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記事2001年10月3日 25号 (2面) 
トップ30大学骨格案
学長の権限強化などめぐり討論
第2回大学改革連絡会
 中央教育審議会大学分科会と科学技術・学術審議会学術分科会は九月二十一日、両者合同の「大学改革連絡会」の第二回会合を東京・霞が関の文部科学省別館で開いた。この日は文部科学省の「世界最高水準の大学づくりプログラム」骨格案について討議した。この骨格案では、国公私を通じた世界最高水準のトップ30大学を育成するとの方針を打ち出しているが、文部科学省は「三十はシンボリックな数字。わが国の大学の五%程度は世界のトップレベルの大学に育ってほしいというのがねらいだ」と説明した。
 骨格案の全体計画では、国公私立大学の大学院の専攻(博士課程)レベルを選定の基礎とし、二年間で十分野計三百専攻程度を選定するとしている。出席の委員からはこの方針について「三百専攻を選ぶのなら、三十大学である必要はない。予定調和的にすることは不透明な印象を与える」と疑問を投げかける意見が出た。これに対して文科省は「大学まるごとの評価をすることは難しい。学問分野別に博士課程の組織に着目し、重点的に育成する。必ずしも三十大学にはならない。各大学はどの分野での競い合いの選択をするか、名乗りを上げていただきたい」と答えた。また、経費の配分をめぐっても「(ランキングの)順位によって金額に差をつけるということはない。どういうふうに使うのか各大学から構想を聞いて、それに応じて配分する」との見解を示した。
 このプログラム自体については吉川弘之座長(独立行政法人産業技術総合研究所理事長)が「科研費では実現できなかった、より深い大学の多様化を実現するという視点が重要だ」と指摘。また鳥居泰彦・中教審会長(慶應義塾学事顧問)は「日本の学者集団が世界の標準から遅れた、との認識を持っている。(構造改革特別要求額の)四百二十二億は少ないが、新しい刺激を与える効果はある。学長の権限を強化し、世界の最高水準の評価を得るために、科研費の補充として使える」と述べた。
 鳥居会長も言及した学長の権限強化については、「トップ30」の申請に当たって、どの分野での審査を希望するかの決定に関して、学長が指導力を発揮すべきだとの視点から、複数の委員から意見が出た。井村裕夫・総合科学技術会議員は「(トップ30大学案は)大学の多様化が叫ばれながら、すべての大学がミニ東大を目指す傾向を変えるモチベーションを与えるものだ。学長は思い切ってこれを使って、その大学の得意な分野を伸ばしていくべきだ。情報にせよ、バイオにせよ、(わが国の大学は)遅れてしまった」、黒田壽二・金沢工業大学学園長・総長も「学長のリーダーシップを発揮できる体制づくりが重要だ」と、それぞれ指摘した。
 また、生駒俊明・日本テキサス・インスツルメンツ株式会社社長は「トップ30大学案は研究大学を定義するものだ。教育に重点を置く大学へのインセンティブは別に与えるべきだ」と述べた。

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