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全私学新聞

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記事2001年11月13日 29号 (3面) 
各地区で活発に教育研修会開催
私立中学高等学校
平成十三年度の各地区研修会が夏から秋にかけて開催された。全国私学教育研究集会の開催との関係で地区研修会が開催されない地区もあるが、ほぼ毎年、地区内の各県の私立中学高校関係者が集まって研究協議を行っている。事例発表にしても隣県のため一層身近な問題と感じられ、悩みは同じということもある。ここでは各地区の研修会の中から四地区の概要を報告する。(編集部)

第42回 九州地区研修会 7月26日、27日に佐賀県で
全体会と「管理運営部会」 

企業意識を私学運営に
環境生かす、人材育成、創造力

 九州地区私立中学高等学校協議会(上田祐規会長=鎮西高校長)と佐賀県私立中学高等学校協会(宮zア善吾会長=佐賀清和学園理事長)は七月二十六、二十七の両日、佐賀県・佐賀市のはがくれ荘で第四十二回九州地区私学教育研修会佐賀大会(主催・私学研修福祉会、協力・日本私学教育研究所、後援・日本私立中学高等学校連合会)を実施した。なお、次回実施県は宮崎県。
 「二十一世紀を見据えた私学教育」を研究目標に、大会には三百五十人の教職員が集まった。研修会は初日の全体会と、二日間を通して管理運営、進路指導(三つの分科会)、生徒指導の三つの部会に分かれて行われた。
 初日の全体会で上田会長はあいさつの中で、「私学は建学の精神にのっとり、人間教育の精神で社会に有為な人材を送り出している。私学を出ている人は社会に出てから違う。これからもいい教育をしていくことが大切だ」と述べた。
 また、実施県の宮崎会長は実りの多い研修会となるようにと、教職員に呼びかけた。
 来賓の井本勇・佐賀県知事は、「私学振興を県政の最重要事項施策の一つと位置づけている。特色ある教育をできるように、本県は支援していきたい。特に私学教育に対し、大きな期待をしている」と祝辞を述べた。
 開会式に続いて、「今後の社会動向と私学教育に期待するもの」と題して、大和證券顧問の土井定包氏が記念講演を行った。
 土井氏は講演の中で、アメリカでは小学校四年から株取引についての教育を行っており、日本でも学校で投資ゲームを始めており、現在千校、五万五千人ほどが参加していると、紹介した。
 昼食をはさんで、各部会ごとに分かれて行われた研修のうち、管理運営部会では、北川安洋・ジーバ株式会社社長の講演、および佐賀県と熊本県から実情報告が行われた。
 「企業意識は私学運営にも活用できる」と題して、講演した北川社長は、シルバーベンチャー企業を興した経験を踏まえ、環境の生かし方、人材育成、創造力など、私学教育・経営に有益な内容に言及した。
 続いて、「教育県佐賀の復元を願って母親学級を開講して」をテーマに、宮zア善吾・佐賀清和学園理事長が実情報告を行った。宮zア理事長は、昨年五月から始めた、父親も含めての母親学級は、「自分をつくり、郷土をつくることを狙いとしている」ことを報告し、「教育の振興は私学から行うべきで、建学の精神にのっとって、教育の向上・刷新ができると信じている。強い私学教育を目指したい」と述べた。
 また、甲斐栄治・熊本中央女子高校長は「二十一世紀の私学の展望体験に基づく学習」をテーマに、実情報告を行った。
 甲斐校長は「総合学習で一番重要なのは理念で、理念がしっかりしていないと失敗する」とし、同校の総合学習「人間学」の基本的な考え方は調査、研究活動、フィールドワーク、企業見学、企業実習などの実践活動を重視、人間の五感全体による知的創造を目指すと述べた。



