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記事2001年11月3日 28号 (2面) 
私大の教育・研究充実 研究会大学の部
私学研修福祉会
学部教育の課題研究テーマ
高校と大学との連携でシンポも
 私学研修福祉会(大沼淳理事長=文化女子大学理事長・学長)は十月十八、十九の両日、東京・市ヶ谷の私学会館で「第二十四回私立大学の教育・研究充実に関する研究会(大学の部)」を開催、全国の私立大学から二百人以上の理事長・学長らが参加した。
 今回は「学部教育の課題」が研究テーマ。ハンス ユーゲン・マルクス・南山大学長が日本の高等教育の将来像について基調講演したほか、科目等履修生制度を活用した高大連携についてのシンポジウム、教職員の意識改革と教員の公募制による採用人事に関する事例発表も行われた。
 基調講演を行ったマルクス氏は、少子化や大学を取り巻く競争環境の激化といいった状況にある現在こそ、日本の大学がグローバルスタンダードに対応し、自己改革する好機であると述べ、(1)顧客志向の強化(2)各大学の特質を生かし「個性輝く大学づくり」(3)全人教育の推進などに取り組むべきだと指摘した。この中で(1)に関しては、南山大学で、一九九三年の学長就任以来取り組んでいる、学生による授業評価は「顧客満足度」向上に大きな意味を持つとし、今後はこれをFD(ファカルティー・ディベロップメント)につなげることも考えていくとした。また、九〇年代にドイツで私学設立ブームが起きたことなどを挙げ、私学はグローバル化の潮流に乗っているとし、その価値を再認識すべきだとした。
 高大連携をテーマにしたシンポジウムでは、小原芳明・玉川大学理事長・学長、北村敬子・中央大学商学部長、佐藤徹・東京都立国分寺高校長の三人の講師が発表。小原氏は、一貫校のミッションは人材養成であって、安易な入学・卒業をさせないこと、「ゆるみ」の教育ではなく、より厳しい教育を行うことだと指摘。新しい試みとして、来年度から高校にもセメスター制を導入することと併せ、成績優秀な高校三年生が秋学期から大学の科目を履修できる制度を企画していると報告した。北村氏は中央大学商学部の高大連携事業として、首都圏の総合高校五校を対象とした体験授業の提供、科目等履修生制度を活用した高校生への体験授業の提供、来年度から都立国際高校と国分寺高校を対象に始める、高校生への論文・口頭発表指導支援の概要を話した。これまでの受講生の評価は、七―八割までが理解に役立った、高校と大学の授業の違いを感じたとの回答だと報告。そのうえで、高大連携は学部教育の充実が前提にないと失敗に終わると指摘した。
 佐藤氏は自己完結した高校の教育課程を変え、開かれた学校づくりを進めていくために、中高連携、高大連携は必要だとし、中央大学商学部などとの間で連携に踏み切ったと報告。高大連携に対する高校のニーズはあり、高大双方の条件整備が進めば、今後、連携は増えていくだろうとの見通しも述べた。

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