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記事2001年3月13日 7号 (4面) 
至上最高の受験率 私学人気更に上昇
二〇〇一年の首都圏における中学入試
小学校卒業者の14%が受験
新指導要領への不安切迫
 二〇〇一年の首都圏私立中学入試は首都圏内小学校卒業生の受験率において一三・七%と史上最高を記録した。圏内の小学校卒業生数はすでに十数年減り続けている中で、入試を行わない公立中学を除いた私立・国立中学入試の受験者数は一九九一年の五万千人をピークに、その後八年間は卒業生数の減少に歩調を合わせるように減り続けたが、受験者数は一九九九年の三万九千六百人をボトムとして、昨年は増勢に転じて四万百人。今春もさらに増えて四万千八百人となった。これは小学校卒業生数の三十万五千七百四十二人に対して受験率一三・七%となり、私立中学の人気の上昇ぶりをはっきり示したものといえる。
 原因について日能研中学入試情報センターの井上修副所長は「新学習指導要領に対する不安が切迫してきたことが一番大きく影響している」と言う。授業内容を減らし「これ以上教えてはいけない」と言う新学習指導要領の制約が特に公立中学校では顕著に現れるだろうという予想から、子供の学力低下を懸念する親がいままで以上に私立中学へ熱いまなざしを向けるようになった。
 公立でなくとも国立の中学校でも国の指導要領の制約は強まるだろうとの見方から減少を免れることはできなかった。
 「新指導要領の基準は最低限を示したもので、それ以上教えてはいけないというのではない」と、今ごろになって文部科学省は軌道修正の口ぶりを匂わせているが、実際に各授業科目個々についての表現は「〇〇以上教えてはならない」といった制約の言葉があふれている状況では親の不安はなかなか払拭されることはないだろう。
 しっかり教えてもらえる私立中学に入学したいという意欲は併願校数の増加に示されている。
 年別に首都圏中学の一人当たり併願数の推移をみると、一九九八年の四・四校から九九年は四・八校、二〇〇〇年は四・七校、今春は四・八校と増加傾向を示している。
 首都圏内の県別に地域的な状況を見ると、昨年と今春との受験者数は東京が一万八千六百人↓一万九千五百人へ増加、神奈川は一万四百人↓一万三百人と微減、千葉は五千四百人↓五千五百人と微増、埼玉は五千七百人↓六千五百人とかなりの増加。
 埼玉では今春新設された独協埼玉が最初から高い人気を集めたのをはじめとして増勢が強く、首都圏を全体として押し上げている。そして一月中に入試を行う埼玉で合格校を確保した受験生が二月入試の東京の上位校へ強気の出願をするために、埼玉に近い東京の私立中学が受験生を多く集め、その結果、東京の受験者数を増やすという玉突き現象につながった。
 東京の男子校、城北などはその顕著な例であるが、女子校でも同様な現象がみられる。
 東京の男子上位校では麻布、開成、武蔵のご三家など上位校が少し受験生を減らす傾向がでている。これは受験生側で自分の学力に見合った可能性の高い学校を目指すようになったためとみられる。
 偏差値六〇以上の上位校で唯一増やしたのが慶應義塾普通部だが、これは入試日をこれまで二月一日学力試験、二月三日面接と二回実施していたのを昨年から同一日に学力・面接ともいっしょに済ませて受けやすくしたことが影響したとみられる。
 上位校減少傾向の中で早稲田は千葉から行けるということが増える要因となってほぼ横ばい、早稲田実業は国分寺移転で減少を予想されたが、これも微増とがんばった。

学校選びの向上が影響
広く多くの受験生にチャンス

 神奈川ではサレジオ学院が増加した。学校所在地の横浜市都筑区が高級住宅地として発展したため、父母の学校に求めるものが大学進学実績だけでなく中学三年間の楽しさ、充実感を要求するというように、学校の選び方の向上が影響した例といえる。
 この傾向は今春入試で全体的に強まった。東京の女子校では桜蔭、学習院女子、立教女学院、東洋英和女学院が増やした。
 二〇〇一年の首都圏の私立中学入試が二〇〇〇年に比べて変わった点を入試科目についてみると、入試科目の階層化が進んだ。これまで四科目(国算社理)入試の上位校と二科目(国算)入試の中堅校があり、その中間に受験生が二科目と四科目から選択できる中間レベル校があった。今春入試では従来の二科目型と四科目型から二〜四科目選択方式へ移行する動きが偏差値五十前後の学校で目立った。
 四科目を幅広く学んだ人も入学してほしいが、入試には四科目必要と条件をつけて受験層を狭めると二科目型を締め出す恐れがあるため、なるべく多くの受験生にチャンスを与えたいというねらいがある。
 選考方式は多くの場合、まず国語、算数の二科目の成績をみて、合格者の八割程度を採用する。そして残り二割程度の枠内で四科目受験生の成績をみると、国語、算数の成績は悪くても社会や理科のできる受験生もいるので、これが救われる。四科目の受験勉強をしておいた方が選考チャンスは二回となるため、得策というわけである。男子校、女子校、共学校とも同じ傾向がみられる。
 入試日程をみると、共立女子がもとは二月二日だけだったが、数年前に二月三日にも実施、今春は二月一日にも実施して三回入試としたように、昔は少なかった入試回数を増やして、三次試験、四次試験を実施するのがいまでは当たり前の状態になった。


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