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記事2001年11月23日 30号 (10面) 
ユニーク教育 (100) ―― 広島国際学院高等学校
工業化で初の試み 総合システム科
電気、機械、自動車整備に情報を
工業全般の基礎的学習
 広島国際学院高等学校(鶴井淑弘校長、広島県安芸郡)は工業科を五年前に総合システム科に改編して、今春で新体制二回目の卒業生を出した。工業科は内部に電気、機械といった区分の小学科を含む編成になるのが普通で、同校でも五年前までは電気科、機械科、自動車整備科という三小学科構成だったが、総合システム科はこの三科の教育内容のほかに情報まで含めて幅広く工業全般の基礎的学習を行う教育課程を組むことにしたのが特徴であり、全国の工業科では初めての試みである。
 産業界の技術革新はとてつもない速さで進んでおり、中堅技術者養成に対応するには三年間の工業高校教育では不足であり、大学や専門学校などでの継続教育が必要となる。また中学卒業の段階で将来の進路をはっきりと意識できる生徒は少ないのに、機械とか電気に進路を狭く限定するのも不適合が生じやすい原因となる。このため進学・就職いずれの進路をとるにせよ、幅広く基礎工学を学習しながら、理工系大学・短大、専門学校などへの進学を積極的に進める体制をつくろうというのが、総合システム科へ改編した理由であった。
 総合システム科は普通科と同様、男女共学で、理数工学コース(入学定員四十人)、基礎工学コース(同八十人)の二コースから成る。
 工業全般の幅広い学習という特徴を、基礎工学コースの専門教科のカリキュラムを例にとってみよう。一年次では工業基礎(全パートを回る)、工業数理、情報技術基礎、製図が全員必修。二年次では電気一般、機械一般、自動車一般の三科目が全員必修のほか、実験実習も八―十人ずつの班編成でローテーションを組み、電気、機械、自動車、情報の四つの分野でそれぞれ九時間ずつを前期と後期の二回行うのを全員必修にしている。例えば自動車の実験実習は前期でエンジンを扱ったら、後期では車体を扱うという方式である。また二年次から選択科目も入り、電気製図、機械製図から一科目選択。ほかに数学演習、英語演習(いずれも進学向き)、資格講座(就職向き)の三科目からの一科目選択は三年次にも継続される。三年次では実験実習と課題研究が必修であるのを除いて、あとはオール選択制となる。機械設計、原動機、電気機器、電子情報の四科目から二科目選択、機械工作、自動車工学、電子技術、電力技術の中から二科目選択となる。上級学年へ進むに従って電気系や機械系といった自分の志向が次第に形成されてくるので、それに伴った講座の配置となるわけだ。工業全般を広く見渡せる勉強方法のおかげで、「今自分が行っている作業が何につながっているか」「コンピュータのはじき出したデータが何を意味しているか」といった全体的つながりの理解に結びつけやすくなった利点もある。
 理数工学コースのカリキュラムは進学目的がより明確になってくるため、大学入試センター試験にも対応できるよう一般教育科目が増えてくる。国語九単位、地歴・公民八単位、数学十二単位、理科六単位、英語は十一単位。専門教科の中でも工業英語や数学演習、理数物理、理数化学などがあり、入試対応の一般教育科目にも通じる。こうした正規カリキュラムに加えて進学のための大学入試センター試験準備用補習や模擬試験、実力テストも授業期間中、夏休み中を問わずどんどん導入されている。
 総合システム科への改編が行われた当初、学校側が心配していた入学者確保については当初予定を大きく上回り、定員確保はもとより普通科レベルの向上にも役立った。女子の入学者は二十三人(普通科は男女半々)だった。
 平成十三年春の卒業生百六十九人の進路状況は四年制大学が愛媛大学などの国立を含めて四一%、短大四%、専門学校二八%で、進学率の合計が七三%。これは工業高校としてはかなり高い比率であり、「進学意欲の高まりに対応する」という目的は果たしたといえる。



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