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全私学新聞

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記事2001年12月3日 31号 (4面) 
日短協が秋季総会
今後の短大の方向性を審議
新時代に応える短大の役割機能


日本私立短期大学協会(川並弘昭会長=聖徳大学短期大学部理事長・学長)は九月二十七日、札幌市中央区の札幌パークホテルで平成十三年度秋季定期総会を開き、中央教育審議会の審議動向、日短協「短期大学振興対策特別委員会」の審議動向などについて協議を行った。また、協会会則改正案、会長選考委員会規程改正案、協会支部規程案についても協議、いずれも異議なく承認され、即日施行となった。


短大を更に活性化
高等教育に大きく貢献
日本私立短期大学協会会長短期大学基準協会会長川並 弘昭氏

会長あいさつ

 大学審議会で討議されていたことの結論が出ないうちに、中教審で短期大学の問題が審議されておりまして、われわれ協会の仲間も何人か臨時委員、専門委員として参加させていただいており、短期大学の意見が十分反映されるよう、やっていただきたいと思っております。ただ、そのためにはいろいろな機会に会員の皆さまの声をお聞かせいただきたいと思っております。また、協会の会則についてもいろいろとご意見をいただいてまいりまして、会則改正委員会で検討した結果をご報告させていただき、できれば即日これを実施して、短大の動きを活発にする流れを強くするようにしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します。

二極化の中での短大
市民形成、地域社会形成の「場」

中教審審議動向

 中教審のこれまでの審議経過については、臨時委員として審議に加わっている島田{Y子・文京女子短期大学理事長・学長が大学分科会全般における議論について、関根秀和・大阪女学院短期大学長が第二回制度部会で行った提言について、それぞれ説明を行った。
 島田氏は大学分科会で、▽日本の高等教育を社会の中にどう位置づけるかが大切だ▽大学と短期大学の違いを明確化すべきだ。それには大学とは何かという議論から明らかにすべきだ▽職業教育についても短期大学と専門学校における違いを幅広い観点から論議する必要があるという議論が出たと報告。将来構想部会における論点は、高等教育の発展の方向についてであると説明。社会をリードしていく学問、技術の発展を担う役割と同時に、それを支える社会の中間層を育成することも重要であり、それを国公立、地方とどのように担い合えるかという問題がある、とした。大学の種類、ニーズに応じた政策が必要で、地方レベルの政策を重視すべきだとの意見も出ているとし、議論の中でカリフォルニア州の教育制度がしばしば引用されたと指摘。同州は高校卒業者の五〇%が地元のコミュニティーカレッジに進学し、三五%の学生が州立大学へ、一五%の学生がUCへ進学するという階層的な教育制度になっており、かつどこからでも編入が可能であることが話題になった、とした。委員は、四年制大学とは異なる教育内容と使命を持っているとして短大への期待は持っているとし、とりわけ、雇用に結びつくような、社会人が求めている教育を短期間に、あるいは単位累積で履修させるような新しいスタイルの教育への期待が強いようだ、と述べた。
 関根氏は私見だと断りつつ、文部科学省の描く高等教育のグランドデザインは、国民一般のための教育とグローバル化の時代の中で国際通用性のある働きをして、ある意味では国家の課題を担っていくような人材の養成との二極化の方向であると指摘。そうした二極化の中で今後、短大教育をどのように構想すればいいのかが大きな課題であるとし、パートタイム学生、社会人を受け入れるにしても受け皿としての短大をどう考えるかと切り離して考えることはできない、と述べた。そのうえで、短期の「大学」として、それぞれの地域で社会人を受け入れる学習の「場」としての短大の可能性について同氏が第二回制度部会で提言した内容について改めて説明。一九九五年に地方分権推進法が成立し、九九年には第四次地方分権推進計画が出されたことも挙げながら、「場」を構成する視点として、(1)市民形成、地域社会形成に資する「場」(Lifelong Study for General Purpose)(2)自己形成のためのリフレッシュメントとキャリアアップに資する「場」(Lifelong Study for Academic Purpose)(3)キャリアアップ、キャリアチェンジに資する「場」(Lifelong Study for Specific Purpose)の三つを示した。このうち(1)については、現在の各短大が持つ学科、教育課程をできるだけ生かして、かつ地域のニーズに合うように、柔軟に教育課程を変えていくことができるスタイルをイメージしたものであると指摘。▽自治体・地域団体との協力関係を積極的に構築▽研究機関として地域(社会)研究所を設置する▽学科設置は「地域科学総合学科」といった形態が考えられる▽学科目展開は現在の教育課程を地域の市民形成、地域社会形成に資する教育課程として関連づけていくと、この構想の内容を説明した。また、パートタイム学生を短期大学が受け入れた場合に掛かる経費を独自に試算した例も示し、受け入れ側の短大への機関補助制度の必要性を強調した、と述べた。

