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記事2001年3月13日 7号 (3面) 
八王子市教委と大学が協定
「学校インターシップ」
パソコン、英会話など得意分野で
学生は教育現場補助、実習単位認定
 八王子市教育委員会は市内にある大学と協定を結んで、大学生を市立小中学校の教育現場へ実習に派遣してもらい、教員の補助的な仕事をしてもらう「学校インターンシップ」という制度を平成十三年四月からスタートさせる。これは、小中学校側にとってはパソコンや英会話といった得意分野を持つ若い大学生に教育、補助的な応援をしてもらう一方、大学生にとってはそれが教育現場における実習として大学での履修単位に認定されるという双方にとってのメリットがあるもので、昨年秋の試行期間を経て好評を博したため、本格的に実施されることになった。

 市教育委員会では八王子市内にある小中学校百六校に対して「学校インターンシップ」の受け入れ希望を問い合わせたところ、半数の五十三校から合計五百四十人の派遣を希望する回答があった。希望校とりまとめの表には、やってほしい仕事の内容は、算数、体育、音楽、情報(パソコン)、国際理解教育、総合的な学習などの指導補助、クラブ活動指導、心の教室での相談などが列記され、希望人数は数人から十数人、中には四十人という大人数の要請もあった。これに対して八王子市内に二十一校ある大学・短大側では、今年二月二十六日現在、創価大学、多摩美術大学、中央大学、東京工科大学、東京純心女子大学の五大学が協定に加わり、国際理解教育では東京純心女子大学の英米文化学科、生徒の悩み相談は中央大学心理学部、パソコンは東京工科大学というようにそれぞれ得意分野で名乗りを挙げている。単位認定は例えば「児童心理実習1」として毎週一回ずつ半年間の実習で二単位、通年で行えば四単位となる。
 普通の教育実習は二〜三週間というものが多いが、学校インターンシップでは長期間にわたって行われるので、学生や小中学校がメリットを受けるだけでなく、大学にとってもそれぞれの専門分野で恒常的な実習指定校が現れたようなものである。東京純心女子大学の英米文化学科は大学案内ガイドブックの中の「児童英語教育コース」の紹介文に「このコースの大きな特徴は、在学中に小学校や語学学校へ行って教育実践をすることです。それも週に一度の割合で二〜三年間行います。大学では理論的な勉強や自分の実践の分析を通して、実践との連携研究をします。実践は八王子市内の小学校、語学学校、それに海外の小学校(英語圏に八週間)です」として、主なカリキュラムには子どもの言語指導、児童英語指導などの科目を挙げている。
 「学校インターンシップ」制度の発端となったのは不登校の子どもを何とか学校になじまませようと始めたメンタルサポーター事業だった。平成十年秋から文部省でも「心の教室相談員」という事業を始めたが、八王子市教委のメンタルサポーター事業はそれより一足早く始まった。大学で心理学専攻か教職課程を履修している学生に小中学校へきてもらって、空き教室や保健室、相談室で子どもと話し合い、心を開かせようというねらいである。当初は「教師が努力してもできないことなのに学生に何ができる」「問題が起こったらどうするのか」といった教師側からの反発が強かったが、実際にやってみると、子どもにとって大学生は親や教師といった大人と違って、お兄さん、お姉さんといった感覚であり、マンガや流行歌などの話題も理解してもらえる親しみやすい存在だった。謝金は一時間九百円だが、アルバイト感覚で応募してきた学生はおらず、自分や友人が不登校の経験があるなど、身近な問題として取り組もうという心構えの学生ばかりだった。市内三十六中学校のうち二十四校に四十四人の学生が放課後や授業時間中に一回三〜四時間、週二〜四回派遣されたが非常に評判がよく、不登校から保健室登校へ、保健室登校から教室へ行って友達と遊べるまでになった子どもも現れた。

教委が市内の小中学校に希望調査
1月に作業開始新学期から発足

 この制度をもっと広げるために、八王子市教育委員会指導室が音頭をとって大学と小中学校の仲介を始めたのが「学校インターンシップ」制度である。
 市内の小中学校現場から「どんな授業や活動に学生の応援がほしいか」と質問・調査して要望を出してもらい、それを大学に取り次いで要望に合った特技の持ち主である学生を派遣してもらう。
 大学側にはこれを教育現場における実習として単位を認定することを教授会で決定してもらう。これを正式な協定文書として取り交わし、この一月に作業を開始、いよいよ新学期から発足の運びとなった。


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