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記事2001年12月13日 32号 (2面) 
設置認可の在り方
文部科学省が論点示す
中教審の三分科会審議状況報告
【大学分科会】

第三者評価の事後チェック 認可制度の維持めぐり論議

 中央教育審議会の大学分科会は十一月二十七日、東京・霞が関の文部科学省別館(郵政事業庁庁舎)で第五回会合を開いた。文科省からは大学等の設置認可制度の望ましい在り方に関する論点例が示され、これを踏まえ自由討議を行った。論点例では、設置認可の対象、設置基準、設置認可の手続き、第三者評価による事後チェックシステム(アクレディテーション)、寄附行為の変更認可制度と、設置認可の個別の問題点が取り上げられた。
 これらのうち、設置認可の対象に関しては、設置認可制度の存在が大学の機動的・主体的な組織編成を妨げているとの批判があるが、現行の認可制度を維持すべきか、あるいは現行制度の緩和が必要かなどが論点。設置基準に関しては、▽簡素化・弾力化の観点から、大学として必要な最低限の基準を示した大学設置基準・審査基準の内容を見直すべき点はないか▽原則抑制の設置認可方針が特定分野を含め、新規参入規制となっているとの批判をどのように考えるかが主な論点。委員からは「これまでは高等教育の機会均等の平等化をねらいに、私学を中心として地方分散を図ってきたが、私学の質も上がって、規制を緩和していいのではという意見がある」「すべてを届け出制とすることには不安が残る。ボトムラインの維持は国がすべきだ」「現在でも設置基準は十分に緩和されている。これ以上さらに緩和する必要はない」などの意見が出た。
 アクレディテーションに関しては、一度設置認可が与えられると、事後的にチェックが行われない現状を改善するため、アクレディテーション制度を設けることについてどう考えるかが論点。委員からは「ピア・レビューで評価が甘くなってしまうのが日本の評価制度の特徴だ。評価、アクレディテーションにはいろいろな機会があって、その中から国が委託先を選ぶこととしてはどうか」「学部に対するアクレディテーションと、大学院に対するそれとは別に考えた方がよい」などの意見が出た。
 また、総合規制改革会議においては、大学・学部の設置規制の準則主義化、工業(場)等制限制度における大学に対する規制の廃止など、大学・学部の設置認可に関する規制を一層緩和する一方、継続的な第三者による評価認証制度を導入すべきだ、との議論の方向性になっている、と文科省が説明。これに対して「総合規制改革会議の意見に引きずられるべきではない」との意見が複数の委員から出た。



【初中分科会】

小・中学校の設置基準 コミュニティ・スクール問題討議

 中央教育審議会初等中等教育分科会(分科会長=木村孟・大学評価・学位授与機構長)は、十二月六日、東京・千代田区内のホテルで第三回会合を開き、文部科学省が現在、策定作業を進めている小・中学校の設置基準と、来年度から実践研究を開始するコミュニティ・スクールについて討議した。この日は同省がこれら施策を進めていくうえでの助言等を求めたもの。
 このうち小・中学校の設置基準に関しては、文部科学省は、高校のようにまとまった形で規定したものはないが、学校教育法や、同施行規則、教育職員免許法、義務教育諸学校施設費国庫負担法などの法令が一体となって事実上設置基準として機能してきたこと、しかし教育改革国民会議の報告等で、多様な教育機会を提供する(私立学校の設置を促進する)ため基準の明確化が求められ、策定作業を進めていること、都道府県の私立小・中学校設置認可に関する審査基準は県によってバラつきが見られることなどを報告。
 その上で設置基準については、▽出来る限り大綱的なものとすべきか、あるいはより具体的なものにすべきか▽地方分権を一層推進する観点からより弾力的な規定を設けるべきか▽新しい時代の設置基準に何が求められるのか▽最低の基準と位置づけるべきか、標準的な基準と位置づけるか▽より柔軟な対応を可能とする観点から、出来る限り定性的な基準とすることはどうか▽学校の自己評価や情報の公開を求めるのはどうかなどが策定の観点等として示された。
 現状報告の後の討議では、「私立学校が認可されにくいのは設置基準が明確化されていないからか。私学関係者が多数を占める私学審議会がニューカマーは良くないとしているからではないか」「私学審議会の委員構成は私学の保護を目的に作られた。今後は質の向上に向け、原則設置を認め、事後審査を行えばいい」「自由な競争状況を導入すべきで、護送船団方式を強めてはだめ」といった意見が聞かれた。また私立学校を増やしていくことに関して、受験競争の拡大を懸念する意見や、「私立学校のことだけで設置基準を語るべきではない。公立学校が圧倒的に多い。公立の実情を踏まえてほしい」といった意見も出された。
 一方コミュニティ・スクールに関しては、文部科学省より学校の裁量権の拡大、地域との交流強化に向けどこまで自由にできるのか、公立学校の基本や公財政制度との整合性とのかかわりの中で実践的な研究を進めていく方針やコミュニティ・スクールのモデルとなったアメリカのチャーター・スクールの長所短所などが説明された。

