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記事2001年12月23日 33号 (2面) 
教育研究政策と財政政策の確立
日短協が初の理事長協議会開く 12月4日私学会館
教育改革と経営戦略
川本立命館理事長、経験通して講演


 日本私立短期大学協会(川並弘昭会長=聖徳大学短期大学部理事長・学長)は十二月四日、東京・市ヶ谷の私学会館で、私立短期大学の理事長らを対象に、初の「理事長協議会」を開催した。協議会では、川本八郎・立命館理事長が「教育改革と経営戦略について―立命館の取り組みの経験から」と題して講演。川本氏は大学改革は理念的には教育研究に焦点を置くべきだが、改革を行う力量と責任を負っているのは理事会であることを力説した。また、立命館ではさまざまな教育研究の改革を行ってきたが、その発端は財政問題であったと紹介した。

 川本氏は「矛盾のないところから改革は生まれない」と述べ、私立大学にとっては教育研究と管理運営・財政との矛盾を解決することが最大の課題であると指摘。立命館では、一九七九年、財政上の安定を図るために、全国の大学で、初めて、一回生から四回生まで全回生の学費が物価上昇率に連動する、学費スライド制の導入に踏み切ったことを紹介した。これを契機に徹底した教育研究政策と財政政策の確立を図ろうと、第三次・第四次長期計画の実行に取り組んだと述べた。同計画は(1)理工学部をハードからソフト重視に移行させる(2)国際化時代に先駆けて、国際関係学部をつくる(3)附属校の充実を図るというもので、このうち、(1)については、理工学部をびわこ・くさつキャンパスに拡充移転させ、ソフト関係の五学科を新たに設け、十学科体制とした。学生数も学部生五千人、大学院生千人と、西日本最大の理工学部とすることによって、経営的にも安定化を図った。同時に、産学協同も積極的に推進した、と述べた。(2)に関しては、これまでにない大胆な政策を提起することによって、教職員も広い視野を持てるようになる、教職員全体が前に進もうという気概になる、と改革の効用を挙げた。(3)については、既存の立命館中高に立命館宇治高、立命館慶祥中高という新たな附属校を加え、相互に競争の原理を働かせたと指摘。学園のアイデンティティーをつくり、私学の独自性を発揮するためにも一貫教育を重視すべきだ、と述べた。
 また、歴史のある総合大学では寄附行為の改正は難しいが、常任理事会が学内の実質上の権限を持つようにし、事務職員からも常務理事を選出できる体制に改めたことを紹介。大学職員の経営参画の必要性を指摘した。
 こうした一連の改革によって学園全体に生まれた勢いをテコに、第五次長期計画における立命館アジア太平洋大学(APU)の開学に際しては、国際基準の大学づくりを目指し、学生の半数を留学生とするという目標を掲げた。二十のチームから成る教職員百人以上を二十カ国に派遺した結果、六十四カ国・地域から留学生が入学したと紹介。全立命館の中でAPUの教職員は最も熱意を持って職務を遂行していると述べた。
 最後に川本氏は、経営に責任を持つ者こそが真に教学を守ることができるとしたうえで、自分の大学の学生を素晴らしい学生に育て上げることを教育政策の原点に据え、理事会が主導的立場で大学改革に取り組むべきだと強調した。

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