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記事2001年2月13日 4号 (3面) 
インタビュー 自由民主党・文部科学部会長 小野 晋也氏
まず人がありき「人間の森文明」実現へ
心の教育を力一杯


 自民党の文部科学部会長に一月十六日、小野晋也・衆議院議員が就任した。「教育改革国会」を迎えて、与党・自民党の文部科学部会長はどのような舵取りを見せるのか。一月二十三日、当面する課題や教育の将来像などについて伺った。


 森総理は通常国会を教育改革国会と位置付け、教育にこれまで以上に積極的に取り組む方針ですが、党としてはどのような方針で臨まれますか。
 部会長 森内閣が発足して九カ月目。小渕前総理からの突然の交代、続いて総選挙という渦に巻き込まれ、森総理はこれまであまりご自身の政策を積極的に出す取り組みをしてこられなかった。総理は、「国家百年の計」である教育に力を入れたいと考えておられたようだが、なかなか踏み出しにくかった。今回は教育改革国民会議の答申も出された。それを具体的に法案化しつつ、国民的議論を行うなら良い機会だ。総理には、人を育てて国を発展させたいということを、肉声で国民に訴えていただきたいと思う。私は総理を全力でお支えする決意だ。
 今後、中央教育審議会で教育基本法、教育振興基本計画についての審議が行われますが、党として対応をお聞かせください。
 部会長 国として大切な基本方針を決めていくのだから、恐らく党としても議論していくことになるだろう。ただ部会だけでは議論をし尽くせない問題なので、今までやってきたように特別の委員会を設けて、そこで集中的に議論していただくことになるだろう。そのあたりは文部科学部会と文教制度調査会で話し合って方向を決めることになると思う。
 教育基本法、教育振興基本計画に対する考えは。
 部会長 いまの子供を見ていて、自分自身の足元に頼りなさを抱いている気がしてならない。歴史、伝統、文化等は、本人が生きている社会の足場を認識してもらうために、子供時代にきちんと教えるべきだと思う。また、時代に対応する新しい教育分野は積極果敢に取り入れていくべきだ。特にいま強く感じていることは、頭の勉強、心の勉強、体を培う授業と、それぞれがばらばらに考えられ、全一の存在として人を育む姿勢が弱い。人間が一つの命を持って、生きて、成長していくことを、子どもたちには体全体で受け止めてもらいたい。その一番有力な方法は体験で、何かに熱中して自分がなくなるくらいに一生懸命取り組む中にこそ、人間の生きる力が宿ってくる。教育の現場に、そうしたことをうまく取り入れていきたい。
 私学教育、私学助成に対するお考えは。
 部会長 これまでも私学は、建学の精神を重視され、理想を追い求めて努力されてきたが、この先、それをもっと徹底していただきたい。変化の激流の中で、これまでの社会の物差しが当てはまりにくくなり、困惑している人も多いが、こういう時代はやはり、個人個人がしっかり判断を下せる羅針盤が必要だ。私学では、子供たちがしっかりと自分の心の羅針盤を持てる教育をしてほしい。心の教育を力いっぱいやってほしい。
 私学助成については。
 部会長 これまで自由民主党は、一貫して私学助成について拡充を求めてきた。国の財政が余裕のある状況ではないので、望まれるだけの対応はできないが、できる限り私学がお金の心配をせずに教育に力を注げるよう、後方支援をしっかりやりたい。
 現在、学生生徒の理科離れが指摘されていますが、その点については。
 部会長 我々はいろんなことをやってきた。科学技術基本法をつくり、制度も改め、大きな予算も準備した。それでも科学技術離れが必ずしも止まっていない。彼らに科学技術に取り組むことへの喜びを感じてもらうようにする必要がある。そうしたことを学校教育や社会教育の中でつくり上げていきたい。野球の好きな子供は甲子園を目指して野球の強い高校に進学する。一方、技術者を目指す子供は、縁の下で世の中を支えるとの印象が強いが、彼らも、他人と競い合いたい、他人に勝ちスポットライトを浴びたい、と思っている。子供たちは何かに熱中してこそ輝くのだ。人がなんと言おうが、自分はこれが面白くてたまらない、その心情を社会が承認する場所をつくらなくてはいけない。これまでそんな舞台を準備してこなかったことに気付き、世界中を相手にして戦えるようにしたのが「ロボフェスタ(国際ロボット競技大会)」だ。今夏、神奈川県と、大阪府を中心とする関西圏で開催する。
 今後の日本に対する夢は。
 部会長 いままでの日本では人を育むということが軽視されてきた気がしてならない。しかし、経済が大事だというが、人が成長することによって良き仕事がなされて、経済が良く動いていく。環境に関しても、例えば亜硫酸ガスの濃度がいくらになればいいということではなく、良く環境問題を考え判断でき、人が育まれてこそ、良き環境が生まれる、こんなふうにまず人ありきという社会と文明をつくりたい。それを称して「人間の森文明」と言っている。人間一人ひとりが一本一本の大木になったら豊かな森になる。その豊かな森の中で命が育まれる社会をつくりたい。この根本が教育の中で確立できれば、子供たちは迷わず学んでいける。いまは目の前の現象にとらわれ、強ければ勝つ、弱ければ滅んでしまうという極端なダーウィニズムに毒されてしまっている。人間が輝くためには一生懸命生きなければいけない。しかし輝いて生きていながら、他の人も共に生かすことができる。そんな考え方に基づく社会をつくり出すことが私の二十一世紀の夢だ。

永田町イラ短日記永田町の様子をイラストと短歌で紹介するホームページ(小野晋也氏作)
「永田町イラスト日記」

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