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全私学新聞

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記事2018年12月3日 2461号 (1面) 
私学関係予算の拡充等を要望
私学振興会議を開催 全私学連合
私学を取り巻く状況等説明
自民党文教関係議員と意見交換

鎌田薫・全私学連合代表(日本私立大学団体連合会会長、早稲田大学前総長)と河村建夫・元文部科学大臣(衆議院議員)が共同代表を務める「私学振興協議会」が11月30日、都内のホテル開かれ、2019年度政府予算案編成の大詰め段階を前に、私学側から私立学校関係予算の拡充等が要望され、私立学校が直面する課題等について意見交換が行われた。同協議会は、全私学連合を構成する幼稚園から大学までの私学5団体代表と、与党・自由民主党の現職の文部科学部会長、文部科学(文部)大臣経験議員、文部科学(文教)部会長経験議員が今後の私学振興の在り方等を協議する場。


冒頭、鎌田共同代表、河村共同代表、赤池誠章・文部科学部会長があいさつ。その後、鎌田氏が全私学連合代表として2019年度税制改正要望を、続けて日本私立大学団体連合会の会長として2019年度私大関係予算要望の内容や私大が置かれている状況等を説明し、理解を要請した。  税制改正に関しては2点を要望。そのうち、1点目は、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の拡充」で、具体的には2018年度末の適用期限を廃止して、制度の恒久化を図ること、博士課程の入学者の約3割が30代であることから30歳までという現行の年齢制限の撤廃、直系尊属(祖父母等)以外からの贈与も贈与税非課税措置の対象とすることを要望した。同制度に関しては、近年、年に約2万件の新規信託があり、2013年度の制度創設以降、累計19万件の信託、信託設定額約1兆4千億円の実績がある、という。  また、2点目は、「日本私立学校振興・共済事業団への指定寄附金の範囲の拡大(若手・女性研究者奨励に係る寄附の追加)」。これが認められると企業等が出す寄附金は全額損金算入が受けられ、民間から若手・女性研究者への大きな支援となる。一方、私大等関係予算への要望について鎌田会長は、経常費補助の割合が低下を続け、ピーク時には29・5%だった補助割合が10%を割り込む状況となり、国立・私立大学間では13倍もの公財政公的支出の開きが生じていること、施設設備補助は8年間(平成2229年度)に2分の1に減少したこと、消費税の税率が10%となると、授業料はそもそも非課税で転嫁できないため、収入を増やすことが難しく、国立大学進学志向がさらに過熱すること、私大としては低所得層の子弟のため年間90億円もの独自奨学金を用意しているが、本来は社会全体で支えるべきものを学生間の所得移転で賄うという異常事態となっていることなどを指摘、国民全体の知的水準の向上、日本の経済的競争力向上のため公的支援の強化などを訴えた。  日本私立短期大学協会の関口修会長(郡山女子大学短期大学部理事長・学長)は、私立短大が日本全国の地方に点在し、地域に必要な人材育成や小さな町村との連携を進めるなどして地方創生に大きな役割を果たしていることから、そうした観点で私立大学等経常費補助の特別補助に新たな補助システムを設けることの検討を要請した。  日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長(富士見丘中学高校理事長・校長)は、改めて教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の恒久化を要請、また新たな教育、ICTを活用した教育が求められる中で、学校に関して通信回線料の割引や無償化、学校施設の耐震化への引き続いての公的支援等を要望した。  日本私立小学校連合会の小泉清裕会長(昭和女子大学大学院文学研究科特任教授)は、公立小学校が大きく学校数を減らしている中で、私立小学校はこの20年間に60校増えたことなどを紹介した上で、教員の資質向上のため、研修事業への援助の拡充、子供の体力を育てるため幼稚園と同様に大型遊具に対する公的支援の創設、外国語授業に関しては公立小学校を大幅に上回る授業を行っていることから、私立小学校での外国語教育や外国語活動の実施方法や教材についての特別な配慮を要請した。全日本私立幼稚園連合会の香川敬会長(鞠生幼稚園理事長・園長)は、教育の無償化に際しては、幼児教育の質の担保の重視、議員立法で提出されている幼児教育振興法の1日も早い成立等を要請した。


 


教育の本質的議論を求める意見も


 


こうした私学側からの要望や状況報告等に対して、出席の議員からは意見や質問等が相次いだ。初めに赤池文部科学部会長が税制改正や2019年度政府予算案編成のスケジュール等や教育の無償化に関しては来年の通常国会に新法を提出する予定等を説明。  続いて伊吹文明・元文部科学大臣(衆議院議員)は公立学校に関する働き方改革の議論等を紹介した上で、私立学校の現状や今後を尋ねた。また馳浩・元文部科学大臣(衆議院議員)は、衆議院文部科学委員会で議員立法7本が順番待ちとなっていること、与野党のほぼ合意が得られた法案から審議する見通しなどを説明。木原稔・元文部科学部会長(衆議院議員)は教育資金の一括贈与の非課税措置では年齢制限の引き上げの重要性を強調。松野博一・元文部科学大臣(衆議院議員)は、外国人留学生のわが国での就職の促進で、私学振興協議会、短期大学振興議員連盟、専修学校等振興議員連盟の3団体が9月に法務、厚生労働、文部科学3大臣に、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の対象範囲の拡大や運用の弾力化、留学修了者が大企業のみならず中小企業でも就労できるよう、留学生の在留資格変更手続きに係る中小企業の提出資料を大企業並みに簡素化することなどを申し入れたことを報告。現在、国会で外国人材の受け入れ拡大が議論されているが、留学生には日本語能力や日本文化に対する理解があり、専門教育を受けていることから、外国人留学生のわが国での就労をさらに進めていきたいとした。また働き方改革に対して私立学校でも対応の検討等を促した。  遠藤利明・元文部科学部会長(衆議院議員)は教育ICTの推進を求める超党派の議員立法を国会に提出したこと、技術の進展も睨みながら、NTT等に要望をしていく考えを明らかにし、また親の海外赴任で子供が一緒に海外に出かけ、グローバル人材となれるよう、環境整備に取り組んでいきたいとした。  亀岡偉民・前文部科学部会長(衆議院議員)は幼児教育の無償化に関して、また丹羽秀樹・元文部科学部会長(衆議院議員)は、教育問題が走りながら考えるような状況となっていることに危機感を表明、部会で本質的な議論をするよう赤池部会長に要望した。義家弘介・元文部科学部会長(衆議院議員)は、高校教育のボーダーレス化や、就学人口が大きく減少していく中で国立大学法人が定員の確保のため、ハードルを下げることを懸念、世界で戦える人材育成のため、質の問題を考えていく重要性を強調した。松野議員も大学の学部構成を考えることが重要と指摘。塩谷立・元文部科学大臣(衆議院議員)は消費税の税率引き上げに関して学校全体について議論する必要性を、河村共同代表は、私学助成を含め全体を考えていくべきだ、とした。  こうした議員の意見に私学側からは、佐藤東洋士・日本私立大学協会副会長(桜美林大学理事長・学長)は国立大学がハードルを下げて(学生の)量の確保を図ることは大きな課題と指摘。また吉田中高連会長は通信制高校生が急増していること、その背景にあるやりたいことだけやらせる、大学進学教育一辺倒への強い懸念を語った。私学振興協議会にはそのほか渡海紀三朗元文科相、下村博文・元文科相、冨岡勉・元文部科学部会長が出席した。


 

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