コミュニティ・スクールの効果に疑問も

 コミュニティ・スクールに関しては、公立中学校の団体代表が「地域のシンボルとしてコミュニティ・スクールを作ってどうしようというのか」と発言、コミュニティ・スクールが公立学校全体の活性化につながりにくいことなどを指摘。しかしこの発言に対しては、「公立学校教育はワンパターン。いろいろやらないと今の風潮は変わらない」「財界の今の教育に対する不満は強い」などの意見が出された。また「教育の多様化には賛成だが、いきなり新しい学校を作るところまで行くのはどうか。教育環境の充実で補えないのか」との意見も聞かれた。
 さらに「チャーター・スクール(コミュニティ・スクール)がうまくいったらこれは永久的にというか、一定期間、公立学校と緊張関係を保ちながら残るのか。あるいは一定期間で役割を終えるものなのか」との質問も出され、これに対して文部科学省は「三年間の研究トライアルと受け止めてほしい」と答えた。一定期間で役割を終えるものとも解釈出来るが、まずは三年間の実践研究いかんだとも受け取れる。
 これらの問題は今後、総会でも審議する予定。



【スポーツ青少年分科会】

子どもの体力向上 運動や遊びの楽しさを

 中央教育審議会のスポーツ青少年分科会は十一月二十八日、東京・霞が関の霞が関東京會舘で第八回会合を開催した。総会では、子どもの体力向上のための方策についてこれまで出された意見が論点整理案として、文部科学省から提示された。
 論点整理案は(1)子どもの体力はどのような現状にあるのか(2)体力をどのようにとらえ、その向上を図るべきか(3)子どもの体力が低下している原因や背景は何か(4)どのようにすれば子どもの体力が向上するのかの四点について、委員会からの主な意見がまとめられている。
 (1)については体力・運動能力の低下傾向、体力のある子どもとない子どもの二極化、生理的機能の悪化が見られると指摘。(2)については、体力を人間が成長・発達していくうえで基本的な要素であり、知性や感性などと相まって豊かな人間性を形成するものと定義づけられた。子どもにとって必要な体力は、心身ともに健康で、運動や学習に励む意欲に満ち、生き生きと毎日が過ごせるものと指摘されている。(3)については、運動や遊びの機会の減少に加え、スポーツ指導者の不足が挙げられている。また、国民全体に体力の低下への認識やスポーツへの理解が薄いこと、大人の生活リズムに合わせた子どもの生活習慣の乱れも体力低下の原因であるとされている。(4)については、体力低下問題や体力の重要性、体力を向上させるための取り組みに関する国民への啓発・キャンペーンを行うこと、子どもに運動や遊びの楽しさを教えること、指導者の充実や手軽な運動の場の確保、総合型地域スポーツクラブの育成など、地域において子どもが体を動かす環境を整備することが必要だとされた。また、家庭、学校教育にもそれぞれ取り組みを求めており、家庭では幼児期からの外遊びの推進、親子でのスポーツ活動、自然体験活動に親しむといった実践が挙げられている。学校教育における取り組みでは、教科体育の充実、総合的な学習の時間や特別活動の時間の活用、運動部活動の充実、学校体育を充実するための教員の資質向上などが列挙されている。
 その後この論点整理案をめぐって自由討議が行われ「体力向上策について優先度を付けてみたらどうか」「国民に対するショック療法が必要だ。論点整理案の序論で、体力低下問題への危機感を持つような文言を盛り込むべきではないか」などの意見が出された。

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