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記事2016年5月23日 2735号 (1面) 
高大接続システム改革で「最終報告」公表
文科省会議 二つの「新テスト」を創設
平成29年度初頭に実施方針策定公表

高校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革の具体的在り方について審議してきた文部科学省の「高大接続システム改革会議」(座長=安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長)が3月31日、「最終報告」を公表した。  「最終報告」は、基本理念に当たる「検討の背景と狙い」、その方針に沿い具体的方策を列挙した「高等学校教育改革」、「大学教育改革」・「大学入学者選抜改革」、「改革の実現に向けた今後の検討体制等」で構成されており、このうち「検討の背景と狙い」では、先行き不透明な時代にあっては多様な人々と協力しながら主体性を持って人生を切り開いていく力、混沌とした状況の中に問題を発見、答えを生み出し、新たな価値を創造していく資質・能力が重要で、そのためには高校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革が必要と強調。その上で高校教育改革に関しては、教育課程の見直しや、目標に準拠した観点別学習状況の評価の推進(指導要録の改善)、多面的評価の充実、「高等学校基礎学力テスト」(仮称)の導入等が必要と指摘。同テストについては、高校生の多様性を踏まえ、複数の難易度の問題から学校や受検者(個人での受検も可)が選んで受検(CBT方式での実施が前提)し、基礎学力の定着度合いを段階表示で結果提供。問題については全国の教育委員会や高校等から既存の問題を収集、アイテムバンクに蓄積、良問については類似問題を作成するなどの考えを示している。対象教科は当面、全ての生徒が履修する範囲を上限に、国語、数学、英語(4技能を測定)とし、次期学習指導要領実施後は地理歴史、公民、理科等を追加導入する考え。同テストについては小・中学校の全国学力・学習状況調査(文科省実施)と近い性格のテストとなりそうだ。   また、大学入学者選抜改革に関しては、個別大学における入学者選抜を、多面的・総合的(調査書や活動報告書、面接、集団討論等)に評価する入学者選抜に改善していくこと、AO入試、推薦入試でも「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」を適切に把握すること、加えて「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)の導入が必要だとしている。同テストでは、知識・技能を十分に有しているかの評価も行いつつ、「思考力・判断力・表現力」を中心に評価すること、試験の出題科目数についてはできるだけ簡素化すること、マークシート式問題に加え、条件付き記述式問題を導入、英語に関しては4技能を評価するが、民間の資格・検定試験の知見の積極的な活用等を検討する方針。テストの難易度は幅広くし、平成36年度からコンピュータを活用したテストの導入を目指す。テストの複数回実施は当面、見送る方針。両テストの実施主体は大学入試センターを抜本的に改組した新たなセンターとなる予定。 ◇ 文部科学省は4月28日付で高大接続改革の検討・推進体制を公表した。それによると「高校基礎学力テスト検討・準備グループ」(主査=荒瀬克己・大谷大学文学部教授、長塚篤夫・順天中学・高校長も参加)と「大学入学希望者学力評価テスト検討・準備グループ」(主査=岡本和夫・独立行政法人大学改革支援・学位授与機構理事、平方邦行・工学院大学附属中学・高校長も参加)を設け、それぞれ平成29年度初頭に実施方針を策定・公表する。委員は必要に応じ適宜追加される。  また大学入学者選抜方法の改善に関する協議(座長=片峰茂・長崎大学長、長塚校長らが参加)で入学者選抜実施の新ルールの検討、調査書・提出書類の在り方の検討などを行い、大学入学者選抜実施要項の見直しの予告を、29年度初頭を目途に通知する予定。そのほか新テストの実施体制を省内で検討する。こうしたグループ等の検討状況等については、文科省改革推進本部・高大接続改革チーム(リーダー=安西裕一郎・文科省顧問)が把握、フォローアップを行う。

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