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記事2023年3月23日 2607号 (6面)
福井工業大学の取り組み
最先端の知識・技術で課題解決に取り組む
FUT未来ロボティクスセンターを設立

 福井工業大学(福井県福井市)は4月1日、新たに「FUT未来ロボティクスセンター」を設立する。福井から宇宙にわたるさまざまな社会課題を最先端ロボティクスによって解決することを目指す。


 日本は急速な少子高齢化や頻発する災害、環境問題に直面しており、福井県でも幸福度日本一と評されるものの、若者を中心とした人口流出によって、農林水産業における人手不足の解消や地域の活性化が求められている。


 一方、同大学では、福井県が高い技術力を有する「ものづくり」が盛んであり、それを基盤とした技術革新でさまざまな分野の課題を解決できると考えている。


 こうしたことから、同大学では新センターを設立。地域に貢献し、社会で活躍するエンジニアを育成するとともに、地域、学生、教授陣らが一丸となって課題解決に向けて取り組むことにした。同大学が持つ農水分野のロボティクス(ロボット関連の知識や技術の総称)や、自動車に関する先端的な研究・技術を福井県の持つ「ものづくり」技術と融合させ、地域社会だけでなく、地球全体の発展に貢献していく。


 同大学の工学部機械工学科は1965年の開学から約60年間、学生たちに「ものづくり」の知識や技術を教育してきた。今回の同センターの立ち上げに際しては、同学科の教員を中心に最先端研究者を集める。


 現在、同大学で研究中の主なテーマとしては(1)農業支援(2)災害対応(3)宇宙技術などがある。(1)については、農作業時間の大部分を占める草刈りの負担を軽減することを目的に草刈りロボットを開発している。安全性の高いバリカン型と、高い刈り取り性能を有して刈り取り後の回収も不要なフレイル型の2種類の草刈り機構を備えており、全電動式で、エンジン式と比べ騒音も少なく、CO2も排出しないため、環境にも良い特徴がある。


 (2)では、救助支援型担架ロボットを開発。同ロボットは担架の上下面に取り付けたクローラを同時に回転させながら、要救助者の下に滑り込ませることで、身体を持ち上げずに担架に乗せることができる。下側のクローラだけを動かすことで階段等の昇降も可能。負担なく救助および搬送を行うことができる。消防隊員のレスキューツールの一つとして実用化を目指し、研究を進めている。


 (3)では、将来的な月移住の際に必要となる居住空間の建設等のため、月面のレゴリスと呼ばれるサラサラの砂で覆われている土壌で掘削作業を行うことができるロボットの研究開発を行っている。


 同大学では、2019年に設立したAI&IoTセンターと新センターが強固に連携を取ることで、高度で親和性の高い革新的なシステムを開発する。また、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と同大学が共同研究に取り組む「ふくいPHOENIXハイパープロジェクト」と連携し、月面に到達した際に必要となるローバー(探査車)などの開発も積極的に推進し、それらの商品化や管理を福井県下の企業に依頼することで、地域社会の活性化を図る。


 さらに、同大学が2022年に設立したまちづくりデザインセンター、ウェルネス&スポーツサイエンスセンターと新センターが連携し、広く、深く地域社会とつながり、人々の役に立つロボットの開発を行い、次世代の人材を育成する。


 2月28日には同大学で新センター設立に当たって記者会見を開催。掛下知行学長は「『チームFUT』として、これからも地域と一体感のある大学”“時代を先取りした大学として、時代と共に進化し続ける」と意欲を示した。


 新センターの岩野優樹センター長(工学部機械工学科教授)は「当センターの取り組みによって、多くの人々を笑顔にできるよう、精いっぱい頑張りたい」と話した。


左から、池田岳史副学長、掛下学長、岩野センター長、土屋高志副センター長


環境にも良い草刈りロボット

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