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全私学新聞

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記事2001年11月23日 30号 (8面) 
多摩大学のウェブシステム
eメールを教育とコミュニケーションに活用


経営系の単科大学として質の高い教育を展開している多摩大学(中谷巖学長、東京都多摩市)では、今年度からインターネットのeメールを大学と学生とのコミュニケーションツールとして活用するシステムを導入して成果を上げている。全私学新聞では同大学の情報系プロジェクトを担当しているメディア&インフォメーション・センターのセンター長である近藤隆雄教授に、多摩大学における教育の特色と情報インフラの整備状況についてお話を伺った。

情報リテラシーを重視 全学生にメールアカウント
多摩大学の教育の特色

 多摩大学は経営情報学部のみの単科大学ですので、学生には経営的な知識を身につけさせるとともに情報リテラシーも十分に修得させ、インターネットなどのマルチメディアを道具として使いこなし、ビジネスの世界において「知識」と「道具」をバランスよく使えるような人材を育成しています。その中での教育理念ということでは、多摩大学では現場から乖離した理論は避け、常にそれを利用する場面で意味を持つような教育の実践を心がけています。教員も六割以上が実務経験のある人材で、ゼミは一学年十五名くらいでやっていますから、きめ細かい指導をしようという考え方です。ゼミの教師を通じて大人の社会を理解する。そういう機会が豊富な教育であると思います。
 その他の特色としては、前述の実践的な側面を重視する教育という面からも、情報分野については、「先頭でなくてもよいが、先頭集団に入っていたい」「ブロードバンド(広帯域通信)の時代に遅れをとらない」という姿勢が挙げられます。多摩大学を卒業して、現場に入っていったときには全く違和感のないような知識と道具を与えたい。このような姿勢の中から「情報技術の革新には一般よりも早く手をつける」という意識はいつもあります。これは大学としてのコンピタンスをどこに出すかということにも関係しています。

教育とeメールの活用

 多摩大学は前述したように情報化への取り組みが以前から非常に進んでいて、インターネットは平成五年に接続を実施し、アメリカのサイトを見に行くなどの利用も開始していました。
 そういう流れもあって、本学ではeメールの重要性については早くから注目しており、ビジネスの社会では将来的に必須のツールになるという見通しを立て、平成五年、インターネット接続と同時に全学生にメールアカウントを無料で配布しました。
 メールアカウントの配布は今でこそ当たり前になっていますが、当時は国立大学でさえ実施していない段階だったのです。
 現在、メールの必要性は既に就職活動では必須のスキルとなっていて、多くの企業ではメールによる問い合わせ、手続き以外は受け付けないようになっています。特に情報系の企業では、このハードルを超えられない人材はいらないということになります。
 学内コミュニケーションにおいてもレポート提出に利用したり、学校と学生、学生同士の連絡にも利用したりするようになってきました。
 このような要請から本学では入学してくる学生全員にメールアカウントを配布するとともに、メールの使い方をカリキュラムの中に組み込むようにしています。
 具体的には、「情報基礎」の授業で一年生の第三週目ぐらいからメールを利用して教員にメールを送ったり、友達とメールをやりとりしたりし、その次の週からはレポートを送るというところから始めています。

メール活用システム導入の背景

 このように本格的にeメールが使われるようになってくると、操作方法や教育内容の変化により、メーラー(eメール受発信ソフト)が変わっていく、バージョンが変わっていく、OSが変わっていく、何ができたとなるとサポートがとても煩雑化し、管理面でも年度によって内容が変わっているので大変です。
 また、大学としては、多摩大学のクレジットのついたアカウントを使ってもらいたい気持ちもあります。というのは、大学の名前というのは一つのブランドだということです。大学のクレジットのついたアカウントを使うことによって、多摩大学という名前が使える。企業などに問い合わせをする場合も連絡してきた人物が明確に分かるということで、企業側から信用されます。
 また、実際に友達と連絡するときも分かりやすいということは大切なことです。
 現在ではパソコンを買えばブラウザーが初めから入っているわけですから、大学側で一括してアカウントの設定から管理までができ、インターネットにさえつながっていれば学内、学外など場所の制約がなくメールが見られるようなシステムを導入して、使い勝手のよいメール環境を整備したいと考えたわけです。

OSや端末を選ばない 通信の安全性も確保
採用のポイント

 本学では、前述した通り、非常に早い時点からeメールを導入してきた経緯があり、管理面、利用者の使い勝手、利便性が高いことがシステム選定の基本にありました。その上で、マッキントッシュ、ウィンドウズ、また、これからはUNIXも含めて、コンピュータで表現することは一緒だということを含めて教えているので、マッキントッシュでなければ、ウィンドウズでなければできないという状況を排除したいということで「キャッチ・ミー・アット・メール」を採用することになりました。
 もう一つは、設定が分からないから使わないという学生が増えてきたということもあります。「キャッチ・ミー・アット・メール」ですと、個別の設定なしで簡単に自宅でも使える。ブラウザーがあればどこでも使えますから、それこそ海外に行ってもインターネットカフェでも使える、ということがあります。
 また、別の理由としてはセキュリティーがあります。外出先から学生が就職活動で送る内容などは機密情報といえるわけです。そういった場合にもSSLといった暗号化技術を利用してセキュリティーの掛かったプロトコル通信ができて安心です。他人への成りすましという問題も、必ずログインしないとメールが送れないシステムである点で「キャッチ・ミー・アット・メール」を導入しました。
 授業の面においても、これまではメールソフトを教える場合に今まではマニュアルを作って、設定から入り、分からなければサポートセンターに問い合わせるということを繰り返したのですが、今は基本的にはブラウザーですから、個別に設定しないで、クリックするだけで使える。後はパスワードとIDを入れるだけ。教える面でも、管理面でも楽になりました。
 「キャッチ・ミー・アット・メール」で正解だったと思うのは、例えばiモードに連携させるとか、いろいろな新しい技術が出てきても、ベースがインターネットの規格の上で動いているものですから将来的に発展していく技術を取り入れていくことができます。この柔軟性にも「キャッチ・ミー・アット・メール」の特色があると思います。

