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記事2022年10月3日 2591号 (6面)
北星学園大学の取り組み
環境経済学的な視点から循環型社会を構築
苫小牧港の海洋ごみ回収計画を推進

 北星学園大学(北海道札幌市)経済学部環境経済学ゼミナールはこのほど、「Seabinから始まる海のお掃除大作戦」プロジェクトを立ち上げた。北海道初の試みとして、苫小牧市の苫小牧港勇払マリーナに海洋ごみ回収装置「Seabin」を設置する計画で、現在、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」(プロジェクトページ:https://camp-fire.jp/projects/view/607427)で支援を募っている。


 環境経済学を学ぶ中で海洋問題に興味を持った同ゼミナールの学生は、不法投棄やマイクロプラスチックによる海洋生物や人体への悪影響など、数多く存在している海洋汚染を北海道から解決しようと考え、北海道初となる「Seabin」設置を進めている。


 「Seabin」は、オーストラリア発の海洋プラスチックごみ回収装置で、設置するだけで24時間365日、自動で海洋ごみを回収する。回収後は定期的にキャッチバッグにたまったごみを集めるだけで、時間と手間をかけずにきれいな環境を維持することが可能になる。プラスチックごみ以外の海洋ごみや海水に浮いた油も回収できる。


 同プロジェクトを同市で実施する理由として、リサイクル事業が活発で環境先進自治体である一方、苫小牧港周辺は不法投棄やポイ捨てなどによって、海洋汚染と景観悪化が進行していることを挙げる。


 同ゼミナールの学生は「多くの人がこの現状を認識しておらず、海洋汚染問題そのものへの理解度も低い。海洋汚染は日常生活で生じる廃棄物が原因で引き起こされることが多く、社会生活と密接につながっていることを認識してもらう必要がある」とし、海洋ごみを有効活用して、マイナスの価値をプラスの価値に変換することで、循環型社会の実現に大きく近づくと考え、リサイクル事業が活発な同市で取り組むこととしたという。


 同プロジェクトでは、回収した海洋ごみは分別し、その組成調査と含有物の分析を行う。分析後の海洋ごみは廃棄物発電や木質発電に用いるなど、資源循環を見据えた有効活用を行う(具体的な活用方法は現在検討中)。


 8〜11月にクラウドファンディングを実施して、Seabinを購入する。12月にSeabinのプレ稼働(約1カ月)を行った後、2023年にSeabinを本格稼働させることにしている。


 同ゼミナールの学生は同プロジェクトを通じて、海洋ごみ問題を道内の多くの人々に知ってもらい、廃棄物の排出責任や3R(Reduce、Reuse、Recycle)の重要性への理解を深めていく。


 また、Seabinの設置によって、きれいで美しく、「また来たい」と思ってもらえるような海にするとともに、Seabinで回収した海洋ごみというマイナスの価値をプラスの価値に変換する環境経済学的な視点での研究を行い、循環型社会の構築を目指す。


 クラウドファンディングについては、目標金額に満たない場合も計画を実行し、リターンを送付する。リターンは感謝状や海洋ごみの調査報告、ステッカーなどとしている。


Seabin(画像出典:Seabin海洋プラスチックごみ回収装置兜ス泉洋行https://seabin.co.jp)


苫小牧港勇払マリーナ

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