうち、一つまたは二以上を繰り返し行うなど性行不良で、他の児童生徒の教育に妨げがあるときには保護者に対して児童の出席停止を命ずることができるとしている。ただし出席停止を命ずる場合に市町村教育委員会は、あらかじめ保護者の意見を聴取するとともに、出席停止の理由、期間を記載した文書を交付しなければいけない。手続きに必要な事項は教育委員会規則で定める。同時に市町村教育委員会は出席停止期間における学習に対する支援その他の教育上必要な措置を講ずるとしている。
 大学制度の弾力化に関しては、飛び入学制度の拡大、大学に夜間授業を行う研究科、通信による教育を行う研究科を置くことができることの明確化、勤務年数を問わず名誉教授の称号を授与できるようにすることが改正点。
 この飛び入学制度は現在、物理と数学の分野でしかも博士課程を持つ大学に限って高校二年修了時から大学進学が認められているもの。それを今回の法改正では分野の制限を撤廃、しかも受け入れ校についても博士課程を持つ大学から広く四年制大学、短大、専門学校(省令で対応予定)にまで拡大することにしている。
 これまで例外措置との位置付けだった飛び入学が拡大することに関しては、中央教育審議会の総会でも委員から高校教育への影響、高校教育の空洞化を懸念する意見が出された。
 これに対して文部科学省は受け入れ校には自己点検・評価の公表を義務づけ、受け入れ状況を高校側が把握できるようにするなどの対応措置を取ることを明らかにしているが、高校関係者の間には、一部の学校で飛び入学が定員充足のために使われるのではないか、との懸念もある。この飛び入学は、旧中教審が平成九年六月に提言、特例措置として稀有な才能を持つ高校生に早い段階から高等教育の機会を提供することを目的に創設されたもので、研究者養成に主眼が置かれていたが、平成十四年度からは、様々な才能を育てるとの方向にシフトする。高校二年修了時から大学、大学院に進学する人の場合、早ければ二十三歳で博士号取得者が誕生する。
 寮母の名称変更は男女共同参画社会への対応を図る観点から特殊教育諸学校の寮母を「寄宿舎指導員」に改めるもの。
 一方、社会教育法の改正は、家庭教育に関する講座等の実施及びその奨励を教育委員会の事務として明記する、青少年に社会奉仕体験活動、自然体験活動等の機会を提供する事業の実施・奨励を教育委員会の事務として明記するなど。
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