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記事2001年11月3日 28号 (2面) 
私大連盟が初の連携会議開催
高校と積極的に連携
私学の優位性最大限に発揮
早い段階から大学の学問に触れる
 高等学校と大学との連携推進における私立学校の課題について論議する「中等・高等教育連携会議」が十一月八日、東京・市ケ谷の私学会館で開かれ、大学とその系列高校の教職員を中心に約九十人が参加した。日本私立大学連盟主催。私立大学が高校との連携を積極的に進める動きがあるなか、私学の優位性を最大限に発揮するための方策について意見交換する場として、初めて開催した。

 同会議の担当理事を務めた湊晶子・東京女子大学長は「日本の教育に今もっとも求められているのは、ぶれない自己、人格を形成し、社会で責任を果たす人間を育てること。そのためには、大学は、中高の教育現場の内容、問題点をもっと知る必要があり、中高には、大学がどのような羅針盤を持って進んでいるのかをもっと知ってほしい」と、互いの情報共有の重要性を述べた。
 中学・高校の立場から、成城学園高校の都築則幸教諭が問題提起した。都築教諭は、同高校から系列の成城大学への進学者が減少しており、高大一貫で学ぶという意識が低い生徒が増加している現状を紹介。早い段階で大学の学問に触れさせ、系列大学に魅力を感じさせること、中、高、大というカテゴリーにとらわれない教育が可能なことが、私学の一貫校だからこそ通用するメリットだと指摘した。
 大学の立場からは、関西学院大学文学部の阪倉篤秀教授が、大学と併設校、提携校などとの間で行っている教育連携の実例を紹介した。阪倉教授は「高校生としてできあがってきた生徒を大学側がいかに受け入れていくかという意識が乏しいのではないか。受けるに値するほどの大学教育をしていると言えるのか」と大学教育のあり方について問題提起した。
 同連盟が行った「加盟大学と高等学校との連携に関するアンケート」の結果報告もあった。
 調査は、加盟大学百二十五校を対象に、七月から八月にかけて行い、百八校から回答を得た。回答率は八六・四%。
 同じ学校法人内に系列の高校が設置されている大学は八十校で、全体の七四・一%にのぼった。
 系列校のある大学のうち、学部学生全体のなかで系列高校出身者が占める割合は、「一%以上五%未満」と「五%以上一〇%未満」が共に二十二校で、全体の五五%。
 系列校との連携教育については、「大学による学部紹介・進路指導」が七十校(八七・五%)でトップ。次いで、「大学教員による出前授業」(五十五校、六八・八%)、「大学教員による大学設備を利用した実験科目や体験授業」(三十四校、四二・五%)と、体験型の教育が約半数の大学で行われている。高校生による大学講義の受講も、単位認定のあるなしを合わせると、四十三校(五三・八%)が実施している。
 そのほか、高校教員が大学で講義・補習を行っている例や、高校生が大学図書館を利用できる大学もあり、単に進路指導にとどまらない連携が行われている。
 連携の目的としては、高校生段階で各大学の特徴を理解してもらい、優秀な学生の確保につなげようとするほか、「大学進学へのモチベーションを高めてもらう」「学部選択に役立つ情報提供」など高校生の進学意欲向上等が挙げられている。

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