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記事2022年3月13日 2572号 (6面)
玉川学園の取り組み
飼育したサンゴを伊江島の海に移植
長期プロジェクトで継続的に活動

 玉川学園高等部・中学部(東京都町田市)のサンゴ研究部(クラブ活動)・自由研究サンゴのグループは沖縄県伊江島海の会と連携し、伊江島産のサンゴを同学園内で約3カ月成長させ、1月28日、29日に伊江島の海に返すことに成功した。今回の移植成功は、向こう5年間に及ぶサンゴ養殖プロジェクトの最初の成果で、継続的な移植活動の他、長期的にモニタリングし、今後の成長を見守ることにしている。


 サンゴ礁の死滅や白化現象が国際的な環境問題の一つとなっている中、同学園では生徒たちが6年次の理科の学習で海洋環境を学び、サンゴの白化現象の生態系への影響を知り、自分たちにできることを考え、2011年に自由研究でサンゴの飼育を開始した。


 その後、個体の研究に加え、水質や海域の状況など多岐にわたる研究フィールドがあるため、文部科学省指定スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の課題研究の一つとして発展させた。


 2015年には、初めてサンゴを大きく成長させ、地元の海への返還に成功。その後もフィールド実習など幅広く活動し、「サンゴ飼育」研究を10年以上継続している。


 伊江島の漁業関係者の団体である同会でも周辺海域のサンゴ礁の保護が喫緊の課題であり、その対策として水産庁の水産多面的機能発揮対策事業なども活用して保護活動を展開している同会の活動に、同学園のサンゴ研究部と自由研究サンゴを指導する市川信教諭が新たなパートナーとして着目。日本サンゴ礁学会で知り合った水産土木建設技術センターの安藤氏を通じてアプローチし、教育連携が実現した。


 教育連携には、伊江島とサンゴ保護活動を展開する国際航業鰍ニ、同学園のサンゴ研究活動を支援する西松建設鰍煖ヲ力し、活動している。


 サンゴは2021年9月29日に空輸便で同学園に到着し、水槽に移された。水槽内の環境への適応期間を経て、同年10月14日にはサンゴ陸上養殖の第一人者であるネオウェーブ阿久根直之氏の指導の下、生徒たちがサンゴ株分け作業を行った。その後約3カ月間、生徒たちは繊細なサンゴの生育環境を維持管理するため、毎日水質とサンゴの状態をチェックした。


 その結果、株分けしたサンゴが土台を被覆し、枝も太く成長したため、海での生活に適応可能と判断した。移植作業は生徒たちも現地でサンゴを見届けたい思いがあったものの、コロナ禍の影響で同会が行った。


 同会は以前から地元の小学校とサンゴの移植活動を行う中で、一歩踏み込んだ飼育観察や研究を行う教育機関を探しており、全国でも数少ない生徒たちによるサンゴ研究体制(クラブ活動・自由研究)がある同学園を最適なパートナーとして期待している。


 市川教諭は「サンゴは教育素材としての可能性を秘めている。プロジェクトを通して多様な考え方や幅広い視野を身に付けてほしい」と話す。


 生徒たちは「育てたサンゴを自分たちの手で伊江島の海に移植することこそが目標。来年こそはその目標をかなえたい」「これからも経験を積み重ね、サンゴ移植や研究を充実させたい」とコメントしている。


ネオウェーブ阿久根氏との株分け作業


伊江島の海に移植したサンゴ(写真提供:伊江島海の会)

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