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記事2001年11月3日 28号 (4面) 
マルチメディア機器を活用 教育研究を活性化
東京電機大学
総合メディアセンターの取り組み
東京電機大学(本部・東京都千代田区)は今年四月、千葉ニュータウンキャンパスに情報環境学部を新設するとともに、同大学の情報教育推進の中心である総合メディアセンターの機能を集中した建物を建設し、マルチメディアを活用したさまざまな取り組みに力を入れている。特に同施設内に設けられたプレゼンテーションルームでは最新のマルチメディア機器を活用して教育研究活動を活性化し、教育の情報化を推進している。同総合メディアセンターの役割とプレゼンテーションルームにおける活動の概要、およびマルチメディアを活用した授業への取り組みなどについて報告する。


【総合メディアセンターの沿革と役割】
情報環境学部開設に合わせ
総合メディアセンター

 総合メディアセンターは五年前の一九九六年十月に発足した。それまで個別に運営していた「図書館」と「電子計算機センター」、事務関係の電算機を管理していた「事務システム開発室」、主に映像、音声などのメディアのAV機器を扱っていた「教育工学センター」、この四つの組織を統合し、図書、コンピュータネットワーク、映像メディアを学園全体として扱う組織として、総合メディアセンターが発足したわけだが、当時はここにあるような総合メディアセンターの機能を集中した建物は存在しなかった。
 その後、今年四月に新学部である情報環境学部が千葉ニュータウンキャンパスに開設されることになり、これを機に総合メディアセンターの中心となる建物も建築された。同時に設備も最新鋭のものを整備し、それまでほかの場所にあった図書閲覧室、コンピュータサーバー機器や一部のPC端末等を集めて総合メディアセンターの中心となる施設となった。

総合センター内のプレゼンテーションルーム

 千葉ニュータウンキャンパスのプレゼンテーションルームは座席数三十のこじんまりした部屋だが、大型プロジェクターと最新のプラズマディスプレーをコンピュータや各種マルチメディア機器に直結し、相互に連動させながらプレゼンテーションを行うことができるというユニークな機能を持つ施設だといえる。用途としては授業に限らず、研究室のゼミなど教育研究活動のなかでも利用している。
 今年四月からの利用状況は、研究活動と教育活動で使用する時間の割合が六対四ぐらいで研究活動の方が割合が高くなっている。
 また、大学の共用施設なので、ここにある情報環境学部、工学部のどちらの学部もこのプレゼンテーションルームを利用することができる。


【教育研究j活動における利用状況】
プレゼンテーション形式で発表
問題点をその場で修正

 教育活動では、ゼミなどで学生が発表するパターンの授業の中でプレゼンテーションルームを使っている。
 そのほかには学期初めのワークショップという授業で利用している。これは新入生を十数人のグループに分けて全教員がそれぞれ担当し、教員が設定したテーマについて研究を行い、その成果の発表を行う活動で、テーマによってはプレゼンテーションルームを利用するグループがある。現状の使用形態としては、正式にカリキュラムに組み込まれた形ではなく、状況に応じて自由に申請をして利用している。
 研究活動での事例としては、研究生が輪読を行う場合などで、一人ひとりが分担を決めて自分の担当部分について学習し、その結果をプレゼンテーション形式で発表するといったものだ。その際、研究室のメンバー全員が各担当者のプレゼンテーションを受けてディスカッションを行い、不十分な点については教員が指導するような活動で利用している。
 また大学院生を中心に、国際学会や外部での研究会などでの発表の予行演習を兼ねた研究発表をプレゼンテーションルームで行い、備えてあるマルチメディア機器を活用しながら、発表の仕方を検討し合うのに使うこともよくある。
 このような場合、従来のOHPでは、ある部分を手直ししようとすれば、次回までに直すということしかできない。しかし、現在では、プレゼンテーションルームに導入されたプロジェクターによる投影とプラズマディスプレー上の表示を関連させながら進め、問題点の指摘があった場合はその場で修正し、その結果をすぐに参加者に示すというような使い方ができるようになった。その結果、問題の解決も早くなり、プレゼンテーションに関する能力の向上にもつながっている。
 研究室の中には音声や画像処理に関する研究を行っているグループもあるので、その場で研究成果を聴いたり、見たりするなど、その効果は大きい。音についてもコンピュータ上でシミュレーションして作っているので、それをダイレクトにパワーポイントに張ったものをプレゼンテーションルームで聴きながらどちらがよいかを評価できる。
 これらの活動を行う場合には、メーンのスクリーンにプロジェクターでプレゼンテーション画面を映し、補助資料をプラズマディスプレーに表示するなど、状況に応じて使用している。

