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記事2001年2月13日 4号 (2面) 
インタビュー 文部科学省 副大臣 河村 建夫 氏
私学の出番、財政支援は私学助成で
教育にも競争原理導入が必要
私学が改革の受け皿に


 第二次森改造内閣で文部科学省の副大臣に就任した河村建夫氏(衆議院議員)に現在進行中の教育改革のねらいや私学振興に対する考えなどを伺った。
 文部科学省の副大臣として今後重点的に取り組んでいくことは何ですか。
 副大臣 不登校、いじめ、学級崩壊といった教育現場が対応しきれないような問題が起きている。短期的にはこうした問題に取り組み、また長期的には教育基本法に代表されるように、これからの日本の教育の方向をどうするかだ。当面の課題としては、家庭教育の重視とか、教員の資質向上・確保などがある。教育改革国民会議の十七の提案についても、すぐに実行できるものは実行に移す。そのため通常国会に関連法案を提出する。その中では少人数学級編制、優秀な先生を評価、現場不適当な先生を排除できるようにする。また出席停止(の明確化)などをする。
 私は、胎教の段階から幼稚園、小学校低学年までをもう少し重視しなければいけないと思う。子供とともに親も成長できる仕組みを作る必要がある。文部省はこれまでこうしたことに踏み込んでいなかったが、保育所を含めて幼稚園が、子供と親とが一緒に育つ子育て支援センターにならなくてはいけない。そういうことへの財政措置等はもっと惜しまずにやるべきだ。
 それから教育にも競争原理がいる。学区を広げ、親や子供が学校を選択する方向に進んでいる。選択にかなわない学校はつぶれていくかもしれない。今度の法改正では私立小・中学校の設置基準がなかったので、それをきちんとして学校をつくりやすくする、ということも考えている。そこは私学にも頑張ってもらい、これからの教育改革の受け皿に私学が目指してもらいたい。特色を出して人間教育を行える私学をどんどんつくってほしい。そういう意味では私学の出番はあるし、財政的な支援は私学助成をきちんとしたらいい。
 教育改革国民会議の最終報告の教育振興基本計画に関する記述部分には私学振興助成という言葉が盛り込まれておりますね。
 副大臣 これはむしろ党がやらなくてはいけないことでしょうけど、私学振興助成法あたりを見直してもっと弾力的にやれるようにしなきゃいけない。この見直しも検討してもらいたいと思っている。しかしむしろ党の方からたたき台を上げてきてもらいたい。
 国立大学も独立行政法人の方向に行き競争原理の中に入ってくる。その中で私学と国公立が競争関係に入る。私学側も、短期大学も生き残りをかけているので活性化策の検討が必要だ。国民のニーズに弾力的に応じているのはむしろ専修・各種学校だとの声もあるが大学設置法に基づく四大や短大が後れをとってもいけない。最近ではダブルスクールということもある。もっと自由に弾力的に行える仕組みを考える必要がある。設置基準も規制緩和の方向に進めて、しかし同時にかなり競争原理が入ってくるので、自己責任が問われる。これからは“出口管理”をきちんとしてもらいたい。
 そうすると頑張っている学校により手厚く助成するということですか。
 副大臣 国立も独立行政法人となって、そうなっていくのだから、私学助成についてもちゃんとやる。大学評価・学位授与機構の評価について私学も対象とすべきで、私学側がむしろ自信があったらうちもどうぞ評価してください、というくらいが望ましい。
 先日の「二十一世紀教育新生プラン」を含めて、文部科学省はこれまで抵抗があって手をつけにくかった問題について、これまでより一歩踏み込んだ印象を受けるのですが。
 副大臣 それは国民サイドが、教育現場の混乱、この間の成人式などを見て、教育に原因があるとの思いを強めているからだ。日本の学校全部が悪いわけではない。結果の平等まで考えてしまったものだからいけない。条件は平等だが、結果については多様なものとなる、という教育を求めていくべきだ。町村大臣もかなり思い切って大胆にやっていこう、それは世論だ、との気持ちでいる。
 教育改革関連法案には十七歳で大学に飛び入学できる改革も盛り込まれており、これまでの物理、数学の分野という限定をはずし、飛び入学先も大学以外にも広げようとしておりますが、そのことが高校教育の空洞化を招く恐れはないですか。
 副大臣 高校は一番多感な時代。高校時代に学ばなければいけない基礎基本はあると思う。どんどん進む人は進むコースをつくってやり、もっと時間をかけてやりたい人は一年ダブルことなど恐れずにゆっくりやったらいい。習熟度別教育があっていいし、それを認め合う学校現場であり、社会でなくてはいけない。
 公立学校が活性化して公私で競い合うことは良いことだと思うのですが、財政的な基盤がある程度同じ条件で競い合うべきだと思うのですが。高校の場合、公私間で保護者が負担する教育費の格差は六倍です。
 副大臣 まだ六倍もあるかなあ。全体のバランスからいったら、大学から幼稚園までの私学助成はやっと、十三年度予算案で四千億円を超えたところ。公教育はその数倍もある。
 そのほかには。
 副大臣 大臣と話したんだが、義務化とはならなかったが、十八歳になった時点で全国民に奉仕活動をとの提言があったが、憲法十八条の関係で義務化にはならなかったが、この問題についても中教審でゆっくりやってもらうことになった。例えば入試は終えて、学生を確保していていいが、九月入学までの五カ月間を使って体験をさせる。一年間ならば、卒業までにさらに半年間させ、それで卒業を認定するようにすればいい。春には入学式だけをやっておいて、その後、社会に出て体験し九月に学校に戻ってくればいい。
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