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記事2023年1月23日 2601号 (6面)
横浜商科大学の取り組み
オンラインによって学生と地域・企業つなぐ
教育改革構想の一環で質の高い講義

 横浜商科大学(神奈川県横浜市)は2022年11月22日、商学部観光マネジメント学科の竹田育広教授の授業「料飲店のマネジメント」で、同大学初の試みとなる地域と教室間をオンラインで結んだ講義を実施した。この講義は同学科の教育改革構想に沿った取り組みの一環として行われたもの。当日は滋賀県甲賀市信楽町の滋賀県立陶芸の森から、信楽町で飲食店を経営している銀俵鰍フ能登正太郎代表取締役が観光地としての信楽の魅力と飲食店の経営について語り、学生との質疑応答も行われた。


 現在、同学科では「地域を読み撮る」ことを観光の新たな視点とした教育改革を構想している。


 観光とは「楽しみを目的とした旅」であり、観光主体(観光者)、観光客体(観光対象)、媒体(観光交通、観光情報など)から成り立っているという考えに基づき、観光ならではのアカデミックスキルを定義。文献から得ることができる「文字情報」と共に、都市や地域のフィールドワークから得ることができる「体験情報」を読み解く力を重視した教育を目指している。


 教室での対面式の講義やフィールドワークに加えて、講師が現地に出向き、遠隔でリアル配信する方式も取り入れ、今まで以上に質の高い講義を実施していく。


 今回のオンライン講義は、こうした取り組みの一環で、現代のフードサービスビジネスについて経済、経営、社会、環境といった多面的な視点から専門知識を学ぶ科目である「料飲店のマネジメント」の授業で実施された。同科目は食品産業、カフェ、レストラン経営など「食」に関わる業種・企業を進路として考えている学生や、飲食をメインとした観光(旅)に関心がある学生などが主に履修している。


 オンライン講義にゲストとして招かれた能登氏が経営する銀俵は信楽町で定食店「釜炊近江米 銀俵」とカフェ「山とおむすび 銀月舎」を営業。信楽焼の特製羽釜で炊き上げた白米をメインに、塩やしょうゆ、みそといった調味料にこだわった料理を提供している。


 講義では最初に、信楽町観光協会の動画を視聴し、街や観光情報について理解を深めた。滋賀県南東部の甲賀地方に位置する同町は日本六古窯の一つに数えられる。2017年に「日本遺産」に認定されている「信楽焼」で有名な陶芸の街であり、現在でも多くの窯元が軒を連ねている。信楽焼だけではなく、日本最古の銘茶である朝宮茶の産地で、自然豊かな古き良き街並みが残っていることなど、歴史ある街ならではの魅力を持っている。


 こうした信楽町で飲食店を経営する能登氏は「普段使っている食材が何からできているのか」「その食材が日本にあるにもかかわらず、輸入に頼るのはなぜなのか」といった食事におけるさまざまな矛盾に気付き、日本の食材・食文化の素晴らしさを伝えたいという思いから現在の仕事を始めたと説明した。


 さらに、同社では「作り手と使い手をつなぐこと」「食文化をひもといて新たに構成する」ことを使命としており、近隣の農家と連携して信楽近郊でとれた旬の野菜を提供していると話した。


 質疑応答では、学生からの「価格に相当する接客をどのように提供しているか」との質問に対して、能登氏は「自分が顧客だったら、どのようなサービスを提供されたいか、作業ではなくサービスにしようという二つのことを心掛けている。『熱いのでお気を付けください』『お待たせしました』などと伝えることで商品価値を高めるサービスにすることができる」と回答した。


 「飲食店を経営する上で一番大切なことは何か」との質問に対しては、「作り手と使い手をつなぐという役割を担う上で、化学調味料を使わず、良い素材、安全な食材を使って『おいしい』を生み出すことが大切になる」との考えを示した。


 同学科では、全国に観光地のピーアールに困っている地域が多く存在していることから、今後も自治体や観光関連企業と連携しながら、学生と地域・企業をつなぐ有意義な講義を展開していくことにしている。


熱心に聴講する学生たち


「山とおむすび 銀月舎」のランチセット

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