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記事2001年12月23日 33号 (2面) 
教免制度の在り方、基本計画で総会
中教審
【第12回総会】

小、中教免の弾力化
専科担任の拡大、指導力不足教員の人事管理

 中央教育審議会(鳥居泰彦会長=慶應義塾学事顧問)は十二月二十日、東京・霞が関の霞が関東京会館で第十二回総会を開き、今後の教員免許制度の在り方についての中間報告案について審議した。教員免許状の総合化・弾力化については、中学校免許状等による小学校専科担任の拡大、現職教員の隣接校種免許状の取得を促進する制度の創設などが具体的方策として盛り込まれた。また、教員免許更新制についてはその導入を見送ったものの、教員の適格性を確保するために指導力不足教員に対する人事管理システムの構築などの提言が行われている。総会では特にこれに関する異論は出ず、若干の修正を経たうえで、鳥居会長が遠山敦子・文科相に中間報告として提出する。
 中間報告案では教員免許状の総合化・弾力化に向けた具体的方策として盛り込まれたもののうち、小学校専科担任の拡大については、現在、中学校の音楽、美術などの免許状に限られている他校種免許状による小学校での専科担任制の分野を撤廃し、例えば中学校または高等学校理科免許状を持つ教員が小学校の理科を担任できるようにするなどの措置を行う。また、現職教員が他校種免許状を取得する機会を拡大し、複数校種の免許状を併有する人の増加を図るため、隣接校種免許状の取得を促す制度を設ける。
 盲・聾・養護学校の別となっている特殊教育諸学校免許状の総合化については、教員養成部会に専門委員会を設けて検討することとした。
 教員の適格性の確保には、指導不足教員に対する人事システムの構築、現職教員が分限免職の処分を受けた場合は免許状を取り上げることができるようにするなど、取り上げ事由の強化などの提言が盛り込まれた。教員の専門性の向上を図るためとして、教職十年を経過した教員に対する研修、研修実績の活用、研修の評価の必要性も指摘されている。
 このほか、信頼される学校づくりのために、学校評議員制度の活用、学校の自己点検・評価の実施とその結果を保護者や地域住民に公表する学校評価システムの早期の確立などを提言している。
 この日の総会では小・中学校設置基準とコミュニティ・スクール設置の是非についても討議が行われた。小・中学校設置基準をめぐっては「グローバル化、多様化する社会の中での義務教育はどう在るべきかを論議すべきだ」「設置基準には多様化の中でも最低限これだけは保障するという最低基準とともに、多様な方向への発展を促進するような枠組みが必要だ」といった意見が出た。
 また、コミュニティ・スクールについては、これを「国民的ニーズに応え得るもの」として、設置に前向きな意見ばかりだった。設置を前提として「地元の産業界がどうかかわるのか研究を深めるべきだ」「外部評価を導入すべきだ」などの指摘も出た。



【第11回総会】

教育振興基本計画で討議
部会設置決め、構成内容など論議

 中央教育審議会は十二月十日、東京・千代田区内の会館で第十一回総会を開催し、十一月二十六日に諮問された「教育振興基本計画」と「教育基本法」のうち教育振興基本計画についての自由討議を行った。
 教育振興基本計画についての自由討議は、十一月二十六日に次ぎ二回目。
 総会では初めに、(1)教育振興基本計画と教育基本法に関しては、教育振興基本計画の検討を先行させて、具体的にどのような方向で教育を改革しようとしているかについてのおおよその姿を示しつつ、そのような教育にふさわしい教育基本法の在り方についての議論を行う(2)教育振興基本計画、教育基本法について総会で全体的な論議を行ったうえで、総会に部会を置き、具体的な検討を行うこと。部会の論議については、随時、総会に報告し、総会の意見を部会の論議に反映することを決めた。その後、事務局(文部科学省)から、審議の参考にと、戦後の教育改革の流れ、文部科学省が今年一月に策定した「二十一世紀教育新生プラン(七つの重点戦略)」の取組状況、他省庁が策定した基本計画の構成などが説明された。
 その後、自由討議となり、委員からは教育振興基本計画の内容面の意見と教育振興基本計画の財政的な裏づけに関する意見が出された。このうち計画の内容面に関しては、まずどの程度の計画期間を想定しているのか、との質問があり、文部科学省は「十年を見通して具体的には五年程度の施策」を想定していること、多くの基本法は数年ごとに見直していることなどを明らかにした。また「四六答申にあるが、子供の心身の発達の前倒しを考慮して教育制度を構造すべきだ。子供の発達の現状をおさらいして研究も考えてほしい。内面的成長には弱点がある。後追いではなく根本的な議論が必要」と意見が出された。これに対して鳥居会長は「学制の問題はいずれ触れざるを得ないだろう。一つの制度に変えても自由・ゆとりを持たせなくては。これは四六答申では検討しなかった問題」とし、学制改革に前向きな考えを示した。
 さらに規範意識が低下する中で、制度をいじるだけで片付かない問題、大人のモラルの低下を指摘し、テレビのゴールデンタイムに消費者金融のコマーシャルが流れるなど限界を超えているものにきちんとした考えを出すべきだ、といった意見や、家庭の教育力の低下が叫ばれる中で、ある時期子育てに専念できる制度の創設や親になるための教育の重要性を指摘する意見などが聞かれた。
 このほか「親も教員も子供を一人前にする厳しさに欠けている」「各学校が独自にプランを出せる権限を与えよ。都道府県教育委員会は硬直化していないか」「(勉強等が)できない子への対応をきちんとしてほしい」といった意見や、私学に絡んでは「公私併存は学校の健全性を高める仕組みだ」「不幸にして私学に入ってしまった人には(授業料の負担軽減などで)もっと支援策を」との意見も出された。
 一方、教育振興基本計画の財政面に関しては、「科学技術基本法は成功した。国民の支持を得て成功させるためにはどうしたらいいか。何が課題で何を目指すかをインパクトある形で国民に示さないと」「(財政面に)それなりのウエートを置かないと(計画が)絵に描いたもちになる。単年度予算の中でどこまでできるのか」などの意見が出されたほか、国と地方の財政的な分担などを課題として挙げる意見もあった。
 日本私立短期大学協会(川並弘昭会長=聖徳大学短期大学部理事長・学長)は十二月四日、東京・市ヶ谷の私学会館で、私立短期大学の理事長らを対象に、初の「理事長協議会」を開催した。協議会では、川本八郎・立命館理事長が「教育改革と経営戦略について立命館の取り組みの経験から」と題して講演。川本氏は大学改革は理念的には教育研究に焦点を置くべきだが、改革を行う力量と責任を負っているのは理事会であることを力説した。また、立命館ではさまざまな教育研究の改革を行ってきたが、その発端は財政問題であったと紹介した。

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