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記事2022年9月13日 2589号 (6面)
大谷大学の取り組み
地域の魅力再発見へ茶葉でビール共同開発
学まちコラボ事業に2年連続で認定

 京都市北区中川学区が抱える課題や地域の今後を考えることを目的に大谷大学(京都市北区)が実施している「中川学区の暮らし再発見お茶によるビールプロジェクト」が「学まちコラボ事業(大学地域連携創造・支援事業)」に2年連続で認定された。


 同事業は、京都市と公益財団法人大学コンソーシアム京都が大学・学生と地域の「コラボ」で京都の街づくりや地域の活性化に取り組む企画・事業に支援金を交付し、学生主体の地域活動を支援するもの。


 中川学区は京都市北部の山間地域に位置し、「北山杉」で有名な林業で栄えてきた地域。住宅様式の変化に伴い、林業が衰退し、若者の流出で少子高齢化が進んでいる。交通不便地域にあり、暮らしにくく見えるものの、同大学では地域に残る伝統や文化の積極的な発信、地域の資源を活用した新たな生活文化創造のきっかけづくりに取り組みたいと考え、「中川学区の暮らし再発見」を進めている。


 中川に自生する茶の木の一部は日本最古の茶園がある高山寺の茶の木とほぼ同一種であることが分かり、地域住民が「あるがまま」「自然のまま」の茶葉という意味から「まんま茶」と名付けた。


 同大学では、高山寺に近く、歴史的に関わりの深い中川学区での「まんま茶」の発見は地域と寺のつながりを深める証と考え、中川の暮らしに根差した「まんま茶」を復活させるため、キャンパス内で栽培するなど、学内で中川の歴史や伝統を学ぶ機会も作っている。


 このプロジェクトでは、社会学部コミュニティデザイン学科の志藤修史教授のゼミ学生が中川学区の住民と共に茶葉を収穫し、社会福祉法人菊鉾会の醸造部門であるヒーローズが製造を担い、農福学連携で「まんま茶」を原料に使用したクラフトビール「京都・中川まんまビーア!」を共同開発した。


 2022年度は24人の学生が同プロジェクトに参加し、5月に中川で茶葉を収穫した。学生は蒸す→揉む乾燥焙煎という工程も担い、コロナ対策として、少人数でも効率良く作業が進むように今年度から「蒸す」「煎る」を同時に行い、作業時間を短縮した。完成後は学生が販売促進や情報発信にも取り組む。


 学生は毎月第2水曜日に中川社会福祉協議会「健康ふれあいクラブ」にも参加し、クイズ大会を企画するなど、高齢者との交流を通じ、地域の学びを深めている。


 ヒーローズは同大学卒業生の松尾浩久さんが中心となってビールブランド「西陣麦酒」を展開。「自閉症の方とともに」を就労支援のコンセプトに製造を行っている。ヒーローズの厚意で販売益の一部は学生の中川での活動費用に還元される。


 同プロジェクトの学生代表である徳山佳哉さんは「このビールが中川を離れた若い人たちにとって地域の魅力を再発見するきっかけになってほしい」と話す。また、「将来的には、大学で学んだことを生かし、地元を盛り上げる存在になりたい」と意欲を示す。


 なお、「京都・中川まんまビーア!」は公式サイト(https://nishijin-beer.com/beers/manmabeer)と、京都市内の数カ所の販売店で購入できる。


効率良く作業が進むように工夫した


農福学連携で共同開発したクラフトビール

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