科学技術・学術審人文学・社会科学特別委

人文学・社会科学研究におけるAI利活用をテーマに
文科省が展望示し、研究者から聴取
文部科学省科学技術・学術審議会学術分科会は昨年12月26日に第29回人文学・社会科学特別委員会(主査=大橋弘・東京大学大学院経済学研究科教授・副学長)をオンラインで開催した。
初めにこれまでの審議やヒアリングから文科省が人文学・社会科学研究におけるAIの利活用の展望について整理し、報告した。
AIの導入には透明性、信頼性の確保に課題があるが、人文学・社会科学は結論に対して意味や解釈を重視する学問であるため、AIの出した結論を知見で解釈し妥当性が検証できる。よって我が国の人文学・社会科学の知を適切にデータ化し、AIに正しく学習・活用させるデータインフラの構築がこの課題の解決につながる。
人文学・社会科学の分野で、人間では処理が不可能な膨大なデータをAIの活用で解析できれば、プロセスが高速化、効率化し、研究がより精緻化され、質も向上する。また、推論、仮説立てをAIの補助で行うことで新たな知が創出できる。さらにこれまでつながることのなかった他分野の知見や研究者がAIによって提示されれば、研究者の想像力の発揮、新たなネットワークの構築に利益をもたらす―といった内容。
また、データインフラ整備はわが国の人文学・社会科学の知の蓄積・活用・発信を推進し、物理的にアクセスが難しい外国からも日本研究にアクセスしやすくなり、分野の研究にもたらすメリットは大きい。
これらのことを考えると、AIの技術進展と課題解決のコンビネーションは、人文学・社会科学の研究力を強化できる―と指摘している。
続いて人文学研究におけるAIの活用について2人の研究者が発表を行った。筑波大学人文社会系准教授の宮川創氏が、古代エジプト語の最終段階となるコプト語研究でのAI活用について報告した。コプト語の完全な形で残る文献は稀で、散在している。宮川氏らは文献のデジタル化・AI分析により、脆弱な原典を保全し、文献の断片の自動接合や欠損文字の復元予測を行っている。
デジタルヒューマニティーズ(人文学にデジタル技術を適用・応用する研究)にAIを加え、デジタル化されたテキストデータベースを瞬時に検索し、関連文献を収集できるシステムを開発した。タグづけなどを自動化させ、構造的な分析を可能にする。分析手法を共有し、数千、数万の文書の一括処理が可能になったが、専門性の高い分野でのAI活用にはハルシネーション(事実に基づかない情報を生成する現象)、誤訳の障壁が大きく、検証プロセスの導入が必要になると説明した。
次に東京大学大学院人分社会系研究科准教授の大向一輝氏が人文学とAIの人材育成について報告した。
同大学院人文社会系研究科では、同科の全ての専攻に所属する大学院生が「デジタル人文学プログラム」を履修できる。人文社会系の研究では、デジタル技術の分析・手法、デジタル化のプロセス、AI関係の学びが欠かせなくなってきている。学生が情報技術を習得するには時間を要し、研究対象に向き合う時間を圧迫、技術の急速な進展で習得した技術が無価値になるリスクがある。しかし、AIの進展で、技術を学ぶ前に言語による指示でAIを気軽に使え、推測、要約、抽出など知的な活動が行えるようになり、習得時間などの課題をクリアできるようになったと説明。課題には情報学と人文学にはAIへの研究予算の規模の違いがあり、人文学と情報学の相互理解を目的としたプロジェクト型研究の場の設定が必要とした。
続いて行われた委員間の意見交換では、「レアな言葉のつながりをAIに学習させるのは研究で重要であるが、AIに何を学習させたのか分からないのが問題。オープンなデータで作るAIの必要性がある。AIの出力した結果だけを共有するのではなく、AIを作る側と使う側の積極的なコミュニケーションが重要」などの意見が出された。