プラズマディスプレーは
良画質がポイント

 プレゼンテーションルームに導入されたプラズマディスプレーは最新鋭の機種で書き込み機能が備わっているので、例えば、数式の展開をディスプレー上で手書きしながら説明していくようなことも容易にできる。
 通常のコンピュータ画面の表示では、数式がずらっと並んだだけで、なかなかすぐには理解できないことがあるが、やはり人間が解くペースで一緒に書きながら、板書するような感覚で行った方が理解しやすい。プラズマディスプレーはこのような使い方ができる点で優れている。
 プラズマディスプレーは画質もクリアで、単独でも使えるというのが大きなポイントだ。また、板書機能はグラフを書く場合でも、コンピュータ画面にマウスを使って書くのと違い、手書き感覚で線を書き、赤丸で素早く囲めるという、黒板と同じ方法で使うことができる点もメリットだ。
 入力方法についても逐一、説明する必要がなく、特別の操作が必要ないということもメリットの一つだという。ただ、現状では機能のすべてを使っているわけではなく、十分に使いこなすにはもう少し時間がかかるようだ。


【千葉ニュータウンキャンパス内のメディア活用授業】
キャンパス間を結び
遠隔授業を実現

 現在、同大学では遠隔授業を積極的に進めている。東京、埼玉、千葉と三カ所に分かれている同大学のキャンパス間を結び、いずれかのキャンパスにいる教員とほかのキャンパスの学生間で講義を行うという形だ。
 具体的には、以下の三つのパターンとなる。
 (1)神田キャンパスと千葉ニュータウンキャンパスを結び、教員は神田、学生は神田と千葉という形で行う工学部の授業パターン。工学部の学生は神田にも千葉にもいるのでこのようになる。
 (2)逆に、千葉に教員がいるパターンは大学院の授業だ。大学院は工学研究科があるが、千葉ニュータウンキャンパスには工学研究科教員がおり、大学院生は千葉にも神田にもいるのでこのようなパターンが必要となる。
 (3)埼玉の理工学部には学生、教員が千葉、その授業を受ける学生は千葉にはいないというパターン。千葉ニュータウンキャンパスには理工学部の学生はいないので、このような形になる。
 これら三つのパターンの遠隔授業により、三キャンパス間を移動しなくても授業が受けられるという遠隔授業ならではのメリットがすでに実現している。目の前に教員がいないので、臨場感には欠けるが、質問しようと思えばマイクを使って、神田側の教員と話ができるし、教員も資料を作って事前にプリントを配るなど工夫をしているので、教員にも学生にも違和感なく運営されている。
 これからの取り組みとして具体的に検討しているのは、通常に行っている授業をデジタル化して保存し、それをいつでも学生が見ることができるような仕組みで、現在、情報の構築を進めようとしている。

【総合メディアセンターの今後の方針】

2種類の表示装置
相互に関連づけ運用

 同大学における従来のマルチメディア教室は液晶プロジェクターの大きな画面を広い部屋に一つ置いたというパターンだった。同プレゼンテーションルームではプロジェクター投影画面と、書き込みのできるプラズマディスプレーという二種類の表示装置を相互に関連づけて運用するという形のものを初めて使用してみたわけだが、たいへん使いやすいことが分かってきた。
 ただ、搭載してある機能のすべてを使いこなしているわけではないので、これからいろいろな使い方が生まれてくる可能性がある。また、このような機器を活用した学習研究活動の準備の仕方も変化していくと考えられる。これからも多くの教員・学生が自由に使い、その中からパイロットケースでどんなものが生まれてくるのか、総合メディアセンターでは興味を持って見ている。それらの情報を集積しながら使い方の支援も行っていこうと考えている。







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