第39回 中部地区研修会 10月11日、12日に長野県で
全体会と「生きる力の育成部会」 

自らの生き方あり方を考えて
将来の進路選択の能力育成

 第三十九回中部地区私学教育研修会(主催・私学研修福祉会、後援・日本私立中学高等学校連合会ほか、協力・日本私学教育研究所)が十月十一、十二の両日、長野県・松本市の長野県松本文化会館と松本第一高校を会場に実施された。
 実施団体は日本私立中学高等学校連合会中部支部(大谷和雄支部長=桜花学園理事長)と長野県私立中学高等学校協会(中村節好理事長=松本松南高校長)。
 研修会は「二十一世紀に飛翔する私学教育をめざして」を研究目標に、中部地区の教職員六百三十人が研さんを積んだ。なお、次期開催県は愛知県。
 初日は全体集会、記念講演、アトラクション(専修学校国際スズキメソード音楽院生による演奏)、および十部会に分かれての研究協議、二日目は各部会での研究協議が行われた。
 開会式では、中村節好・同研修会運営委員長は「私学は社会の変化に対応し、二十一世紀の私学教育を目指し、時代の要請に応えていく必要がある」とあいさつした。
 来賓の青木輝政・長野県総務部長は「私学は建学の精神の下に個性重視の教育を展開しており、教師の果たす役割はますます重要になってきている」と祝辞を述べた。
 開会式に続いて行われた記念講演では、セイコーエプソン相談役の中村恒也氏が「物づくり五十年から学ぶこと」の演題で講演し、その中で、中村氏は「技術そのものは価値がないが、技術が商品に生かされて初めて価値が出る」と指摘、その上で「人々の役に立ち、経済の発展に貢献することが重要だ」と熱く語った。そして、今後の組織でのキーワードとして「(1)ビジョン(世界観)(2)部下への信頼(3)情熱(4)説得の技術(5)エンドユーザー(6)決定(7)真実に謙虚(8)常に前向き(9)加点主義」を挙げた。
 研究協議は、「学校経営」「特色ある私学教育」「生きる力の育成」「国際教育」「情報教育」「国語」「地歴・公民」「数学」「理科」「英語」の十部会で、このうち、「生きる力の育成」の研究主題は「自らの生き方あり方を考えさせ、将来の進路を選択する能力を育てる」。
 初日は「本校の生徒指導について」と題して、長野県の飯田女子高校の岩根正明教諭と、「生きる力を育てる『自由と規律』の教育」と題して山梨県の日本航空高校の浅川正人教頭がそれぞれ研究発表した。
 岩根教諭は同校の教育目標を「健全な家庭人、有能な社会人として教養豊かな女性を育成することを目的として、特に仏教精神を基盤とした情操教育」に重点を置いていると説明し、基本的生活習慣として、時間を守ること、約束を守ること、および人の話を聞くことを確立していると報告した。今後の課題として、「高校生活を自主的に生き生きしたものにできることを実感すること」と語った。
 一方、浅川教頭は同校が実践している自国の国旗・国歌を大切にすること、全寮制の中で育つ自立心、一年生の校外訓練、道徳教育の充実、毎朝十分間の瞑想について報告し、「規律を守ることによってこそ、本当の自由が得ることができる」とまとめた。



第37回 関東地区研究集会 10月4日、5日に茨城県で
講演と研究協議 

助成対策のあり方などを協議
県民の理解得る大切さ強調

 今年で三十七回目となる関東地区私学教育研究集会が十月四、五の両日、茨城県つくば市のエポカルつくば(つくば国際会議場)で開かれ、関東地区六県(東京を除く)の私立中学高校の理事長、校長ら約七十人が出席した。
 この大会は財団法人私学研修福祉会が主催し、財団法人日本私学教育研究所が協力、茨城県私学協会が実施を担当した。他の地区研修会とは異なり、校長ら学校管理者を対象とした研修会。今年の研究目標は「二十一世紀におけるスクールアイデンティティ(SI)の確立」で、総合的な学習や学校週五日制への取り組み、私学助成対策等について協議・情報交換が行われた。
 このうち私学助成対策に関しては、各県から助成対策の現状や課題などが報告された。栃木県からは、補助額はまだ低く、補助金の増額に有効な対策が見出せないなど厳しい状況が報告された。
 それに対して群馬県からは知事の教育に対する認識の高さから補助額は全国でトップクラスとなっていること、要求に当たっては、教育の将来のあり方を見つめ、そのうえで現状を分析して要望することの重要性などが指摘された。また教育の一つひとつを点検しながら要望していくこと、今後、増加が見込まれる補助的教員(専門的職員)に関する要望、市町村に対する要望も有効であることなどが報告された。
 埼玉県からは六十万人の署名運動を展開しており、十二年度は六十万人に後一歩のところまで迫ったことなどが、千葉県からは、知事への要望を続けているが、なかなか難しい状況となっていること、父母の会とは連携をとっていないことなどが報告された。神奈川県からは、補助額が全国で最も低く、いわゆる標準単価を下回る厳しい状況にあることや、「特別委員会」を設置して補助金問題の対応策を協議していること等が報告された。神奈川県は平成十二年度からそれまでの単価方式から公立学校の教育費を基礎とする標準運営費方式に助成方式を転換したが、公立学校の教育費の詳細が分からないことなども、補助額の低迷の要因などとし、県民に公立学校に対する税金の使われ方、県内の教育が公立学校だけでいいのか、などを訴え、県民に私学教育の重要性に対する理解を深めてもらい、県を動かしていく原動力としたい考えを強調した。またそうした取り組みでは公立高校の授業料引き上げを実現した大阪私学の取り組みが参考になるとした。
 茨城県からは私学振興大会を開催するとともに、県知事、県議会等へ陳情、知事との懇談会なども開催していること、来年度に関しては経常費補助金のほか、各種研修事業、IT教育の準備推進、教職員の活性化事業、教科外教育活動の充実推進、育英事業の拡大充実を要望することが報告された。
 このほか総合的な学習に関しては、これまでやってきた教育をシステム化すれば対応できる、建学の精神に基づいていないものは先細りする、他教科で質問が増えた、進んでやる子とそうではない子との差が出てきた、といった報告が聞かれた。



