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記事2001年12月3日 31号 (1面) 
教育改革の基本的方向 教育振興基本計画と基本法見直し
中教審に諮問 遠山文科相
新時代にふさわしい姿を 基本計画、基本法1年程度で答申
必要な教育投資 義務教育、学校・家庭の役割検討
 遠山敦子・文部科学大臣は、十一月二十六日、東京・青山のホテルで開かれた中央教育審議会(会長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)の第十回総会で、新たに(1)「教育振興基本計画」の策定(2)新しい時代にふさわしい「教育基本法」のあり方の二点について諮問した。当面は教育振興基本計画を先行審議し、その審議の中から新時代にふさわしい教育基本法の姿を浮き彫りにしていく見通し。両諮問事項ともおおむね一年程度で答申をまとめる。十二月十日の次回総会で教育振興基本計画等の審議を再度行った後、今後はどの分科会で審議を進めるのか、あるいは新たに部会等を立ち上げるかなどを検討する。(2面に関連記事、3面に諮問理由全文)
 
 審議を先行させる「教育振興基本計画」は、政府が掲げる中・長期的な教育目標や教育改革の基本的方向などを明示するもの。
 今後の審議では、教育基本法に基本計画の根拠規定を設けるかどうかを含め、(1)教育の目標やその目標を実現するための教育改革の基本的方向等、(2)国民に分かりやすい具体的な政策目標、それを実現するための主要な施策、(3)総合的・計画的に教育施策を推進するために必要な教育投資のあり方、(4)計画の推進に関して政府及び地方公共団体の役割、政府及び地方自治体の連携等を検討する。
 このうち(2)に関しては、具体的検討項目として、▽初等中等教育の教育内容等の改善、充実▽教員の資質向上と学校運営の改善▽高等教育の整備、充実▽家庭、地域の教育力の向上▽教育の情報化、国際化・国際交流の推進など、五項目を例示している。
 同計画は、昨年十二月、総理の私的諮問機関だった教育改革国民会議が教育への公財政支出の充実とともに策定を提言したもの。
 各省庁には、防災基本計画、障害者基本計画、交通安全基本計画、科学技術基本計画といったようにさまざまな基本計画がすでに設けられており、その法的裏づけとして各種の基本法が定められている。
 基本計画は計画期間が五年から十年程度であることが多い。必要な財政措置まで規定したものは少ないが、教育振興基本計画では、一次と二次を合わせて四十一兆円を予算措置化した「科学技術基本計画」を目標にしている。
 一方、教育基本法は、昭和二十二年に公布・施行されて以来、五十四年間、わが国の教育の基本理念等を定めてきたもので、教育関係法令の元となっている。しかしすでに半世紀が経過し、時代の変化等を反映させたものに改めようとの声が出てきたことから、見直しに踏み切ったもの。しかし憲法に準じるものなどとして改正に強く反対する人も少なくないことから、これまで中教審では諮問に基づく改正論議は一度も行われてこなかった。
 今回の中教審の審議では、(1)教育の基本理念を検討すること、その際、時代や社会の変化に対応した教育という視点、一人ひとりの能力・才能を伸ばし創造性をはぐくむという視点、伝統、文化の尊重など国家、社会の形成者として必要な資質の育成という視点での検討を求めている。また(2)教育の基本原則を検討する。具体的には義務教育制度のあり方(第四条)、男女共学規定(第五条)、宗教教育(第九条)の検討を求めている。この際、義務教育に関しては一人ひとりの能力の伸長を図る観点、家庭の果たすべき役割と学校教育との関係との関連からの検討を、男女共学規定に関しては、男女共同参画社会の形成を目指す観点から検討を、宗教教育に関しては、宗教的な情操をはぐくむという観点からの検討を求めている。義務教育に関連しては、中教審の第二回総会で「年齢とともに学年進行する方式の見直し」が検討課題案として提示されたことがある。
 さらに(3)家庭、学校、地域社会の役割など教育を担うべき主体の検討を行う。その際、社会教育に関する規定(第七条)では家庭教育や地域社会等の教育に対する役割の重要性を十分踏まえ、その役割を明確にする観点から検討する。また学校教育の規定(第六条)では、学校の役割、教員の使命について明確にする観点からの検討を求めている。
 (4)教育行政(第十条)に関しては、国、地方公共団体の役割分担を踏まえて、教育施策の総合的・計画的推進が図られるよう、両者の責務を明確にする観点からの検討が必要としている。(5)教育基本法の前文の検討も求めている。
 このほか教育基本法の見直しに伴うその他の法令の見直しの方向についても、必要に応じて論議が必要としている。

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