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記事2001年3月13日 7号 (9面) 
新校長インタビュー (20) ―― 恵泉女学園中学校高等学校
校長 安積 力也氏
“あなたはどう思うの”キーワードに
聖書、国際、園芸が教育の柱
 安積力也・恵泉女学園中学高等学校長(東京都世田谷区)は、大学卒業後、私立敬和学園高校(新潟)で十九年間、私立日本聾話学校(東京)で九年間、教諭、教頭、校長等を歴任し、昨年四月から現職に就いた。
 結果的には乳児から高校生までの教育に携わり、理論からではなく現場から子どもの発達の姿を学んだ。これが安積校長の今の教育観につながった。
 「特に障害児教育の現場で痛く学んだことがあります。教育には、どんなに言葉で教えたくとも教えることのできないものがあるということ。他者との生きた関係性の中でおのずから育ってくるのを待つしかないもの。それが人間の心と言葉の発達です。そして人格(パーソナリティー)の発達には、厳然たる順序性があるということです」
 人格には「構造性」があり、その土台にあたるものは、実は「情緒」であること。その上に自主性や社会性が育ち、こうした基礎に立って「知識」は無限に発達するという。
 「情緒や感性が豊かに発達し安定するように育つことが、何より大切です。そしてこれは、他者との深い関係性によって初めて育まれるものなのです」
 ところが特にこの十年間、子どもを取り巻く他者関係は、家庭を含めて急激に希薄化しており、他者に深く心を開くことを知らないまま思春期に入ってくる子どもたちが増えているという。
 「頭でっかちで知識はあっても人格の足腰がひょろひょろのまま思春期にはいってくる。しかも心は人に対して閉じている。不安定な情緒的土台では持ちこたえられなくなり、切れてしまうのは理の当然でしょう。これらは、発達の順序性を間違えた子育てや教育の結果なのだと思います」
 安積校長は、同校の生徒については「驚くほど不思議な伸びやかさを持っています」と印象を語る。
 「真の平和な世界を創り出す目覚めた女性を育てたい」という創立者の願いは、「聖書」「国際」「園芸」の三つの柱に集約され、カリキュラムに反映されている。教育方針ははっきりしている。キーワードは“あなたはどう思うの?”
 生徒は「感話」の時間で自分の内面の思いを皆に発表する場を与えられる。
 「大学進学の実績を誇るようなことはしない」
 これは、大学に入るまでではなく、二十年、三十年先にどのように自分らしく生きているかにまで責任を負う教育をしたいからだ。
 「私は、混迷の深まる時代状況の中で、内側に確かな規範を持った、個としての独立性を持った女性を育てたい」と、安積校長は希望を語る。
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