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記事2021年4月13日 2541号 (6面)
金城学院大学の取り組み
収入を失ったカンボジアの女性を支援
支援金や高校生も協力してアクセサリー制作

 金城学院大学(名古屋市守山区)の佐藤奈穂・国際情報学部准教授のゼミでは、カンボジアの貧困地域に住む女性を支援するため毎年夏にゼミの学生が現地で一緒にアクセサリーを制作する活動を2015年から始め、交流を続けてきた。しかしコロナ禍で海外との往来が不自由になり、学生が現地を訪れることもできなくなったのに加え現地の女性も観光収入が途絶え失業状態に。そこでまず2020年5月から9月にかけ支援金を集め現地に送付、10月からはカンボジアの女性に代わって日本で高校生にも協力してもらい新作のアクセサリーを制作し販売した。状況が大きく変わった中でも違う支援方法を見つけて、学生たちは活動を続けている。 


 「DIAGIRL(ディアガール)」と名付けられたこのアクセサリーブランドは、学生が企画・デザインを手掛け、観光地のアンコール遺跡群があるカンボジア北西部の都市シェムリアップ近郊の農村で暮らす女性と共同で作られる。名古屋市内でのイベントや同大学の文化祭、ディアガールのサイトなどで販売し、収益をカンボジアの女性たちに還元する。


  現地に行くのは現地が農閑期で学生の夏休み期間となる9月の1週間ほど。一見活動内容が希薄なようにも映るが、これは、カンボジア人が一つの仕事に長く就かず状況に応じて短期間にさまざまな仕事を組み合わせて生計を立てるという習慣があること、他方で大学生が本格的に国際協力を行うには多くの制約があること、こうしたことから期間限定で支援活動を行うことで大きな成果は得られなくとも互いの環境下で最大限の効果を生み出せる、という佐藤准教授が提案する国際協力の新しい形によるものだ。 


 昨年の春以降、渡航制限で観光客は激減しホテルや土産物店などの従業員は突然解雇されることに。福祉制度が充実していないため最低限の生活も保障されず、観光産業に従事していた現地の女性たちも現金収入が絶たれ苦しい状態となった。そこで現役生、卒業生双方のディアガールのメンバーが「今できることは何か?」と議論し、緊急支援金を届けるプロジェクトを立ち上げた。まず5月にメンバーが出し合って30万円を集め、カンボジア人コーディネーターと現地在住の日本人を通して、現地の女性に1人当たり約1万7千円(月収とほぼ同額)を直接届けた。そのときの様子をズームで中継してもらい、そのうちの一人の母親は「全く仕事がなくなった上子供が病気となり手術を受けたばかりだ。受け取ったお金は借金の返済に充てる」と渡したお金を握りしめ涙ながらに語った。 


 その後第2弾としてクラウドファンディングで支援金を募ることとし、支援の返礼品としてカンボジアの土産やディアガールのアクセサリーを用意した。目標金額を60万円としていたがこれを5日で達成、8月の終了時点で204人から目標の倍以上となる131万円が集まった。 


 そして、現地に行けなくなってもアクセサリーを作り支援を続けようと、9月に地元愛知県内の女子高校生(光ヶ丘女子高校・同県立安城高校)がボランティアで参加し、ピアス(イアリング)やネックレスなど、2020年も新作アクセサリーを制作。10月から販売し、当初の売り上げ目標50万円を達成した。 


 支援活動は今年も続き、3月にアクセサリーの販売収益を元にした第3弾の支援金が渡されたほか、4月の新年度からは第7期生が活動を開始。渡航が困難な状況が続く中新たな取り組みとして、現地の苦境に立たされている旅行会社と協力し現地の人たちにもアクセサリーを作ってもらい旅行会社も収益を上げてもらうようにするのに加え、技能実習生として来日するカンボジア人に対し孤立を防ぎ快適に暮らしていけるようにするための支援も行っていく予定という。


支援金を届けた現地の人と ズームで交流


アクセサリー作りには高校生も協力した


今年度から活動を始めた 第7期のメンバー

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