第41回 東北地区研修会 7月25日〜27日に宮城県で
全体会と「教育課程部会」 

浅野宮城県知事が講演
生徒減少で厳しい実践報告も

 第四十一回東北地区私学教育研修会が七月二十五日から三日間、仙台市の仙台ガーデンパレスを会場に開かれた。
 今年の研修会の研究目標は「新しい私学教育の創造」で、東北七県の私立中学高校の教員ら約三百二十人が出席した。
 この研修会は、財団法人私学研修福祉会が主催し、財団法人日本私学教育研究所が協力し、宮城県、宮城県教育委員会、仙台市、仙台市教育委員会、日本私立中学高等学校連合会、東北七県私立中学高等学校父母の会連合会、宮城県私立小中高等学校父母連合会が後援。東北地区私立中学高等学校連合会、宮城県私立中学高等学校連合会が実施したもの。
 当日は宮城県の浅野史郎知事、藤井黎・仙台市長もかけつけた。
 研修会初日は開会式に続いて、浅野史郎知事が「地方分権を踏まえ、東北の私学に期待するもの」とのテーマで講演したが、講演内容は浅野知事が県政の中核に据えている事項に関するものとなった。この中で浅野知事は、二十世紀型の政治は、大量生産、大量廃棄で、どれだけ東京に近くなったかが重要だったが、二十一世紀型は、ゆとり、安心、多様性、個性、自然環境などがキーワードとなること、また国土の均衡ある発展ではなく、宮城県は宮城県らしく、各県がそれぞれ個性や多様性を持って輝くことが大切とした。
 また本物の民主主義は(1)地方分権(2)情報公開(3)NPOが重要で、国民は納税者意識をもっと持つべきだと指摘。このうちNPOに関しては、行政のライバルであり、常に意識すること、宮城県に関してはNPO花盛りの県にしたいとの考えを明らかにした。さらに教育に関しては、画一を排して多様性を求めていくことの重要性を強調した。
 二日目終日と三日目午前中は部会での研究協議だった。今年設けられた部会は、学校経営、進路指導、生徒指導、教育課程、情報教育、国際教育の六部会。
 このうち教育課程部会には六十一人の教員らが出席、「生きる力を養う教育課程」を研究テーマに、講演、研究発表等が行われた。
 講演では財団法人日本私学教育研究所の小池俊夫研究部長が、「新教育課程の編成について」と題して、新学習指導要領への対応では独自性に基づいた発想力が問われること、薄っぺらな知識の教育をやめて、ゆとりある教育の中で生きる力を養う教育に取り組もうと呼びかけた。また不登校やひきこもりは教育で人間力が育っていないためと指摘した。
 事例発表では八戸聖ウルスラ学院高校が「普通科の中の特色ある教育課程」について、一関修紅高校が「生きる力を育む教育課程本校における少人数教育の試み」について、福島東稜高校が「新教育課程の編成」について、東京学館新潟高校が「書道コースの実践活動」について報告した。
 私立高校教員からの報告は、生徒減少期という厳しい状況の中で、一丸となって新課程に取り組むべき教員集団がなかなか一つにまとまらず、新教育課程編成の担当となった教員の孤軍奮闘ぶりや財政的な理由から新学科を断念し選択コースを採用した経緯、検定合格を生徒たちの目標に掲げて一定の成果を収めたが、基礎学力はおろそかになっていないのかといった反省など、厳しい条件下で、生徒たちが学校で目を輝かせるにはどうしたらいいか、教育の在り方をめぐって悩み続ける教員の姿が浮き彫りになった。その中でも書道コースを開設して、生徒たちの学習意欲や自信、大学の書道関連学科への進学を実現した東京学館新潟高校のユニークな取り組みが目を引いた。







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