近畿大学の取り組み

だし専門店京都離宮とだし茶漬けを共同開発
健康増進につながる朝食摂取可能な食環境へ
近畿大学農学部(奈良県奈良市)食品栄養学科准教授・森島真幸ゼミは、飲食事業などを展開している㈱プレメーズ(京都府京都市)が経営する「おだしのテーマパーク 京都離宮~おだしとだしまき~」(京都離宮、同)と、だし茶漬け「おだしとごはん」を共同開発した。
森島ゼミの4年生4人は、朝食欠食率や食事摂取による健康問題について卒業研究に取り組んでいる。令和6年の農林水産省の食育に関する意識調査によれば、20~39歳の若い世代で「ほとんど朝食を食べない」と回答した人の割合は18・7%で、全世代の10・1%を上回っている。
朝食を食べるためには、「朝早く起きられること」「自分で朝食を用意する時間があること」「夜遅くまで残業するなど労働時間や環境に無理がないこと」を条件に挙げた人の割合が高いことから、低い朝食摂取率の原因として、若い世代特有の時間的制約や生活環境が影響を与えている可能性があると考えた。
令和6年度に同学科が農学部生257人を対象として実施した調査研究では、ほぼ100%が朝食摂取の重要性を認識しているにもかかわらず、朝食欠食率は29・7%となっており、認識してはいるものの、実際の行動には結び付いていないことが明らかになった。
こうした背景から、個人の意志だけで健康問題を解決するのは難しいと考え、朝食を摂取するきっかけを提供するための取り組みとして、だし茶漬けの開発を企画した。
産学連携包括協定を締結している京都信用金庫(同)と同大学が令和5年6月に開催した個別相談会で、京都離宮が同大学との研究開発を希望し、卒業研究で朝食欠食率や食事摂取による健康問題について研究している森島ゼミと商品を開発することになり、忙しい朝でも、手軽に食べることができ、おいしく栄養を摂取できるように、商品はだし茶漬けに決定した。
京都離宮は令和4年、京都市伏見区に日本初のおだしのテーマパークとしてオープン。「人生を変えるおだし生活」をコンセプトに天然素材にこだわっただしパックやだしを使ったスイーツなど幅広い「おだし商品」を展開している。
学生は、京都離宮のだし粉末や乾燥野菜などを用いて、五味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)に、香り、色、食感といった嗜好的な要素を加え、試行錯誤を重ねて「おだしとごはん」を完成させた。
だし粉末をベースとして塩分濃度を0・8グラム(実測値)に抑えることで、類似商品と比べて約47%減塩したほか、小松菜、ネギ、ニンジン、ゴボウといった乾燥野菜を入れることで、不足しがちな食物繊維を摂取できるようにした。
パッケージデザインも学生が手掛け、若者が手に取りたくなるようなシンプルなデザインになっている。
同大学では今回の商品開発を手軽に健康増進につながる野菜や朝食の摂取が可能な食環境づくりの普及啓発につなげることを目標にしている。
「おだしとごはん」は2月10日から、京都離宮オンラインショップ(https://kyotorikyu.shop-pro.jp/)、ファミリーマート近畿大学奈良キャンパス店、㈱近大アシスト東大阪営業所などで販売。価格は292円(税込み、1食入り)。