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記事2023年2月13日 2603号 (6面)
国立音楽大学の取り組み
4月に音楽データサイエンス・コース開講
新しい音楽文化創造に向け研究推進

 国立音楽大学(東京都立川市)は4月から、データサイエンスを主軸に科学的な手法を取り入れて音楽分析を行う新コース「音楽データサイエンス・コース」を開講する。 同大学では、伝統的な音楽演奏、創作活動に加え、最新のテクノロジーと音楽の関係について、研究・教育を行っており、コンピュータを用いた芸術表現を追求する演奏・創作学科コンピュータ音楽専修では、プログラミングと録音、創作技術を一体として考える学際的な学びを実現している。


 また、古今東西の楽器を収蔵する楽器学資料館では、科学的なアプローチを含めた楽器の調査・研究を継続してきた。


 4月から開講する「音楽データサイエンス・コース」は、工学部などの理系の専門教育を受けた人材が担ってきたデータサイエンスの手法を取り入れながら、新しい音楽文化の創造のための研究を推進する。


 これまでデータサイエンスの分野では、特に音楽に関して、その論理的な裏付けに音楽的・感性的な専門知識を結び付けることができる人材が必ずしも十分ではなく、研究が進みにくい状況が続いていた。


 一方、音楽大学では、音楽について感性的な部分を論理的に言葉で表現し得る専門知識を有するものの、データ分析や数理サイエンスの知識を修得できる環境に乏しく、新たな研究の可能性に気付いていないこともあった。修得に長い年月を要する音楽の専門知識を持った学生が数理データサイエンスの基礎知識を身に付けることで、これまで音楽大学での研究では成し得なかった音楽的な裏付けを持ったデータ分析の研究分野を切り開くことが期待されている。


 また、演奏そのものを科学的な手法で分析する「演奏科学」についても取り扱うことで、演奏しやすい姿勢や効率的な演奏のための身体の動かし方などを含めて研究していく。


 同コースは3年次から履修できる同大学独自のプログラムで、履修生の専攻・専修を問わず、データサイエンスや科学的分析手法に興味のある学生はコース選抜試験に合格すれば誰でも履修することができる。


 コース科目では、AIの基礎知識から機械学習機能を利用した音楽のレコメンドシステムの開発、4年次には卒業論文の執筆や、企業でのインターンシップも想定している。


 現在、データサイエンスの手法を用いた研究は、同大学大学院では既に行われており、楽器のリードの良しあしについて、AIを用いて画像判定できるシステムの構築を目指している学生も在籍している。


 コース担当教員である音楽文化教育学科音楽情報専修の三浦雅展准教授は「本学では、音楽の専門的知識に裏打ちされた、高度な『音楽データサイエンティスト』を輩出すべく、社会のニーズに応えた教育を行っていく。進路としては、音楽情報産業、特に音楽配信や音楽データを扱う産業での活躍を想定している。大学院に進学して、さらに高度な音楽情報処理技術を学ぶこともできる」とコメントしている。


 また、「本学の教育理念で『良識ある音楽家・教育家を育成し、日本および世界の文化の発展に寄与』とあるように、音楽家の力が音楽情報分野で発揮され、文化の発展に貢献すべく、データサイエンスを基軸とした音楽情報の専門教育課程として今後の社会貢献を実現する」と意欲を示している。


 同大学が従来、導入しているコース制は将来のキャリアプランを見据え、専門性をさらに高める、あるいは専門以外のスキルを磨くための独自のプログラム。3年次から履修可能とし、意欲と能力に応じて学科、専修(専攻)によらず、どのコースにも挑戦できる。オペラ・ソリスト・コースやピアノ指導コースなど2022年度時点で30のコースがあり、2023年度から「音楽データサイエンス・コース」を加え31コースとなる。


データ分析の研究分野を切り開く


サーモグラフィーを用いた実験なども行う

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