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記事2001年11月13日 29号 (4面) 
図書館を使った調べる♀w習賞コンクール
問題を喚起し学習
学校図書館は読書活動を支えるとともに、図書館の資料を使った「調べる学習」を通じて、児童・生徒の“自ら考える力”の育成に重要な役割を果たす。“調べる”学習賞は各学校などのそうした取り組みを支援することを目的に発足したコンクールで、今年で五回目を数える。

学校部門、公共図書館部門
環境と私達の暮らしなど課題

 特定非営利活動法人(NPO)図書館の学校(瀬戸眞理事長)と財団法人日本児童教育振興財団(相賀昌宏理事長)が主催する第五回図書館を使った“調べる”学習賞コンクール(文部科学省、全私学新聞など後援)の応募要項が決まった。
 〔学校部門〕(1)小学生の部(2)中学生の部(3)高校生の部に分かれ、調べるテーマは自分自身で見つける「自由課題」と、このコンクールの「課題」がある。
 コンクールの課題は共通で▽「環境と私たちの暮らし」(環境汚染、オゾン層の破壊、温暖化、酸性雨、砂漠化などが考えられる)▽「福祉(ボランティアなど)」(お年寄り、介護、障害、バリアフリー、盲導犬、癒しと動物、手話、点字、献血、青年海外協力隊などが考えられる)▽「いろいろな職業」(各分野の職業、なりたい職業、職業と関連する人物・伝記などが考えられる)
 (4)指導者の部では各学校の教諭、司書教諭、学校司書らの児童・生徒の図書館、図書館資料を活用した調べ学習への指導、援助の実践レポート。(5)学校の部では児童・生徒の調べ学習への指導、援助の取り組みなどについてのレポート。
 〔公共図書館部門〕(1)図書館の部(2)一般利用者の部(3)子どもといっしょに調べる学習の部がある。(3)は親と子ども、大人と子どもが学校と離れて一緒に取り組んだ調べ学習のレポートが望まれる。
 応募は、なぜそのテーマを選んだのか動機を書くこと、調べていくうちに発見したことや実際に見聞きしたことを書くこと、調べ学習を進めているうちに悩んだり相談したりしたことなども記入することがポイントとなる。


自由課題に多い応募
田邊さん(山梨英和中学)が大臣奨励賞

 第四回図書館を使った“調べる”学習賞コンクールは応募総数千九百四十七点で、第三回より八百六十一点多かった。このうち学校の部千九百二十五点、公共図書館の部二十二点だった。また、自由課題と課題別では自由課題の方が応募数が多く、その中で小学校が六百八十八点、中学校が六百五十一点、高校が三百十五点という状況だった。中学校の部「自由課題」で、田邊舞子さん(山梨英和中学二年)の「環境問題の一環としてのゴミ問題」が文部科学大臣奨励賞に輝いた。
 そのほかの入選者のうち私学関係者は次の通り。

 (小学校の部)
  優秀賞・自由課題=藤本紀子「縄文人はおしゃれ」(八戸聖ウルスラ小五年)
              ▽稲村典子「一粒の大豆から大豆と日本の暮らし」(同六年)、
  佳作=安藤沙織「元気に育ったヒヨドリのピーチャン日記」(仙台白百合学園小三年)
     ▽高砂充稀子「豆腐を食べると頭が良くなる」(八戸聖ウルスラ学院小六年)

 (中学校の部)
  優秀賞・自由課題=久保田沙耶「九重廃寺における古代瓦の研究―私が思う九重廃寺の瓦のルーツ」(茗溪学園中学一年)、
  佳作=今福あや「DicBrunaとイラストさし絵」(山梨英和中二年)、
  優秀賞・課題=金澤希衣「ツボ」(山梨英和中学二年)
 
 (高校の部)
  優秀賞・自由課題=松橋明子「軍馬と十和田市」(八戸聖ウルスラ高校一年)
             ▽阿部エリコ「八戸湊町いさぼのかっちゃ」(同)
             ▽櫛部有紀子「少年法と少年犯罪」(茗溪学園高校三年)
 (パソコンの部)
  特別賞=小林仁美・木村明美・堀川真紀「これでアナタもダイエッター」(桜ケ丘高校三年)


受付11月30日まで
発表1月下旬 表彰2月17日

 作品の受付期間は十三年十一月一日から三十日までで、入選者の発表は十四年一月下旬、表彰式は同二月十七日。
  ◇応募・問い合わせ先
 特定非営利法人図書館の学校 
  〒112-0012 東京都文京区大塚3-5-11
  電話:03(3943)0666、FAX:03(3943)6567、
  ホームページ:http://www.toshokan.or.jp/
  E-mail:npo@toshokan.or.jp
 (財)日本児童教育財団
  〒101-0064東京都千代田区猿楽町2-5-4
  電話:03(5280)1501、FAX:03(5280)1503
  ホームページ:http://www.asahi-net.or.jp/~tp6t-ookr/index.html