受託研究の非課税化など
全私連が税制改正要望

私学予算、税制改正

 杉田均事務局長から、総合規制改革会議が七月二十四日、公表した「重点6分野に関する中間とりまとめ」の内容について、大学が設置した学部は第三者機関による継続的な評価を前提として、その改廃を一層弾力化するよう、大学設置基準の見直しを行うべきであることが十三年度中の検討事項として盛り込まれていることなど、説明があった。
 十四年度概算要求基準については、従前の予算編成方式が大幅に変更され、一般政策経費については、全体を前年度予算額から一〇%削減したうえで、重点七分野への重点化を図るための「構造改革特別要求」を加算することが示されたと説明。私立大学等経常費補助金から一〇%削減された三百十五億円と要求増加額二百五十七億円とを合わせた五百七十二億円が「私立大学教育研究高度化推進特別補助」としての要求額であったが、総会当日、内閣府の一次査定が行われ、三百九十三億円に減額されたと報告した。
 税制改正要望については全私学連合として▽私立大学等における受託研究の非課税化▽個人からの学校法人に対する寄付金に係る所得控除額の拡大、特定寄付金控除限度額の下限(一万円)の撤廃、寄付者の税務申告の簡素化▽企業等法人からの学校法人に対する寄付金に係る損金算入限度額の拡大の三点に絞って、政府、文科省に要求していると述べた。

高等教育の普及拡大
短大の二種免許の必要性強調

短大振興特別委の審議

 中教審の審議に対応するために、日短協では今春、特別委員会として「短期大学振興対策特別委員会」を設けた。同特別委の副委員長である佐藤弘毅・目白大学短期大学部理事長・学長がこれまでの審議経過について報告した。開催状況については、五月三十一日の第一回委員会以来、九月二十七日まで六回の委員会のほかに、中教審の審議に対応して随時、正副会長、正副委員長との打ち合わせ会、自由民主党「短期大学振興議員連盟」との意見調整、文科省大学課との非公式の意見交換なども行ってきたとした。特別委では(1)改めて新しい時代の要請に応える短期大学、その役割と機能とは何か、ユニバーサルアクセスという新しい時代を迎え、高等教育の普及拡大を担う教育機関としての存在意義、短大教育の本質についてまとめる(2)先に協会で機関決定した、学校教育法第六九条の二の短期大学の目的規程を廃止し、第五二条の大学の目的規程に一本化する、短期大学は大学の準学士課程として位置づけるという方針は保ちつつも、それ以外の選択肢についても自由闊達な意見交換をしながら提言するとの二点を申し合わせた、と述べた。
 また、中教審初等教育分科会教員養成部会では七月十九日、今後の教員免許制度の在り方について意見聴取を行い、同特別委から山内昭人・香蘭女子短期大学理事長、三神敬子・山梨学院短期大学長が出席し、意見を述べた。山内氏は、意見聴取のテーマは(1)教員免許制度の弾力化(2)教員免許更新制の可能性(3)特別免許状の活用をはじめとした社会人の活用の促進についてであったが、教員免許の問題が浮上した時には常に短大における二種免許取得者を中心とした教員養成が危機に瀕してきたとし、むしろ二種免許を守ることに主眼を置いて意見聴取に臨んだと報告。二種免許をなくしてはならないと強調し、これを維持するうえで三つのテーマについて意見を述べた、とした。三神氏は教員養成を行ってきた経験を踏まえ、二種免許によって支えられている教育現場、二種免許を手がかりにして高等教育を受けようとしている学生の実情を話し、短大における二種免許の必要性を訴えた、と報告した。

社会人再教育機能強化など

特殊法人の事業見直し

 杉田事務局長から、九月二十一日、経済財政諮問会議が「改革工程表」を公表、特殊法人の見直しについては触れられていないが、大学・短大に関係するものとしては、「その他で措置するもの」として、短大等が社会人の再教育・再訓練に柔軟に応える機能(コミュニティーカレッジ機能の強化)、一年制専門大学院の制度化、大学院の通信制博士課程の制度化が一つの柱になっていると説明。このほか、学科の設置および学部学科の改廃を一層弾力化するよう第三者機関による継続的な評価の在り方の検討、大学設置基準の見直し、工場等制限制度の見直しの検討が盛り込まれているとした。
 日本私立学校振興・共済事業団の事業見直しについては文科省が廃止の可否について、民営化はできないとの回答を行ったものの、予断を許さない状況である、などと報告した。

関短協、近畿支部から提案

支部提案事項

 関東私立短期大学協会から役員変更に伴う日短協役員への推薦があり、山田敏之・湘北短期大学長の常任理事就任が承認された。
 近畿私立短期大学連合会(近畿支部)は支部長であった日下晃・前武庫川女子大学短期大学部理事長・学長の逝去に伴い、伊藤唯真・京都文教短期大学長が新たに支部長に就任したため、会則十一条により、伊藤氏を日短協副会長に推薦。伊藤氏の就任が承認された。


会員の議決権を規定

協会会則改正

 協会会則改正案については、会則等改正特別委員会委員長の平方昇一・明和学園短期大学理事長・学長が報告。改正の意図については、協会の活動の進展に伴い、これまでの会則では、実際の協会運営に支障が出てきたこと、また、今後、支障のないよう整備を図ることであると説明した。
 主な改正点としては、これまで規程のなかった、入会、会員の議決権、会員の権利義務、会員の退会について新たに盛り込んだこと。二点目は常任理事会の任務について「総会において議決された事項及び理事会の審議決定事項について執行する他、緊急重要事項について審議決定し執行する」と明確に定められたこと。三点目は理事会の開催を年四回から年二回の開催としたこと。
 会長候補者選考委員会規程についても条文の整理を行った。また、日短協は全国に九つの支部を設けているが、新たに支部長、支部の事務などについて定めた支部規程も設けることが異議なく承認された。このほか、協会の新会則では常任理事のうち二名を財務担当とすることになったため、宇田正長・東洋女子短期大学理事長に加え、新たに藤原耕三・大阪女子学園短期大学学園長が財務担当となることが承認された。



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