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記事2001年10月23日 27号 (2面) 
中央教育審議会の審議の動向
【大学分科会将来構想部会】

大学等の設置の在り方
学部学科新設・改廃の弾力化


 中央教育審議会大学分科会の将来構想部会は十月十七日、東京・霞が関の文部科学省別館(郵政事業庁庁舎)で第二回部会を開き、大学等の設置認可の望ましい在り方について話し合った。
 冒頭、文部科学省から、大学等の設置認可の在り方に関する各界の提言や海外の動向について説明があった。これまでも大学等の設置認可については審査期間の短縮や手続きの簡素化などが行われてきたが、大学の学部や学科の新設・改廃に関して認可制度を弾力化を求める声が出ているとして、今年三月に閣議決定された「規制改革推進三か年計画」で、大学の学部の収容定員の範囲内における学科の新設・改廃および学科定員の変更が、大学の主体的な判断で機動的に行えるよう、届け出制の導入を含め、現在の認可制を改めるべきだとの提言などがあることが報告された。海外の動向については、特に欧米では認可制度とともに大学評価制度が定着している傾向が見られることを説明。一方、これまでかなり厳格な認可制度で運用してきたわが国では、大学評価は始まったばかりで、今後の定着が課題となっているとの報告があった。
 その後、大学等の設置認可の在り方をめぐって委員間の自由討議となった。
 黒田壽二・金沢工業大学学園長は、学校法人(私立大学)の設置には、ヒト、モノ、カネが必要なため、もう少しシビアに認可の是非を検討すべきだと指摘。現行の仕組みでは、経営が成り立たないのに認可されてしまう恐れがあるとした。荻上紘一・東京都立大学長は、大学設置・学校法人審議会委員としての経験から、認可申請の中にはこれで教育の質が保証できるのかと思わざるを得ないケースもあるが、結果的に認可せざるを得ない、と述べた。中嶋嶺雄・前東京外国語大学長は、経営危機がささやかれる大学や国立大学の統廃合の動きがある一方、新設大学の認可が続いていることを挙げ、設置認可の全体像を見直す必要があるとした。また、外国の学校法人や株式会社による大学設置といった、設置形態の見直しが今後起きる可能性についても指摘した。島田{Y子・文京女子大学長は、近年の傾向として、一つの県内であっても同じような性格の学部を持つ大学の新設が相次ぐといったケースが見られるとし、適正配置や学校法人同士の合併について現実的に考えていかなければならないと問題提起した。関根秀和・大阪女学院短期大学長は、第三者評価を含めて大学評価は途上にあるが、チャーター時の質的保持のラインを維持する方向を考えていく必要性を指摘した。
 このほか、猪口邦子・上智大学法学部教授は、大学設置に際して、公共性や社会倫理に反するようなプロセスがあった場合、行政がそこに介入できる仕組みをつくるべきだと提言した。まず、現在ある大学に関係した規制自体が順守されるべきだとの立場からの意見もあった。山崎正和・東亜大学長は、収容定員を大幅に超過して学生を入学させている大学があることを挙げ、教育は市場原理になじまないが、これはいわば「不当競争」だと指摘した。


【教育制度分科会】

教養培う体制の充実
読書指導充実など答申の骨子案討議


 中央教育審議会の教育制度分科会(分科会長=鳥居泰彦・慶応義塾学事顧問)は、十月十日、東京・虎ノ門の文部科学省分館で第八回会合を開き、これまでの審議内容を中心にワーキンググループ(六人の委員・臨時委員で構成)が作成した答申の骨子案について討議した。
 「新しい時代における教養教育の在り方について」と題するこの骨子案は、(1)今なぜ「教養」なのか(2)新しい時代に求められる教養とは何か(3)どのように教養を培っていくのか、の三章構成で、このうち教養を培う具体策を記載した第三章には、初等中等教育段階までの教養教育のあり方や、大学入試の見直しによる初等中等教育と高等教育の接続の改善、高等教育段階における教養教育のあり方、さらに生涯にわたり教養を培っていくための方策が盛り込まれている。
 教養の定義に関しては、「新しい時代に求められる教養を構成するもの」として、知識のほか規範意識や倫理性、バランス感覚などの感性、身体的能力や精神的な能力などを挙げ、また日本人としての思考や行動の規範となり、日本人としての教養の教育の基盤を形成している民俗文化や習慣、伝統行事等の重要性を再認識すべきと指摘している。特にグローバル化時代に生きる世界市民の教養として他者に対する理解、宗教に関する理解は不可欠とし、さらに外国語によるコミュニケーション能力の必要性を強調している。
 こうした教養を培うために初等中等教育段階では、基礎・基本の徹底のためのきめ細かな指導体制の充実(基本的な事項についての反復練習、個別の家庭学習課題の設定、放課後の個別指導や補習など)、読書指導の充実(朝の十分間読書など)、体験的な活動の充実を通じた学ぶことへのモチベーションの向上、世界の宗教等に関する平易な解説資料の作成・活用等、教員の社会体験研修の大幅な拡充等研修の充実、評価等の促進などを提案している。
 初等中等教育と高等教育との接続では、いたずらに断片的な知識の多寡を問うような大学入試が教養教育を難しくしているとして、各大学が入学者選抜に際してアドミッション・ポリシーを確立、それに基づく適切な評価を行うなどの改善を求めている。
 高等教育段階における教養教育に関しては、学生の価値観の形成を目的とした授業科目の開設などカリキュラム編成の改善、きめ細かな指導(少人数教育、オフィス・アワー、アドバイザリー制度、チューター制度、TA等)などの教育方法等の改善、教員の積極的な取り組みを促す仕組みの整備、教養教育の改善・充実のための大学間の連携、外部資源の活用、異文化との交流の機会の拡大などが必要としている。生涯にわたる教養を培っていくための方策に関しては、学んだ成果を生かして社会に参画するための仕組みづくりや多様な学習機会の充実などの実現を求めている。
 こうした骨子案に対して委員からは、「(骨子案は)インパクトがない。その要は何か議論が必要だ。私は国語教育の圧倒的充実だと考えている」「自己責任をもう少し書いたほうがいい」「マナーはぜひ身に付けなければ」「骨子案を人間の成長を中心に書けないか」「教養は目に見えないインフラだ」「教養は国の防衛力になる」など意見が出された。今後はワーキンググループで骨子案を修正、分科会での審議を深めていく。また十一月一日の中教審総会にも審議状況を報告する。早ければ年内に遠山大臣に答申する。
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