特性活かし斬新な取り組み

山梨英和中学校 

調べる学習の原点は自由研究
生徒を大きく伸ばす原動力

 「第四回図書館を使った“調べる”学習賞コンクール」では、山梨英和中学校(小宮山勲校長、山梨県甲府市)から三人が入選した。同校の調べる学習の原点は、十八年前から実践している「自由研究」にあるといっていい。同校では知識の暗記力、ひらめきの能力をみるのではなく、問題を読み進む中で答えられるかどうかをみる「学習適性テスト」(学適)というユニークな入試科目を実施しているが、「自由研究」はこの「学適」を経た入学生の受け皿として生徒を大きく伸ばしていく原動力にもなっているようだ。
 深澤美恵子教頭は「自由研究」を仕上げるためのポイントを、本人の関心のあるテーマであること、資料集めができやすいことを挙げたうえで、「そのテーマを掘り下げて調べること、それをまとめていくこと、表現していくこと、これらが一つの教科学習からは得られない水面下の総合的な力を出していくことにつながる」と語る。また、「自由研究」に取り組む学習姿勢が中高六カ年のカリキュラムの中で知的な関心を深め、この「自由研究」がきっかけで将来の職業を発見する生徒まで現れた。
 そしてこのような視点から「自由研究」は、「教科の壁を超えた『総合的な学習』の先駆でもある」と自負する。
 総合的な学習の一環として位置づけられている「自由研究」は中一の後半からテーマ探しを始め、年度末にテーマ決定と指導教師が決まる。中二の五月から八月にかけて研究し、いったん九月一日提出としている。その後九月末日までは最終指導を受ける。指導は全教師が分担し、一人から数人を担当して個別指導に当たる。
 その中で、技術家庭科の情報の単元では「自由研究」に取り組むためのワープロ・表計算・グラフ・資料検索のためのインターネットを活用したコンピュータ学習を行った。また、美術科では表紙のデザインを、国語科では論文指導などを行っている。
 論文として整えられた作品は高校教師を含む全教員がマンツーマンで指導してきた結果であり、生徒が自分のテーマを深く掘り下げようとしてきた意欲の成果だ。
 深澤教頭は「『自由研究』は自ら学び、表現できる生徒を育成し、知的な関心を深め、学ぶ姿勢を整え高校教育へつなげていく本校の教育の力になっている」と確信している。



八戸聖ウルスラ学院高校 

総合学習の中で積極的に
生徒たちが架空の旅行企画で

 八戸聖ウルスラ学院高等学校(中村敬子校長、青森県八戸市)では、調べる学習について平成十二年度では、(1)ロングホームルームでの実践(2)国語の発展学習(3)保健の発展学習で行い、十三年度では(4)総合学習の中で、積極的に取り組んでいる。
 この中、ロングホームルームでは、「自分たちで旅をコーディネートしよう」をテーマに掲げ、四―五人が一グループを作り、一人ひとりが役割分担を決めた。生徒たちが架空の旅行を企画する上で、ある国あるいは国内の歴史、現状、文化、意外な見所などを調べ、表面的でない知識を得、理解を深めた。生徒は図書館で国や地域ごとにまとめられている本を参考にした。最終的には旅程企画では、旅程、コメント、イラストなどをパンフレットのようにまとめた。「旅行企画という形をとることで、楽しみながら作業し、自主的に課題を決めて取り組み工夫するというのが狙い」(佐々木美央教諭)だ。
 総合学習での試みとして、一学年で行うテーマは「ルーツを探る」。一学期は自分史にかかわることで、生徒が自分の歴史を振り返りながら、その年ごとの社会の出来事を調べたり、自分の家系のルーツを調べたり、物価の変遷を調べたり、水泳の選手は水着の歴史を調べたりした。二学期前半では、学校のルーツ、創立者聖アンジェラについて調べた。後半―三学期は、「創立者についての表現・創作をしよう」をテーマにグループごとに分かれて作業し、クラス発表、学年発表が開かれる。「これから創立者について調べていく上で、図書館利用がますます増えていくと思います」(島谷邦子教諭)。
 そのほか、国語や保健の教科についても調べる学習は行われており、保健(一年)では教科書の「環境と健康」の発展学習として、「各自、川の汚染・ごみ・大気汚染・食品公害などについて調べ、レポートにまとめた」(二田麗子教諭)。
 調べる学習を展開する上において、島谷教諭が心掛けている点は「複数の資料に目を通すこと、課題はとことん追求すること、生徒の重荷になる課題は避けること」だ。
 島谷教諭は調べ学習をすることによって、「生徒が満足感を味わうこと」を効果の一つとして挙げる一方で、「生徒が読書していないことを痛感します。だから下地がないのです。国語科で本に親しませながら図書館で調べる学習をさせようと考えています。総合的な学習の時間で一層図書館の利用は増えると思います」と語っている。









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