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記事2024年2月23日 2638号 (1面) 
第9回中教審質の高い教師確保特別部会開催
教師の処遇改善を検討
給特法など3法課題に

文部科学省の中央教育審議会は、2月7日に第9回目の初等中等教育分科会質の高い教師の確保特別部会(部会長=貞広斎子・千葉大学教授)を対面とウェブ併用で開催した。初めに文科省の担当者から、教師の処遇改善を検討する上で参考となる、教員の給与に関する法律、制度と教員の勤務実態の説明があった。


教員の給与に関する主な法律は三つ。人材確保法では義務教育の教員の給与は、学校教育の水準の維持向上のために一般公務員の給与水準に比較して優遇されなければならない、としている。また教育公務員特例法では公立小学校等の校長、教員の給与はその職の責任の特殊性に基づき条例で定める、とされている。


給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)では、校長、副校長、教頭を除く教員の月給の4%を教職調整額として支給し、時間外勤務手当、休日勤務手当は支給しない、としている。


地方公務員の一般行政職の給料表は職務の責任などに応じて10級に区分され、級の中は、さらに号で分けられている。一方で教員の給料表は一般的には5段階の級が設定されている。


人材確保法の趣旨により、今までに教員の給与は3次にわたり合計25%引き上げられたが、一般公務員の職務級の追加などにより、現在は一般行政職の給与水準と比べて0・35%しか優遇されていないのが実情。


令和4年度の教員勤務実態調査では、全ての職種で平日・土日とも前回調査よりも在校時間は減少したものの、依然として長時間勤務の教師が多いという結果が出た。


1週間当たりの在校時間を「50時間未満」「50時間以上60時間未満」「60時間以上」の3グループに分け、業務時間別の在校時間(平日)を比較したところ、小学校では授業準備、学校行事、中学校では部活動、授業準備、学年・学級経営で大きな差を生じていた。


今よりも業務時間が短縮されたら空いた時間をどう使いたいか、という問いには、プライベートの充実に充てたいとする意見が過半数を超えたが、更なる授業準備や教材研究などに充てたいとの回答が小学校で約47%、中学校で約39%あった。


続いて、令和4年に設置された「質の高い教師の確保のための教職の魅力向上に向けた環境の在り方等に関する調査研究会」で出された論点を基に、同特別部会が処遇改善の在り方の論点として、高度専門職である教師の給与制度の見直し、プライベートとの切り分けが難しい業務の特殊性、複雑化、多様化する学校の課題への対応をどう考えるか、などを提示した。


文科省の説明を受けて行われた論議では、高度専門職としての教師の仕事には、「高度専門職であることの可視化が必要。キャリアパスの仕組みをつくる」「高度専門職には裁量があり、自発性、創造性が求められるので、些末な管理事務でそれが妨げられてはいけない。高度専門職にポイントを置いた職務と処遇の改善が必要」などの意見が出された。給特法による給与体系に関しては「民間企業で裁量労働で働く人には、労使協定などで相応の時間外労働時間を組み込んで裁量労働手当が支払われている。また、全員参加、会社の命令で実施される研修には賃金が支払われるようになってきた。教師の仕事も民間企業との整合性に努めなければいけない」との発言があった。


雇用形態の違いによる処遇の差には「教員不足の課題は講師不足に起因し、非正規雇用の教師の処遇の方が問題は大きい。処遇改善はどこに重点を置くかを考えたい」「短時間なら働けるという人もいるので、フルタイム、新卒採用、終身雇用を前提としない非常勤の教師の俸給表を別枠で設けたい」など、非正規で働く教師の処遇改善を求める意見も聞かれた。


そのほか「高度専門職としてもっとスキルを身に付けたいが、時間がなくてできない。学び続ける環境の確保のためには定数の改善まで踏み込んだ方策が必要」との提案も出された。


また、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)で、日本が世界的に高い結果を出していることをもっとアピールし、教育の成果を社会に認知してもらい、教師の仕事の魅力を高めることも重要だ、という発言もあった。


第9回質の高い教師の確保特別部会
(2月7日、文科省での対面+WEB開催)

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