授業、ゼミ、就職活動に メールマガジンも検討
採用状況

 主な活用事例は授業です。教員に質問やレポートを送ったりしています。多摩大学の場合、教員と学生が直接話す機会は少なくないのですが、eメールでなければ質問を受け付けないと決めている先生もいます。
 もう一つはゼミです。特に経営系ゼミは頻繁にメールを使っています。自分が外に出て勉強してきたものはメールを使ってレポートする、自宅で勉強してきたものをみんなでディスカッションする場合にもメールを使うなど日常的に利用されています。メールを使えない学生をゼミに入れない教員もいます。
 あとは就職活動です。特に三、四年生になると、ほとんどのメールが就職活動ということもあります。
 大学事務の面でのメールの利用は、まだ本格化したわけではありませんが、メールマガジン(の創刊)を考えています。以前は図書館から情報を流そうと試みたのですが、何をどこまでの範囲で流せばよいのかが難しい。それで、現在のところやめているのが現状ですが、必要性はあると思っています。
 図書館にこうしてほしいとか、開館日程などさまざまの情報がほしいという学生に配っていくことを考えています。

知のネットワーク形成「ルネッサンスセンター」開設
今後の方向性

 二十一世紀に必要な大学の役割の一つとして、ネットワークを利用して社会に広く存在している優れた「知」を発見し、ネットワークし、編集することが必要だと考えています。
 その実践の場として、渋谷マークシティに「ルネッサンスセンター」を開設しました。多摩大学、そしてルネッサンスセンターを“知のインキュベーター”とすべく、ネットワークをより効率的に利用し、すばらしい「知」を「創発」したいと考えています。



開発の背景と製品の特徴
アカウント追加、変更に対応 
蝶理情報システム株式会社ソリューション事業本部 清水 和夫氏

ニーズと背景

 インターネット環境の急速な拡大、とりわけeメールの使用が個人のデスクを離れて、使用者の所属する企業や機関に構築されたイントラネット、あるいは出張先などの遠隔地にある端末やモバイル環境にある端末などに拡大したことにより、このようなソリューションに対するニーズは増加しています。eメール使用環境拡大の趨勢はビジネスの世界にとどまらず、学校などの教育機関にも波及し、いまや学生や教職員が携帯電話からメールを受発信するのはごく普通のこととなるとともに、こうした技術を学校における教育研究やコミュニケーションのツールとして活用しようとの機運も高まっています。

CatchMe@MAILの特徴

 CatchMe@MAILはeメールをウェブ・ブラウザー上で送受信することを可能にするウェブ・メールシステムです。つまり、パソコンごとにメールソフトをインストールする必要がなく、また、パソコンの機種も問わずにメールを送受信することができます。
 既存のメールサーバー環境のソフトウエアや機器本体の機能を変更することなく簡単にウェブ・メールシステムの導入が可能です。また、ウェブ・ブラウザーが備わっている環境であれば時と場所を選ぶことなくメールを送受信することができ、ウェブ対応携帯端末(iモード、EZweb、J―スカイ)やPDAにも標準対応している点も大きな特徴といえます。
 セキュリティーの面においても高度な暗号化システムであるSSLに対応しているだけでなく、SSL処理によるサーバーへの負荷を軽減し、多量のアクセスにもストレスなく対応することが可能です。
 保守管理の面では最新のディレクトリサービスプロトコルであるLDAPに対応しているので、既存のユーザー情報をそのまま利用することができ、効率的かつ統合的な管理が可能です。特に学校など教育機関では入学や卒業、教職員の転属などが毎年必ず発生する環境なので、メールアカウントの追加や変更に柔軟に対応できる点を高く評価されています。また、システムの設定やアカウントの管理などの作業はすべてブラウザー上でできますし、学校関係者以外のアクセスを制限する機能が備わっていることも、安心して利用していただいている大きな要素となっています。
 蝶理情報システムはもともと企業向けシステムの開発をメーンに発展してきた企業ですが、このCatchMe@MAILはこれまでに蓄積されたウェブ関連技術をもとに新たな可能性を秘めて開発されたシステムといえます。
 教育現場においてもITの更なる利用拡大が不可欠です。当社では企業向け製品開発の実績と信頼を教育向けソリューションヘフィードバックするとともに、これからの、IT教育の一助になり得るよう、よりよい製品づくりを目指していきたいと考えております。





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