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記事2001年12月13日 32号 (8面) 
ユニーク教育 (102) ―― 淑徳巣鴨中学・高等学校
スポンサー講座
信頼と覚醒の教育推進
シンポジウム「いまイスラームを学ぶ」


 淑徳巣鴨中学・高等学校(中川武夫校長、東京都豊島区)は十一月十日、東京・豊島区の豊島公会堂でシンポジウム「いまイスラームを学ぶ」(後援・豊島区教育委員会、淑徳巣鴨中学高等学校PTA、淑徳巣鴨中学高等学校後援会)を開催した。
 このシンポジウムは公開という形で行われる「スポンサー講座」で、「社会の各分野の第一線で活躍している方々をお招きし、生徒のための未来のスポンサーになってもらい、こんな世界がある、こんな人がいる、私もこうなりたい、と生徒が夢を持つような学校生活を送ることができるようにと始めた」(中川校長)。
 同校は、父母や生徒の教育要求に積極的に応えるという「信頼の教育」と、真の人生に目覚める「覚醒の教育」の推進のために全力を挙げている。「スポンサー講座」もその一環だ。
 平成十年度から開始された「スポンサー講座」は、六月と十月に各界から有識者を招いてさまざまな講演が行われているが、生徒に夢を持ってもらいたいという企画で始まった講座が、保護者の間でも話題となり、父母から参加させてほしいという話が持ち上がった。そこで、父母にも参加してもらうことになった。
 当日のシンポジウムの講師は朝日新聞社総合研究センター主任研究員の鴨志田恵一氏と、和光大学表現学部講師の村山和之氏。鴨志田氏は中東問題の専門家であり、村山氏は西南アジア文化の専門家だ。司会は同校の五十嵐末彦・企画部長。
 このシンポジウムはイスラムを認識するとともに、われわれはイスラムとどのように関係を保っていくかという視点を中心に行われ、イスラムを理解するために同校の教員がスライドを通して、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教との比較、そしてイスラムの具体的な国の解説を行った。
 これらの宗教はイエスをどうとらえているか。キリスト教はイエスを神の子とし、ユダヤ教はイエスを異端視し、イスラム教はイエスを預言者の一人ととらえている。世界中でキリスト教信者が十八億人に対しイスラム教信者が十一億人に達しているが、最大の信者を抱えているのがインドネシアだ。その数一億八千三百五十万人で、これはヨーロッパ人がインドネシアに進出する前に、アラブの商人が活躍したからだと報告が行われた。
 鴨志田氏はアラビア語習得のため留学していた新聞記者時代を振り返り、「この時にイスラムが何を考え、コーランを信仰する人がどのような生活をしているのか分かった」と実感を込めて語った。一方、村山氏はインドやパキスタンの宗教や文化に興味を持ちパキスタンに留学していたが、その中で「女性を大切にしていると感じた」と女性の地位について話した。
 われわれはイスラムに対して、どのような姿勢を持つべきか。村上氏は対等な人間として、自分の言葉で相手の目を見て話すことが必要だとし、「ここからコミュニケーションが始まる。(いま)日本の果たせる役割はある」と指摘した。
 鴨志田氏は現在のアフガニスタンの状況を、「ビンラーディン氏とブッシュ氏との戦いではなく、西欧近代キリスト教文明アングロサクソンと、イスラムとの衝突で、学校(われわれ)はこれを分からなければならない」と強く語った。
 そして、「(バブル時代に)日本人は世界中のさまざまなものを買いまくり、社会の秩序を崩してしまった。記者として考えたが、人間として忘れてはならないことを考えてほしい。これからは各自の視点を持って考えてほしい」と訴えた。

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