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記事2017年9月3日 2418号 (1面) 
文部科学省 平成30年度概算要求提出
私学振興予算前年度比11%の増額要求 耐震化予算の大幅増も

文部科学省は8月31日、「平成30年度概算要求」を財務省に提出した。一般会計の総額は前年度比9・9%増の5兆8379億8900万円。うち私学振興予算の要求総額は4769億円、前年度比479億8500万円(11・2%)の増額要求となった。経常費補助は前年度比で私立大学等が4・1%、私立高校等が3・4%、それぞれ増額を要求。私立学校施設の耐震化促進については前年度予算額の約5・7倍に当たる282億7900万円を、また、私立高校等でのICT教育等設備整備を含めて教育・研究装置等の整備予算でも大幅増額を要求している。


このうち、「私立大学等経常費補助」は前年度比130億1500万円増の3282億6500万円を要求した。  内訳は、大学等の運営に不可欠な教育研究に係る経常的経費を支援する「一般補助」(補助金全体の約83%)が2732億7200万円。配分に当たっては教育の質保証や経営力強化に向けメリハリを付ける方針。また、自らの特色を生かして改革に取り組む大学等を重層的に支援する「特別補助」は549億9300万円、前年度比86億1600万円(18・6%)の増額を要求した。「特別補助」の事業の一つである「私立大学等改革総合支援事業」は188億6千万円(前年度比12億6千万円増)を要求した。これは五つのタイプを設けて、教育の質的転換や産業界・他大学等との連携、地域におけるプラットフォーム形成による資源の集中化・共有など、特色化・機能強化に向けた改革に全学的・組織的に取り組む大学等を重点的に支援する事業。  内訳は、タイプ1「教育の質的転換」(採択予定240校)は、アクティブ・ラーニングによる授業の実施、多面的・総合的な入試への転換等を想定。タイプ2「産業界との連携」(60校)は、共同研究、受託研究、複数企業との長期インターンシップ等を対象にする。タイプ3「他大学等との広域・分野連携」(60校)は特定分野の教育プログラム、教材の共同開発等を、タイプ4「グローバル化」(80校)は実践的な語学教育、外国人教員・学生の比率等を想定。  タイプ5「プラットフォーム形成」は平成29年度に新設されたタイプだが、採択数を初年度の10倍の50〜100グループに大幅拡充する計画。29年度のタイプ2にあった「地域発展」がこの中に含まれている。また、29年度のタイプ3「産業界・他大学等との連携」は30年度概算要求ではタイプ2とタイプ3に分割された。  学長のリーダーシップの下、大学の特色ある研究を基軸に全学的な独自色を打ち出す取り組みを行う私大に施設費・装置費・設備費と経常費を一体的に支援する「私立大学研究ブランディング事業」は大きな変更はない。30年度要求額は施設・装置が13億円、設備が16億円、経常費(特別補助)が67億円の計96億円、前年度比17億円の増額要求。  さらに、地方に高度な大学機能の集積を図る地方の中小規模私立大学等に、平成32年度まで集中支援を行う「私立大学等経営強化集中支援事業」は前年度と同額の40億円の要求。前年度より対象校を絞り、最大100校程度を支援し、経営改革・経営基盤の強化に向けた計画の中身をよりしっかりと見ていく方針。同事業は3年間の支援。  「私立大学等の学生の経済的負担軽減」(特別補助の一部)に関しては、163億5800万円を要求している。前年度比61億9200万円の増額。これは修学困難な学生を対象に授業料減免等を行う大学等に対する支援措置で、30年度は特に、優秀な博士課程学生への支援を充実、意欲と能力があり、より修学困難な学生に集中的な支援を行う。そのため、家計基準300万円未満の学生に対する授業料減免等に関しては補助率を3分の2以内に嵩(かさ)上げする。家計基準300万円以上の学生に関しては従来通り補助率は2分の1以内。  一方、私立高等学校等への基幹的補助である「私立高等学校等経常費助成費等補助」は1057億1千万円、対前年度比で3・4%の増額要求となった。内訳は、基盤的補助の「一般補助」が877億8900万円(前年度比11億3千万円、1・3%増)、ICTを活用した教育の推進や外部人材の活用等による教育の質の向上に取り組む学校への支援の充実等を目的とした「特別補助」が152億900万円(23億8800万円、18・6%増)。特別支援学校など特定の教育分野の教育の推進に必要な経費を支援する「特定教育方法支援事業」は27億1200万円、前年度予算額と同額の要求だった。  経常費補助以外の「私立学校施設・設備の整備の推進」事業に関しては、大学等も含めて405億5500万円の要求(前年度予算額は102億1300万円)。うち耐震化等予算は282億7900万。耐震改築(建替え)事業が約190億円、耐震補強事業が約71億円、その他耐震対策事業(非構造部材等、利子助成)が約22億円。同予算では施設のユニバーサルデザイン化も支援する。また、耐震化以外の「教育・研究装置等の整備」事業は前年度比約70億円増の122億7600万円の要求。この中では「私立高等学校等ICT教育等設備整備推進事業」に前年度予算額の約2倍の25億5500万円を要求している。  また、新たに「私学助成改革推進委託事業」を実施する。これは、教育成果に基づく私学助成の配分見直しが求められる中で、私学助成をより効率的・効果的に配分するための検証の仕組みを構築するもので、要求額は11億円。私立大学の経営強化に向けた連携方策やリカレント教育推進、特色ある取り組み等を調査研究。各都道府県の私立高校等に対する支援の実態も調査する。調査結果を私学助成の在り方、配分の見直しにつなげる。  このほか、29年度予算から5年計画で始まった「私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業」については、前年度(初年度)予算額と同額の11億9400万円を要求している。基本的枠組みに変更はない。対象者数は、小学生が約2千人、中学生が約9千人の見込み。

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