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記事2001年12月3日 31号 (8面) 
ユニーク教育 (101) ―― 近畿大学附属和歌山高校・中学校
愛、信頼、尊敬を校訓
厳しいが温かく堅実
「授業は学校の命」が共通認識


 徳川吉宗を生んだ城下町、歴史と伝統が今に生きる和歌山市を一望に見渡せる高台に、近畿大学附属和歌山高等学校・中学校(野田禧夫校長、和歌山県和歌山市)は位置している。
 「人に愛される人、信頼される人、尊敬される人になろう」の校訓のもと、「知育・徳育・体育の三領域にバランスのとれた教育を生徒一人ひとりに行う」が教育目標だ。「一人ひとりの志望を大切にし、その実現のために授業に力を注いでいます。これが本校の特色」(野田校長)という。掲げられているだけの校訓や教育目標が往々にして多いものだが、同校ではそれが日々の教育活動に深く根づき、具体的に生かされ実践されている。
 現在、千六百余名の生徒が在籍している。全教職員は一人ひとりの生徒に対し、千六百分の一ではなく、個性を持つ個人として尊重しながら接していくという姿勢が常に貫かれているのを強く感じる。入学時点から生徒の進路希望を重視し、それを温かく育てながら実現を可能にする環境・教師・施設そしてシステムを有する学校づくりが推し進められている。
 来年、同校は創立二十周年を迎えるが、現在高等部と中高一貫教育に分かれ、国公立大学への合格者数は県内トップの実績を果たしている。私立大学にも多くの合格者を出し、全体の現役合格率も高い。また文武両道を目指すクラブ活動も盛んで、サッカーや剣道あるいはESSなどは全国レベルにあり、ラグビー、陸上競技、放送部なども大きな成果を上げている。
 同校の特色は、とりわけとっぴなことを行うのではなく、毎日の地道であるが深みのある質の高い教育を継続できている点、そしてそれを一層向上させる努力と、実践に見ることができる。一言で言えば、厳しいが温かく、堅実で面倒見のよい学校ということになろう。目新しいことが目を引きがちな教育の動きの中で、一つの痛快事であるといってもよいのではないだろうか。その点を同校の幾つかの刊行物を例にとって見てみる。
 「SUCCESS」(進路指導部発行)は卒業生の合格体験記をまとめたものだ。多くの大学合格者を出す同校の実績を反映して、毎年寄稿者が多い。体験に基づく具体的で示唆に富んだ内容は、在校生にとって大変貴重な先輩たちのアドバイスである。ただ配布されるだけでなく、進路指導に関するホームルーム活動のなかで教材として活用されている。
 また同校の教職員の間には、「常に学び続ける教師」、「授業は学校の命」という共通の認識があり、教員資質と指導法を常に向上させることに力を入れている。その一環として「公開研究授業」が行われている。毎年数回、期間を決めて、教員が互いの授業を公開し、評価し合うものである。その成果が「JOURNAL」(教育研究部発行)という冊子にまとめられている。これは授業研究に内容を絞ったユニークなものだ。例えば、授業分析のほかに、同校が独自に開発した授業評価法や発問の理論、授業実践から生まれた現在六百余りにも及ぶ「授業箴言」などが掲載されている。
 さらに教職員が日々の研究等の成果を発表する場として、紀要「光雲」(図書館部発行)がある。これには各教科の教育実践報告や、専門的な研究発表などが載せられる。これらは日々の積み重ねの一つの結果として、同校の教育活動の豊かさと確実さを物語っている。



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